表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
召喚師で遊ぶVRMMOの話  作者: 北野十人
ロッカテルナ湖を攻略したい
126/176

126.新たな情報

 メールを確認してみると、予想通りに運営からだった。正確には、冒険者ギルドからのメールだ。

 

「いまさら火竜の居場所に関する情報だなんて、どういうことかしら?」


 マーミンがメールを見ながら、怪訝な表情を浮かべている。

 

 メールに書かれた内容は、火竜の居場所についての情報を公開するから、冒険者ギルドまでって言う感じだ。

 

「火竜山の名前のとおりに、火竜はあそこにいるはずでゴンス」 

「謎だよねぇ。まあ僕は行くけどね」

「だと思った。一緒に行きたいところだけど、私はちょっと休憩するわ」


 マーミンはんーと伸びをしながら、疲れちゃったという感じになっている。

 

「僕は行くよ。ゴリはどうする?」

「吾輩はナイトメアチャレンジでゴンス」 

「それじゃ二人とも、またねー」

「またね」


 マーミンはログアウトした。

 

「それじゃ僕はギルドへ行くよ。そのうちメンバーにも紹介するから、よろしくね」 

「よろしくでゴンス」


 僕は冒険者ギルドへ向かった。

 

--------------------------


 あんなメールがあったから、冒険者ギルド前は混雑しているかと思ったけれど、予想に反してプレイヤーの姿は少ない。

 

 既知の情報に見えるから、あまり食指が動かなかったのかもしれない。

 

 そんな事を考えながら、冒険者ギルドへと入る。

 

「ラルさん、おかえりなさい」 

「ただいま。マリー」


 最近ちょっとご無沙汰だったけれど、マリーに変わりはないようだ。

 

「もしかして火竜の情報ですか?」 

「そうだよ。火竜の居場所の情報があるんだよね」 

 

 僕は今までの情報から、火竜山にある洞窟の奥に、火竜が棲んでいることを知っている。普通に行けばものすごい暑い中を、気をつけて進まなくてはいけない。

 

 普通に考えればこの情報は無用に思えるけれど、自分はなんでも知っていると思ったら大間違いだ。

 

 僕は既知の情報だと思っていても、新たな発見の可能性がある限りは、決して無視したりはしない。

 

「それでどんな情報なの?」 

「これです」 

 

 マリーはカウンターの下から、紙を一枚取り出した。

 

 そこに書いて有ることを読んでみたけれど、どうやら今回は、新しい情報はないらしい。でも人によっては、有益な情報が書いてあった。

 

「チキンヘッドの隠し道が公開されてる」 

「ラルさんはすでにご存知なんですね。その隠し道へ行ければ、暑いゾーンを短縮できるんです。とはいえ、完全ではないのですが」 

 

 どうやって隠し道を見つけるかは書いていないから、実際に行くのは大変そうだ。

 

 むしろ方法まで書いてたら、楽しみを奪ってしまうから、このくらいの情報公開が良いのかもしれない。

 

「後はこれです」 

「えっ、これは……」 

 

 マリーがさらに、紙を取り出した。その紙の見出しには、レア情報公開と書いてある。


「レア情報……レアな魔物情報が書いてある!」 

「はい。今回、ギルドの調査班が寝る間も惜しんで作成した情報を、冒険者の皆さんへ公開することになりました。ただこれで全てではないようですので、自力での調査もがんばってくださいね」 

「もちろんだよ」 

 

 小鬼の森のはぐれ鬼、森狼王、はぐれトカゲまで載っている。ただこれらのレアな魔物は、すでに出会って倒していた。

 

 重要なのは、僕の知らないこの魔物だ。

 

「幻幽女……」

「はい。夜にしか現れない幽女を倒し続けると、まれに幻幽女が出現するんです。調査員の話では、着物のレシピを持っているみたいですよ」 

 

 電流が僕の背中を走る。幻幽女は前に行くなと言われていた、イモキンがいるのと反対にある南の森に出現するらしい。

 

