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召喚師で遊ぶVRMMOの話  作者: 北野十人
ロッカテルナ湖を攻略したい
127/176

127.久しぶりのレアハント

 肩を突かれる感触で目が覚める。

 

「あれ、ここどこだっけ?」


 暗い森の中で、一気に記憶がよみがえる。あまりにも気持ちよすぎて、どうやら眠っていたらしい。

 

「ありがとうサクラ。もうすっかり夜だね」


 僕がランプを用意してスイッチを入れると、辺りがふわっと明るくなる。

 

「サクラ。幽女はいた?」 

「いえ。この辺りにはいないようです」 

 

 さっと見回してみたけれど、確かに魔物の姿はない。

 

「よし。もっと奥へ行こう」 

「おまかせですの」


 サクラを先頭に、さらに僕らは森の奥へと向かった。


--------------------------


 5分ほど進んだだけで、森の雰囲気が変わってきた。木の密集度は変わっていないはずなのに、さっきよりも暗く感じてしまう。

 

 気のせいではないことを証明するかのように、スゥッと白い女性が現れた。

 

「あっ、幽女で間違いない」 


 ゴーストとは違って、浮遊していることはなく、幽女は地面に立っている。移動する時は歩いたりはせず、スゥーッと氷の上を滑るような感じだった。

 

 見た目も幽女の名前の通り、半透明の髪の長い女性だった。白い着物という服装も固定みたいで、次々現れる幽女すべてが、同じ見た目だった。

 

「レアは白銀草の種で、ウルトラレアは幽女の卵か。コモンが布の切れ端で、アンコモンはなしと。でも白銀草の種ってなんだろう。とりあえず欲しいのは、種と卵だよね」


 おそらく卵がドロップする前に、種がドロップするだろう。幽女は強くないとは思うけれど、最初はサクラに戦ってもらうことにした。

 

「サクラ、よろしく」 

「おまかせを」 


 一番近くにいた幽女へ向けて、右手の刀を横へと振るう。無数の多角形の板が飛び散って、それだけで幽女は消滅した。

 

「人と幻のエッセンスなんだ。コモンしかドロップしなかったけれど、倒すのは問題なさそうだ」 

 

 ちょっと過剰戦力になっている気がするけれど、他にプレイヤーは見当たらないし、遠慮することはなさそうだ。

 

「それじゃどんどん倒して、幻幽女を探そう」

「がんばりますの!」 

 

 サクラ以外はランプの光の範囲という制限があるけれど、僕らはそれぞれのターゲットへ向けて、次々と幽女を倒していった。

 

--------------------------


 なんだか懐かしい気がした。

 

 最近はプレイヤーとパーティで迷宮を攻略したりしていたので、単独でのレアハントに、懐かしさと興奮を覚えてしまう。

 

「幻幽女はどこにいる!」


 剣のスキル上げもかねて、僕は予備の剣を振るう。それでもレベル差があるので、一撃で倒すことができた。

 

「君は卵をドロップしてよ! 瞬速剣」 

 

 せっかくだから覚えた秘伝を使ってみた。自分が剣を振ろうとした時には、すでに振りおわっているみたいな感覚で、当てた覚えのない場所から、多角形の板が飛んでいる。

 

 たしかにこの能力ならば、瞬速剣を回避できる人はいないだろう。

 

「リキャストタイムは15秒。悪くないねっと!」


 幸いにも幽女の数は多く、ポップも比較的早い。幻幽女がいつ出現するかはわからないけれど、っと言うかこの方法でポップするのかも知らないけれど、おそらく他のレア魔物と、似たような条件であるはずだ。

 

「ランダムポップかも知れないし、倒しまくれば出てくるかもしれない。どちらにせよ、こうやって倒していれば、いつか出現するはずさ」 

 

 剣を振り回しながら、サクラたちの様子を確認すると、僕と同じくらいのペースで倒していた。みんなレベルが高いから、一撃というのは変わらないらしい。

 

「幻幽女も弱いかもだけど、欲しいのはレシピさ! ムーンスピア」

 

 剣だけでは飽きてくるので、たまに魔法を混ぜてみる。一撃じゃなかったら嫌なので、上位の魔法を使ってみた。

 

「うん。いけるね」 

 

 アンコモンのドロップがないせいで、ログが全然表示されない。アンコモン以上の表示なので、種か卵がドロップしないと、ずっとログは寂しいままだ。

 

「まあ表示された時はレア確定。それでいいのさ!」 

 

