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召喚師で遊ぶVRMMOの話  作者: 北野十人
ロッカテルナ湖を攻略したい
124/176

124.諦めが早いリック

 戦闘は順調だった。リックがカイトを続け、僕らが黒い巨人に攻撃する。

 

「この調子で行くぜ。連撃」

「レタヒール」


 ウィザードが槍でなんども黒い巨人へ攻撃する。ハワワもダメージを受けているみたいだけれど、ちゃんとゴリが回復していた。

 

「これなら勝てるわ。それっ、それっ」 

 

 エリスもウィザードに追随するようにして、短剣でなんども攻撃をする。手数は多いけれど、やっぱりダメージは少なめだ。

 

「ムーンボール」

「ゴッデスヒール」

 

 ハワワも攻撃しているけれど、いまいちダメージが出ていない。僕は魔法で攻撃しながら、少しづつ嫌な予感がしてきていた。

 

(このままじゃ注目が維持できなさそうだ。名乗って欲しいけれど、カイト中の魔物を連れてきちゃうから、タイミングをあわせなきゃだめだ)

 

 軽快にウィザードが槍で黒い巨人を突いている。いい感じに多角形の板が飛んでいるから、近接攻撃ではウィザードが一番で間違いない。

 

 でも最初の名乗りの分の注目を越えれば、ターゲットはウィザードに変わる。でもその時にはきっと、先にゴリへ跳ねるだろう。

 

「ゴリ! そんなに回復して、跳ねたりしないのか?」 

 

 僕と同じように、ウィザードも懸念していたらしい。

 

「跳ねるってなによ」


 エリスはゲーム経験が浅いのか、時々こうやって聞いてくる。

 

「タンクが魔物からの注目を維持できないで、他のメンバーに攻撃することだ。って言うか、本当にそろそろやばいぜ」 

 

 不意に黒い巨人が歩き出した。ハワワを無視するようにして、ゴリへ向かって歩いたのだ。

 

「やべぇ。ハワワ! 名乗るんだ」 

「待っ……」 

「僕の名前はハワワ!」


 僕の制止は遅かった。見事にカイトを巻き込んで、全ての魔物がハワワへと向かってくる。

 

「闇のご加護を」 

 

 そう言うとリックが、パーティから抜けてしまった。途中で抜けたらどうなるのか知らなかったけれど、どうやら迷宮の外へ放り出されるらしい。

 

「リックがいなくなったよ」 

「パーティから離脱したら、強制転送だ。って言うか、諦めが早すぎだぜ」


 リックは倒されるのが嫌で、すぐにパーティを抜けたのだろう。僕だってパンチを受けて、倒されるのは嫌だけれど、途中で諦めて離脱しようなんて、そんな発想自体が出てこない。


「ゴッデスヒール! レタヒール!」 

「あっ」


 ゴリのヒールがハワワに飛んだけれど、大岩石人形の攻撃数発と、黒い巨人のパンチを受けて、その姿を消してしまう。

 

 どうやら召喚された大岩石人形も、かなりの攻撃力を持っているらしい。

 

(道中を耐え抜いたタンクを瞬殺するなんて、とんでもないバランスブレイカーだ) 

 

 ハワワを倒した魔物たちは、全てがゴリへと向かっていく。タンクがいなくなった以上、僕らにできることはない。

 

「あっ、一つだけあった。ルード召喚!」

 

 魔法陣が現れ、黒騎士の槍を携えたルードが現れる。

 

「ガモォ!」 

「ルード。ボスを頼む!」


 リックが抜けてくれたおかげで、パーティの枠に空きができた。思わず召喚したけれど、戦闘中には召喚できないとかいうあの制限はどうなったんだろう。

 

(単純に勘違いだったかもしれない。倒された召喚獣が、再召喚できないって話だったかも)

 

 自分でやっておきながら、なんで召喚できたのか気になった。

 

「ガァァァモォォォ!」


 でもそんな疑問を吹き飛ばすかのように、ルードが雄叫びを上げる。

 

 黒い巨人も大岩石人形も、その一撃でルードの方を向いた。

 

「金色の鬼? すげぇ、これが召喚獣なのか」

「格好いいかも……」

 

 見た目が格好いいのは否定しない。僕もルードは大好きだ。でも大事なのは、あの攻撃を耐えられるかだ。

 

 フッとルードの姿が霞むと、黒い巨人へ近接していた。どうやらブレイクを使って、一気に突進したらしい。

 

