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召喚師で遊ぶVRMMOの話  作者: 北野十人
ロッカテルナ湖を攻略したい
133/176

133.ネズミ村の村長

 飛び出してきたネズミを確認すると、ネズミ村長という名前で、ドロップリストには『瞬速ネズミのしっぽ』がある。

 

 3日経過しなければ、ネズミの村に戻らないという話だったけれど、僕らは戻す方法を見つけることができたのだ。

 

「あっ、この謎の頭蓋骨を使えるみたいです。使ってみてもいいですか?」

「いいよ」

「はい」


 モルギットが持っていた謎のガイコツが砕け散った。

 

「えっ」

「チュゥアァーン!」


 目の前にいたネズミ村長の体から、真っ赤なオーラが浮かんできた。

 

「ルード! 攻撃開始だ」


 近くにいたルードが、村長ネズミに槍を突き立てる。お返しとばかりに、ルードの肩に噛み付いた。

 

「レタヒール」 

 

 思ったよりもダメージがあるのか、モルギットは上位の回復魔法を使っていた。そして次々と、周りのネズミが参戦してくる。

 

 突進ネズミが数体、ルードめがけて突っ込んでくる。

 

「ゴッデスヒール」 

 

 射撃ネズミの数体が、モルギットに向けて緑の球を発射する。

 

「ムーンシールド!」

「ガァァァモォォォ!」


 ルードが雄叫びを上げる。周りのネズミたちが一斉に、ルードへ意識を向けた。エリーは華麗に中を舞いながら、水の火の魔法を撃ちだした。

 

 周りのネズミに耐久力はないのか、次々ときれいな輝きを残しながら、魔物たちが消えていく。

 

「アクアランスですの」 

 

 ラビィは魔法を使う前に、クルリと一回転するようになっていた。それで威力が上昇するのかはわからないけれど、軽快な感じがして気に入った。

 

「ムーンスピア」 

 

 ルードに突進してきたネズミを、その一撃で消し去った。

 

 どうやら猿とは違って、ネズミはゾーン相応の強さなのかもしれない。

 

 ピカッと周囲が光ると、ルードがライトニングを撃ち込んでいるのが見えた。それで周囲のネズミはいなくなり、ネズミ村長と一騎打ちだ。

 

 たまたま名前を確認してみたら、なぜかネズミ村長ではなくなっていた。

 

「あれ、名前が変わってる」 

「怒れるネズミ村長ですね。もしかして謎の頭蓋骨でしょうか」

 

 そういえば謎の頭蓋骨を使う前は、間違いなくネズミ村長だった。あの頭蓋骨はネズミっぽかったから、村長が怒ったのかもしれない。

 

 嫌な予感が浮かんで、慌ててドロップリストを確認した。

 

「瞬速ネズミのしっぽがなくなってる」

「ヒール。『怒りネズミのお楽しみ袋』になってますね。ギャップが凄いですけど……」

 

 骸骨で怒った村長なのに、ドロップがお楽しみ袋って言うところが、なんともアンバランスに思えた。

 

 コモンドロップでそれ以外はないから、おそらく確実にドロップしてくれるのだろう。


 でもその袋に何が入っているのかは、確認することができない。

 

 そんな事を考えている間にも、火と水の魔法が次々と村長に撃ち込まれていく。

 

「ムーンボール」

 

 他に集中してサボり気味だったので、アリバイ的に魔法を撃っておいた。

 

「村長を倒したら、まず村から出ませんか?」 

「ん?」 

 

 お楽しみ袋の中身はなんだろうとか考えていたら、モルギットがそんな事を言いだした。

 

「いつお猿さんが占領にくるかわからないですけど、ドロップの確認中に襲われたら、やっぱり嫌じゃないですか」 

「あっ、それもそうだね。倒したら撤退しよう」

「ゴッデスヒール」 

 

 怒れるに変化しているせいか、あのルードがそこそこダメージを受けている。あの赤いオーラは、かなり攻撃力を上昇させる効果があるのだろう。

 

