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召喚師で遊ぶVRMMOの話  作者: 北野十人
ロッカテルナ湖を攻略したい
125/176

125.クラン加入希望者

 メイン火力だったリックがいなくなったことで、ナイトメアは無理という話になり、そのままパーティは解散になった。

 

 僕は手に入れたレシピを確認するために、クランハウスへと戻ることにする。

 

「やっほー」 

「いよぉ、クランクエストの方は終わったの?」


 ポータルから戻ると、エントランスのソファにマーミンが座っていた。僕はそんな事を言いながら、マーミンの向かいのソファに座る。

 

「疲れるクエストだったけど、なんとかクリアできたわ」 

「やったね」

 

 なんとなくクリアできるだろうと予想していたけれど、どうやらそれは正しかったようだ。

 

「っで、ラルは何してたの?」 

「パーティマッチングを使って、鉱山迷宮のナイトメアに行ってきたよ。なんとかクリアできたけれど、しばらくはパーティマッチングはやりたくないね」 

 

 興味深そうにマーミンが体を乗り出してきた。

 

「ほほー、何があったわけ?」

「キャラが濃い人と面倒な人と初心者のパーティだったんだけど、いろいろ疲れちゃって」 


 僕の言葉に頷きながら、マーミンはソファにもたれかかった。

 

「ラルは気を使うタイプだからね。気にしなくて良いことまで、気にして頑張ったんじゃないの?」 

 

 穏やかに楽しみたいから、争ったり競い合うのは好きではない。さらに知らない人が多いと、ちょっと人見知りっぽくなるのも、影響しているはずだ。

 

「気を使うというか、普通にしてるつもりだけど、なんかドッと疲れたよ……」 

 

 僕もソファの背もたれに、思い切りよしかかる。フカフカのソファは気持ちよくて、そのまま寝てしまえそうだ。

 

 コンコンコンッ。

 

 うとうとしそうだった僕の意識を、ノックの音が呼び覚ます。

 

 クランクエストかなと思っていたら、小部屋から見知らぬ女の子が姿を見せた。 

 

 誰かが言っていた、メイド姿の少女だった。

 

(子供っぽいメイドか……。人気は根強いよね) 

 

「どちら様ですか?」 

「ラルさんはいるでゴンスか? 吾輩はゴリでゴンス」 

 

 どうやらクランクエストではなく、さっき一緒だったゴリが来たらしい。

 

「あれ、クエストじゃないのかしら。ラルの知り合い?」 

 

 そう言いながらマーミンが、僕の隣へと移動してくる。

 

「さっきナイトメアで一緒だった、濃いキャラのヒーラーだよ」 

「マスター、いいですか?」 

 

 僕は少女の方を向いて頷いた。

 

「どうぞ」 

 

 クランハウスの扉が開くと、さっき見た黒ローブのゴリが入ってくる。

 

「さっきぶりでゴンス」 

「そうだね。よかったらそこに座ってよ」 

 

 僕はさっきまでマーミンが座っていたソファを指差した。

 

「失礼するでゴンス」 

 

 ゴリが座ったのを見計らって、僕は何しに来たのか聞いてみる。

 

「それでどうしたのって……あれ。なんでここがわかったの?」

 

 ここに来た目的を聞こうと思ったけれど、こっちの疑問が先に来た。名乗りはしたけれど、クランのことなど話していないし、フレンド登録もしていない。

 

「ラルさんは有名でゴンス。その見た目、召喚師という職業。極めつけはあの金色の鬼でゴンス。それで確信したでゴンス」 

「ラルはちょくちょく話題になるからね」 

 

 ゴリの言葉を、マーミンまでが補足する。見た目で目立っている自覚はあるけれど、僕がいないところで話にでるほど、目立っているとは思わなかった。

 

「だからクランがわかったんだね。それでどうしたの?」 

「レアハンターズに加入したいでゴンス!」


 意外な話だった。少しの時間しか一緒にいなかったけれど、何かゴリの気にいるところがあったんだろうか。

 

「いいわよ。うちのクランは来るもの拒まず、去るもの滅殺だからね」 

「滅殺はマリーシアが……って、去るもの追わずだからね。で、入る前に一応話しておくことがあるよ」 

 

 マーミンはいきなりオッケーを出したけれど、ルールを説明しなくてはならない。僕はゴリへ向けて、指を三本出して説明する。

 

「ルールは三つだ」 

「えっ、ルールなんてあるの?」


 サブリーダーのマーミンが、そんなことを言い出した。そこに突っ込むと時間がかかるので、ここはスルーして説明する。

 

「まずは他人に迷惑をかけない。クランメンバーを贔屓しない。クランに参加しても、なんの義務も責任ももたない。この三つだ」 

「へー」


 マーミンがそうなんだ、みたいな感じで言ってくる。

 