 しかもそこからサークルアタックのコンボを決める。

 

「ルード! その調子だ」


 反撃とばかりに、黒い巨人、大岩石人形から、パンチやキックが繰り出された。それを体で受けながらも、ルードは微動だにしない。

 

「やるでゴンスな。ヒールでゴンス」 

 

 ゴリのゴンスも復活だ。どうやらルードのあの装備は、ナイトメアでも通用するらしい。なにより最近、レベルアップを頑張っていたのも幸運だ。

 

 いつの間にか僕らは、鉱山迷宮のナイトメアレベルに達していたみたいだ。

 

 ガンガンとルードは、槍で黒い巨人を突き刺していく。時折、電撃が迸って見えるのは、黒騎士の槍の特殊効果だ。

 

「めちゃめちゃすげぇな。連撃!」 

「私も負けないわ!」

 

 全員から注目を浴びても、ルードは完璧に耐えている。黒い巨人も攻撃力が高いだけで、他にギミックは持っていないのかもしれない。


「ゴッデスヒールでゴンス」

 

 皮肉にもリックが抜け、ハワワが倒されたことで、戦闘が安定してきた。

 

「ムーンスピア!」 

 

 今のルードは硬いタンクでありながら、黒騎士の槍のおかげでダメージ量も期待できる。アタッカーを兼任する勢いで、ガシガシダメージを与えていた。

 

「ムーンブラスト」 

「ガァァァモォォォ!」


 無限召喚がわかっているから、大岩石人形には誰も手を出さない。それでも耐えられるのだから、まさしくルードさまさまだ。

 

 ただ魔物が集まっているから、エリスは黒い巨人へ攻撃しにくいみたいだ。ウィザードは槍だから、隙間から通せるけれど、短剣で近接が必要なエリスには、ちょっと難度が高いだろう。

 

「うーん。入り込めない……」

「無理せず待機でいいよ。ムーンボール」 

 

 待機をお願いした途端、エリスがチアガールのように応援しだした。

 

「フレフレみんな、がんばれみんな!」 

「任せとけ!」 

 

 ウィザードは気合が入った感じだけど、僕は緊迫した戦闘なのに力が抜けていく。リラックスできると言えば、聞こえはいいけれど、脱力というほうに近い。

 

「ああ、ムーンブラスト!」 

 

 僕の魔法に合わせるように、ルードはブレイクを叩き込む。

 

「ヒールでゴンス」 

 

 もう大分削ったと思うけれど、やっぱり黒い巨人は特殊な攻撃をしてこない。

 

「そろそろいけるか! 連撃」 

「がんばーれ、ウィザード」 

「ムーンアップ」 

 

 僕はルードに効果上昇の魔法をかける。

 

「行くよ、ルード。ムーンボール!」 

「ガァモォ!」 

 

 ガーンという雷が黒い巨人にぶち当たり、僕の魔法が追い打ちをかける。激しくダメージエフェクトを散らしながら、やっと黒い巨人は消えていった。

 

>>>>>>>

鍛冶レシピ:鉱石1 を手に入れました

<<<<<<< 

 

 心の中で叫びを上げる。一番欲しかったアンコモンが、いきなり僕にドロップした。

 

「よっしゃ、討伐完了だ!」

「やったぁ!」 

 

 ウィザードとエリスが、抱き合いながら喜んでいる。

 

 ドロップは嬉しかったけれど、この状況では喜べなくて、僕はゴリと見合ってしまった。

 

 ただゴリはフードを被っているので、見合っているはずだって言う予想だけれど。

 

「ルード送還」 

「あっ、戻すのか」


 本来召喚する予定ではなかったので、僕はすぐに送還した。このまま戻ってしまったら、ハワワの立場が無くなりそうで心配になったのだ。

 

「たまたまリックが抜けたから召喚できたけれど、もともとその予定はなかったから」

「そうか。でも召喚獣って凄いんだな。何体か見たことあるけど、あんなに強いのは初めてだぜ」 

「私も。可愛いのは見たことあるけれど、シュッとして格好良かったわ」 

 

 褒められるのは悪い気分ではない。でもここで話をしていたら、ハワワが心配するだろう。

 

「ハワワが待ってるし、外に出ようよ」 

「そうでゴンス!」 

 

 ナイトメアボスの討伐と、レシピのドロップにホクホクしながら、僕らは迷宮から脱出した。

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