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召喚師で遊ぶVRMMOの話  作者: 北野十人
ロッカテルナ湖を攻略したい
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136.ナイトメアに再挑戦

 エントランスホールへ行くと、マーミンと赤さんが向かい合わせに座っていた。

 

「やっほー」

「こんにちはでござる」

「こんにちは。なんだか珍しい組み合わせだね」


 マーミンも赤さんも、よく他のパーティに参加しているから、あまり一緒にいることがない。

 

「あれよ。クランイベントがもうすぐはじまるでしょ? だからクランで固まって頑張るみたいよ」


 そう言いながらマーミンは、僕を見ながらソファを何度か叩く。そこに座れってことかと思って、僕はマーミンの隣りに座った。

 

「拙者も似たようなものでござる。やはりクランポイントが足りないと、どこでも感じているようでござるな」 

 

 クランポイントを稼げって言うイベントらしいから、クラン単位で頑張るらしい。でも今回は特殊なことをしなくても、戦うだけで参加できるはずだ。

 

「今のポイントは……781ポイントだ。いつの間にか大分増えたよね」 

「さり気なくクランクエストもやってるからね」 

「戦闘もバリバリでござる」 

 

 和風の赤さんのバリバリに引っかかるけれど、クランポイントは基本戦闘でも増えるから、稼ごうと思わなければ、意外と集まるものなのかもしれない。

 

「でもそれなら時間あるの?」 

「そうね。どこか行くなら付き合うわよ」 

「拙者もヘルプもないでござるし、構わんでござるよ」 

 

 二人がそう言うならば、行きたい場所は一つある。

 

「なら邪妖精の迷宮のナイトメアに行かない? ラズベリーもいるしさ」 

「いいじゃない。そう言えば行こうって言いながら、全然機会がなかったわね」

「拙者は準備万端でござる」


 赤さんも迷宮に行けるようになっているらしい。

 

「ラズベリーを……」


 呼んでくるよって言いかけたところで、ラズベリーがエントランスホールにやってきた。

 

「できました!」 

「やった。早く見せて」 

「楽しみでござるなぁ」


 どうやら二人はすでに、ラズベリーとなにか話していたらしい。

 

「ジャーン、まずはマーミンさんです」


 ラズベリーが取り出したのは、春のミニ浴衣だった。

 

「おっ、いいじゃない」


 マーミンはそれを受け取ると、早速ミニ浴衣に着替えた。背中の方に顔を向けたりしながら確認した後、僕らの方へポーズをとる。

 

「どう?」

「似合ってるよ」

「素敵でござる」 


 機嫌が良くなったのか、フンフンと歌いながら、マーミンはくるくると回っていた。

 

「そしてこれが赤さんのです」 


 ラズベリーが取り出したのは、男性用のミニ浴衣だった。赤さんの名前の通り、赤ベースで市松模様のミニ浴衣だ。

 

「早速着てみるでござる」 

 

 赤装束から赤いミニ浴衣に着替えると、ピンクの股引も自動で装備されていた。膝下までを覆う感じで、和風の赤さんにぴったりだ。

 

「これはいいでござるな。防御力が高ければ、戦闘でも使いたいでござる」 

 

 鉢巻を巻いてもいい感じかもしれない。そんな風に考えていたら、ラズベリーがさらに浴衣を取り出した。

 

「これはラルさんです」 

「えっ、ありがとう」 

 

 全然予想もしていなかったけれど、ラズベリーは僕の分も作成してくれていた。唐草模様のミニ浴衣に着替えると、僕の股引はベージュでツルンとした感じがする。

 

 どうやら男性用には、股引がセットでついているらしい。

 

「ど、どうかな?」 

「似合ってるわよ。普段の変な格好も面白いけど。それも良いわね」 

「変な格好ではないよ!」

 

 僕はそこだけは抗議する。確かに変かもしれないけれど、性能を重視した結果なのだ。


「よくお似合いです」 

「ミニ浴衣四人衆でござるな」 

 

 ラズベリーもさっきのミニ浴衣を着たままだ。


「あっ、邪妖精の迷宮のナイトメアに行こうって話をしてたんだけど、ラズベリーも一緒に行こうよ」

「はい。行きます!」 


 ラズベリーも元気に賛同してくれた。

 

「このまま行こうか?」

「ナイトメアを舐めたら危険だわ。迷宮では着替えましょう」

「防御力が不安でござる」

「うれしいですけど、安全重視でいいですよ」


 みんなは着ていく気はないらしい。でもミニ浴衣の防御力は7なので、僕の小鬼のTシャツよりも性能はよかった。執事のズボンも防御力は低いので、実はミニ浴衣のほうが、防御力が上なのだ。

 

「そ、そうだよね」 


 どう言うべきかわからなくて、曖昧な返答になってしまった。

 

 思えば防御力の面では、あまり考えてはいなかったかもしれない。ミニ浴衣に王冠を載せ、マントを身に着けた僕は、自分史上最高の防御力になっている。

 

 Tシャツとズボンにある特殊能力は、現状の戦闘に影響はないので、このままミニ浴衣でプレイしてもいいかもしれない。

 

「ラル。パーティを頼むわ」

「了解」


 ラズベリーに召喚獣を全て送還してもらい、4人でパーティを組むと、ポータルから小鬼の森へと移動した。

 

--------------------------


 小鬼の森へ来ると、新規プレイヤー枠を少しづつ開放しているおかげか、初心者っぽい人をちらほらとみかけた。

 

 ただ小鬼の村はインスタンスなので、攻略サイト通りに誰かが村長狩りをしていても、なんの問題もなく邪妖精の迷宮に行けるのがいいところだ。


「なんだか久しぶりね」

「やれることがいっぱいあって、ご無沙汰しちゃったよね」

「罠は任せるでござる」


 僕らがナイトメアに挑戦できなかった理由は、魔物が強いとかではなく、進めないように罠が存在していたからだ。

 

 赤さんがいれば罠はなんとかなるだろうし、戦力は以前来たときよりもあがっている。


「っと、挑戦する前に、メンバーを決めておこうか。枠は二つあるけれど、ラズベリーと僕で一人づつ召喚する?」

「私はタンク系がクーちゃんしかいないのですが、まだ進化前なんです。なのでラルさんにタンク系をお願いして、私はアタッカーのポンちゃんを召喚すると言うのはどうですか?」 

 

 ラズベリーの召喚獣は、キンちゃん以外で戦闘を見たことがない。元はうさぎのポンちゃんがどういう戦い方をするのかわからないけれど、ラズベリーが言うなら問題なさそうだ。

 

「了解。ルード召喚」 

 

 鬼の鎧を着て槍を携えたルードが、ガモォと叫びながら現れる。

 

「ポンポン召喚」


 ポンちゃんの正式名称はポンポンらしい。ラズベリーの召喚獣は正式名と愛称があるけれど、僕は愛称だけを覚えておこう。

 

「長い毛の塊でござるか。楽しみでござる」 


 ポンちゃんの戦闘方法も気になるけれど、本格的なナイトメアチャレンジだ。気合を入れていこう。

 

「っで、ラルはミニ浴衣でナイトメアに行くつもりなわけ?」 

「えっと、実は一番防御力が高いんだ。戦闘で役に立つ特殊能力があるわけでもないし、僕はこれで行くよ」


 僕はそう言うと、邪妖精の迷宮ナイトメアを選択する。

 

「行こう」 

「オーケー」


 久しぶりのナイトメア挑戦だ。

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