「へーじゃないんだよ。サブリーダーなら知っててよ」

「でも言われたことないじゃない」

「具体的には言ってないかもしれないけれど、ある意味マーミンたちには普通でしょ」

「まぁね。でもちゃんと言ってくれないと、わからないっていうか……」

「そろそろイチャつくのをやめるザンス」 

 

 えっと思ってゴリを見る。ゴンスがザンスに変わったことで、そっちに集中してしまう。

 

「作戦成功でゴンス」 

「やるじゃない」

「それは良いとして、なんでレアハンターズに?」

 

 来るもの拒まずだから、断るつもりはないけれど、一応理由は聞いておきたい。

 

「レベルが35を越えてから、頻繁にクランに誘われるようになったでゴンス。どこのクランもノルマがあって、窮屈そうなので断ってるでゴンス」 

 

 それですぐに理解した。誘われすぎて鬱陶しいので、適当にクランに参加しておきたいってことだろう。

 

「たまたまレアハンターズの赤さんと一緒のパーティになった時に、クランの話を聞いたでゴンス。その時はすぐに参加しようとは思わなかったでゴンスが、さっきラルさんと一緒になって、ぜひ参加したくなったでゴンス!」 

 

 縁があったということだろう。一緒にプレイしても悪い人には思えなかったし、参加することに問題はない。

 

「お二人は同じマントを装備してるでゴンスが、もしかしてメンバーは装備しなくちゃ駄目でゴンスか?」 

「いや。そういうわけじゃないよ。このイモキンマントは……」 

「私とラルのペアルックだから、ゴリは装備しちゃ駄目よ」


 マーミンの言葉にどきりとする。リアルでペアルックとか双子も経験ないけれど、偽物とは言え美人にこんなことを言われたら、ちょっと鼓動も速くなる。

 

「ぺ、ペアルックじゃないよ」 

「えー、照れなくてもいいじゃない。このこの」 

 

 マーミンが拳を握って中指を立て、それを僕の脇腹に押し付けてゴリゴリしてくる。女子との憧れのシチュエーションに、翻弄されてしまいそうだけれど、からかわれっぱなしも悔しくなる。

 

「ちょっと、やめてよ」


 なのにそんなことを言いながら、思わず堪能してしまう。ちょっと女の子っぽく言ってしまっているのは、緊張したせいかもしれない。

 

「イチャつきはやめるザンス!」

「ふふっ、ごめんなさいね」

「イモキンマントはメンバーで一緒にドロップしたから、みんな持ってるだけだから」

 

 今更ながら、僕はそんな説明をする。

 

「クランに誘ってくれでゴンス」

「あっ、そうだね」


 僕はゴリをクランに招待する。


「ありがとでゴンス」


 これで話が落ち着いた。なんとなくまったりとしてしまう。


「あっ、上を見るでゴンス」

「上?」


 平屋だったはずのクランハウスに、二階ができていた。一階と同じような扉が増えているので、メンバーが七人になったから、勝手に増築したのかもしれない。

 

「へー、人数が増えたら大きくなるみたいね」 

「個人の部屋は確実にもらえるんだ。いい仕様だよね。ならゴリは二階のどこでも選んでいいよ。一階は埋まってるから」

「了解でゴンス!」 

 

 早速ゴリは二階へ上がっていく。僕らもなんとなくそれについていった。

 

 ゴリが階段すぐの部屋に入ると、僕らも一緒に中へと入る。見た目は一階の部屋と同じで、置かれている最低限の家具も一緒だった。

 

「あら、窓からの景色が違うわね」 

 

 部屋の奥にある窓から、街を見ることができた。でも二階という高さのせいで、それほど感動はしなかった。

 

「もっと高いところからみたいな」

「十階くらいからなら、たかーいって感じでいいわよね」 

 

 そんな事を話しながら、窓から外を見ていたら、すいっとゴリも近づいてきた。

 

「咲いた花は美しい。とはいえ、蕾もまた美しいものでゴンス」


 んって思ったけれど、これを翻訳するならば、十階の景色も綺麗だろうけれど、二階の景色だって捨てたものではないってことだろう。

 

「成熟した女は綺麗だけど、ロリも大好きって宣言かしら?」 

「絶対に違うでゴンス!」


 会ったばかりのはずなのに、マーミンは仲良さそうな感じになっていた。初めて会った時からそうだけれど、マーミンのコミュニケーション能力は、ちょっとうらやましくなってくる。

 

「あれ? メールだ」 

 

 メールの着信を知らせる音が聞こえてきた。

 

「私にも来たわ」

「吾輩もでゴンス」


 どうやら同時に来てるらしい。と言うことは運営からのメールかもしれない。

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