「ムーンブラスト」 

 

 とはいえ戦闘自体には、トラブルとかあるわけではない。強力なワンダリングモンスターもいないし、周囲のネズミはすでに対処済みだ。

 

 新しい技を使うような素振りも見えないし、きっとこのまま戦闘は終わるだろう。

 

「あっ、倒せました」

 

 最後はルードが槍を突き刺して、戦闘は終了した。

 

「よし。撤退だ」 

 

 僕らは村の外へ向けて、一目散に走り出した。

 

--------------------------


 村から離れると、ちょうどお猿さんたちがやってくる。そしてあっという間に門の前に、2体のファニーモンキーが陣取っていた。


「すぐ逃げてよかったね」

「思ったよりも早かったですが、無事でなによりです」


 インベントリを確認すると、ちゃんとお楽しみ袋が存在した。でもそれを取り出そうと思った瞬間、僕の頭に疑問が浮かんだ。

 

「あれ? あの家を建てたのは誰なんだろう」

「そう言えば不思議ですね。ネズミがベースって言ってましたけど、普通のネズミが家の建築なんてできるんでしょうか」


 ネズミが村にいて、村長を倒すと猿の村に変わる。この話が本当ならば、家を建てたのはネズミということだ。

 

 でも出現したネズミは、普通のネズミが巨大化しただけの魔物だ。ネズミ人間ってわけでもないし、建築なんてできるはずはない。

 

 仮に猿が家を建てたとすれば、まあ理解はできるけれど、3日で放置する意味がわからない。

 

「これってもしかして……」 

「あっ、もしかして……」 

 

 僕らは顔を見合わせる。

 

「あのリスだよね」

「リスさんですよね」 


 どうやら結論は一緒だった。北の森で芋虫に襲われていたリスは、南に向かって逃げている。

 

 他のリスたちも逃げ延びて、ここに村を作成した。

 

 でもそれをネズミに奪われ、再びどこかへ逃げていく。その結果、ネズミと猿だけが残ったのだと考えたら、全ての辻褄が合いそうだ。

 

「でも予想が当たっていたら、ちょっと可哀想になるよね」 

「芋虫に追われ、ネズミに追われ……ですよね。できればどこかで、ゆっくりと暮らしていてほしいです」


 勝手に話を想像して、しんみりとしてきた。

 

「安全に暮らしていると信じて、お楽しみ袋を開封しよう!」 

「はい。そうですね」


 雰囲気を変えようと、努めて明るく言ってみた。それをわかってくれたのか、モルギットも明るく答えてくれる。

 

「何が出るかな」


 僕は『怒りネズミのお楽しみ袋』を開封した。

 

>>>>>>>

怒りの耳飾り×1 を手に入れました

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 初めて見るアクセサリだ。僕は効果を確認する。

 

「おっ、すごい!」

「何が出たんですか?」 


 物理攻撃力+5%という効果がついていた。


「攻撃力が上昇する耳飾りだって」


 丸く削られた赤い宝石がぶら下がっている耳飾り。僕が装備する気にはならないデザインだけれど、サクラには似合いそうだ。


「凄いですね。私はオパールが10個でした」


 モルギットは喜んでいるから、きっとオパールはレアなのだろう。

 

「やったね。おめでとう」 

「はい。お互いおめでとうのありがとうです」 

 

 サクラは召喚していないので、僕はインベントリに怒りの耳飾りをしまっておいた。

 

「お猿のレアも気になるけれど、そろそろ戻って休憩にするよ」 

「そうですね。もうすぐクランイベントも始まりますし、そうしましょう」 

 

 そういえばクランイベントがあったのを忘れていた。でも参加しようと思わなくても、クランに所属していれば、たしか戦うだけで貢献できるはずだ。

 

「帰ろうか」 

「はい」 

 

 僕はラビィ達を送還すると、北へ向かった。

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[気になる点] リスへの予想が飛躍しすぎて笑った もうちょい何とかなっただろ
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