 体を回転させながら剣を振り回し、幽女を攻撃する。技でも何でもなく、単にやってみただけだけど、単調な狩りが面白くなってきた。

 

「ジャンピングスラッシュ!」 

 

 思い切りジャンプして、上から斬り下ろす必殺技だ。

 

「あっ」 

 

 僕の背後から、聞き覚えのある女の子の声がした。びっくりして振り返ると、そこにモルギットが立っていた。

 

「こんばんは。クエストもクリアして落ち着いたので、遊びに来ちゃいました……」 

 

 ちょっとうつむき加減にそう言ったモルギットは、なんか見ちゃいけないものを見たっていう感じだった。

 

「モ、モルギット。別に恥ずかしくないから。照れられると、僕が恥ずかしくなっちゃう」 

「すいません。ジャンピングスラッシュ! とか見ちゃいけないのかと思って……」 

 

 技名を言われたことで、さらに恥ずかしさが増してきた。モルギットの性格から考えて、狙ってやっているわけではなさそうだけれど、気まずくなるので、すぐにパーティに招待する。

 

「ありがとう」 

「レアハントだけといいの?」 

「はい」 

 

 モルギットがパーティに参加した。

 

「レア魔物情報にあった幻幽女狙いですね」

「ギルドに行ったんだね。サクラに着物を作成したいんだ」


 モルギットはちらっとサクラに視線を移す。

 

「サクラさんなら、着物が似合いそうですね。和風な感じですし」 

「そうなんだ。進化できたら、絶対に着物を着て欲しい」


 そこまで話すと、僕は気になることができてしまった。

 

「そういえばモルギットって、回復専門だよね。どうやって戦うの?」 

「これです」


 モルギットはメイスを装備した。ピカピカして見えるから、おそらく魔法のメイスだろう。

 

「ソロのレベル上げように、メイスを使ってるんです。パーティの時は前に出ないですけど、意外と戦えるんですよ」 


 モルギットは鍵開けといいメイスといい、僕の予想外なスキル構成になっている。具体的に聞いてみたいけれど、フレンドとは言え、そのあたりはちょっと聞きにくい。

 

「他のスキルは秘密です」 

 

 右手の人差し指を口に当て、モルギットがニコッと微笑む。おそらくなんどか聞かれた経験があって、僕も聞くんじゃないかと予想したんだろう。

 

「聞かないよ。そろそろ狩りを開始する時間さ」 

「はい」

 

 モルギットは手近な幽女へ向けて歩きだす。そして無造作という感じで、メイスを振り下ろした。

 

 幽女の攻撃よりも速い一撃は、大きくダメージエフェクトを迸らせる。

 

 どうやらモルギットも、幽女は一撃で倒せるらしい。

 

「どうですか?」 

「凄いね。かなりダメージが出ているみたい」


 幽女が弱いというのもあるけれど、あのメイスもなかなか凄そうな感じがする。

 

 どちらにせよ、ここで一緒に戦うのには、なんの問題もないということだ。

 

--------------------------


 ランプの灯りの中で、しばらく戦っているけれど、幻幽女が出現する様子はない。もともと何かの兆候があるわけではないけれど、なんとなく出てくる気配というのが、感じられないのだ。

 

 しかも100は軽く倒しているはずなのに、レアの種すらドロップしない。

 

 いつしか僕は無言になりながらも、ドロップしろと剣を振る。

 

「あっ、白銀草の種がドロップしました」 

「おおっ、やったね。おめでとう」

「ありがとうございます!」


 そう言うと、モルギットは白銀草の種を見つめながら、動きを止めてしまった。

 

「あれ? どうしたの」 

「いえ、レアがドロップしたのは嬉しいんですが、どこで何に使えるんでしょう?」


 そういえば種があったところで、畑があるわけでもない。

 

「食べちゃうとか? 説明にはなんて書いてあるの」 

「えっと、畑に植えて栽培するってなってます」


 つまり食べたりはしないらしい。でもそこまで直接的に書いてあるなら、畑がないのはおかしな話だ。

 

「あれかな。自分の家とか持てるらしいじゃない。そしたら畑とか買えるのかもよ」 

「そうかもしれないですね。なにかわかるまで、大事にとっておきます」 

「それがいいよ」


 モルギットはメイスを構え直す。そのまま幽女へと突撃した。

 

(幻幽女には、何かしらトリガーがありそうだよね。でもそれがわからない)


 考えてもわからないので、僕は戦い続けるしかない。

 

 仮に出現しなかったとしても、それで何かがわかるはずだ。

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