 鬼の村で着物2のレシピは手に入れたけれど、おそらく幻幽女のドロップが、着物1で間違いないだろう。

 

「でもこの森は、村人から行くなって言われてたんだよね」

「村人でも倒せる芋虫に手を出せば、敵対的になるでしょう。でも無視して倒さなければ、村の人達も怒らないはずです」

 

 よく覚えていないけれど、行くだけなら問題ないようだ。余計な芋虫と戦わないようにして進めば、幻幽女のいるゾーンまで行けるだろう。

 

「とてもいい情報だったよ」 

「レア魔物情報やレアアイテム情報は、今後もギルドの調査員の報告がまとまれば、冒険者の方たちに公開していく予定です」


 やっぱり話を聞きに来てよかった。

 

「それじゃ幻幽女を探しに行ってくるよ」

「夜しか会えないから、気をつけてくださいね」


 浮かれていたせいで、夜のことを忘れていた。でもレベルの低いゾーンだし、サクラと二人だけでもいいし、ランプを使っても問題ないはずだ。

 

「ありがとう。行ってきます」 

「いってらっしゃい」


 マリーに手を振りながら、僕は冒険者ギルドを出た。

 

--------------------------


 あいにくと目指す森の側には、ポータルが設置されていない。仕方がないので狼の森のポータルに移動すると、そこからは徒歩で移動する。

 

 この辺りはプレイヤーを見かけないので、僕はすでにラビィとサクラとエリーを召喚していた。


「なんだか久しぶりの一人だなぁ」

「最近一緒に歩けないから、寂しいですの!」

 

 一番最初に契約したラビィが、そんな事を言ってくれる。

 

「見つかると歩けなくなるからね」

「面倒ですの」

 

 スイッとラビィが僕の手を掴んでくる。寂しくさせた罪滅ぼしではないけれど、そのまま手を繋いで森の小道を進んでいった。

 

 天気も良くて散歩するにもちょうどいい感じだ。街道を歩いている時に、魔物に出会ったことはないので、本当にピクニック気分になってくる。

 

「マスター。油断なさらないようにしてください」

「ああ、ごめんね。あまりにも気持ちよくてさ」 

 

 少し汗ばむくらいの陽気に、爽やかに吹いていくそよ風。魔物のでない安心感に、僕は完全に油断していた。

 

「では私が警戒します!」 

 

 僕がのんきにしている分、サクラが頑張りはじめたようだ。僕を守護する騎士役のサクラに、気楽に行こうぜとは言いにくい。

 

 ちょっとだらけ気分だけど、ここはサクラに任せて、久しぶりの気楽な時間を満喫しよう。

 

--------------------------


 久しぶりに村に着くと、最初に見つけた村人に、南の森に行ってもいいか確認した。

 

 村人でも倒せる芋虫に手を出さないなら、別に行っても構わないという話なので、僕らはそのまま南へ向かう。

 

 南の森は木の密集度が薄く、太陽の光が多く降り注いでいた。小さめの芋虫をちょろちょろ見かけるけれど、それが例の芋虫で間違いないだろう。

 

「もっと奥に行くよ」 

「おまかせですの」 

 

 いつものフレーズに心地よさを感じながら、僕らは南へ進んでいく。やがて芋虫も見えなくなってきたけれど、それ以外の魔物もいなくなってきた。

 

「まだ明るいから、出現しないみたいだね」 

 

 遠くから聞こえてくる鳥のさえずりや、降り注ぐ陽の光を見ていると、とても幽霊が出てくるとも思えない雰囲気だ。

 

 エリーはピピィと言いながら飛び回り、ラビィは草の上でゴロンと丸くなっている。サクラだけは警戒しているけれど、特に危険なことはないようだ。

 

「夜まで待つか……」

 

 僕もラビィの横で、仰向けに寝そべった。なんだか気持ちよくなってきて、鳥の声に誘われるように、僕はいつしか眠くなってしまっていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