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召喚師で遊ぶVRMMOの話  作者: 北野十人
ロッカテルナ湖を攻略したい
120/176

120.ランダムパーティで戦闘開始

 迷宮に転送されたら、なんとなく違和感があった。鉱山迷宮のハードは何回もクリアしているけれど、どこなく雰囲気が違う気がする。

 

「フルパーティだから、気をつけて行こうぜ」 


 ウィザードの言葉で思い出したけれど、パーティメンバーが増えたら、迷宮の魔物も数が増えてくる。しかもちょっとだけ強くなっているはずだ。

 

 どうやらそのせいで、違和感を覚えたらしい。

 

「い、行きます」 

 

 ハワワが先頭になって、僕らがついていく。隊列らしい隊列でもないけれど、前衛と後衛でなんとなく別れて進んでいった。

 

「5くるぞ!」 

 

 地面の岩が動き出し、岩石人形の形になっていく。もう少し密集していれば、僕のムーンボムも役に立ちそうだけれど、適度に離れているので、複数には当てられそうになかった。

 

「少爆裂!」 

 

 岩石人形の近くの地面が、いきなり爆発して石つぶてを撒き散らす。それらはガンガンと岩石人形へと命中し、激しくダメージエフェクトを飛ばしていた。

 

「すごい!」 

「闇に滅せよ!」 

 

 全く闇と関係ないけれど、その威力は素晴らしい。爆裂が弱点というのもあって、かなり削っているだろう。

 

 でもハワワが名乗りをあげない。そのせいでダメージを与えた3体が、リックの方へと向かっている。

 

「ハワワ。名乗りをあげて!」

 

 状況に飲み込まれている感じだったので、僕は大きな声で活を入れる。

 

「はい。ぼ、僕の名前はハワワワワワワ……」


 魔法の範囲外だった2体が近づいてきたせいか、ハワワが慌てた感じで名乗っていた。でもスキルは成功したようで、リックを襲おうとした3体も、ハワワの方へと向きを変える。

 

「ここだ。連撃!」 

 

 ウィザードが槍を突き出し、まだノーダメージの岩石人形へと攻撃する。そこそこダメージエフェクトが飛んでいるので、装備しているのは良い槍らしい。

 

 エリスはもう一体の無傷な岩石人形の背後へと回り、両手に持った二本の短剣を振るって攻撃していた。

 

(思ったよりも弱い。硬い魔物を短剣で切りつけても、ほとんどダメージエフェクトが出ていないよ)


 突く感じで攻撃すれば、多少はダメージが上がるかもしれないけれど、ちょっとエリスとは相性が悪い感じだ。

 

「ムーンボール!」


 全員の攻撃を確認してから、一番ダメージを受けていた岩石人形へと魔法を飛ばす。最初の少爆裂が良かったのか、僕の魔法で一体を破壊することができた。

 

「残り4だよ」

「俺にターゲットを合わせるんだ!」

 

 ウィザードがそう叫んだ。

 

 集中攻撃で数を減らすのには賛成だけれど、初手でバラバラに攻撃した今の状況では、ウィザードの攻撃だけを受けた岩石人形に僕の魔法を撃ち込んでも、絶対に倒すことはできない。

 

「ターゲットリーダーは私じゃないの? こっちにあわせてよ」 

 

 どっちでも良いけれど、最初に決めておくべきだった。

 

「ALは俺が専門なんだよ」 

「私も意外とやるわよ。っていうか、ALってなによ」 

 

 そんな言い合いをしながらも、二人はちゃんと攻撃をしている。でも無傷を相手にしているので、まだ倒せそうもない。

 

「ムーンスピア。ムーンブラスト!」

 

 倒せそうなのは少爆裂でダメージを受けている方なので、僕はそっちを狙ってみた。そして予想通り、この攻撃で倒すことができる。

 

「後3だよ」

「うおぉぉぉ、我が癒やしの神よ! ハワワを回復させたまえ! ゴッデスヒールでゴンス!」 

 

 その3体にハワワが攻撃されていた。初心者なのは間違いなさそうだけれど、しっかりと耐えているみたいだから、装備は充実しているらしい。

 

 それよりもゴリのセリフが長すぎて、沈黙とかどこ行ったとか言いたくなる。

 

「アタックリーダーに決まってるだろ」

「普通はターゲットリーダーでしょう」 

 

 どちらも複数の魔物に襲われた時に、どれから倒すのかを指示する役目だ。言い方が違うだけで、意味は全く変わらない。

 

「あれ。リックは?」 

 

 少爆裂以来、魔法が飛んでいないのが気になってリックの方を見たら、そこには誰もいなかった。どこに行ったのか確認すると、洞窟の陰になっている所に隠れている。

 

 援護を頼もうと思ったけれど、おそらくあれはロールプレイなのだろう。闇魔道士だから、闇に紛れているつもりなのだ。

 

 いくらロールプレイとは言え、さすがに限度があるはずだ。もしも働かずにあんなことをしていたら、僕は許せなかったかもしれない。

 

 でもこの戦闘においては、一番ダメージを与えているのはリックだ。ちゃんとではないけれど戦っている限り、他のメンバーも文句を言わないならば、ある程度は許容したほうがいい気がした。

 

「天の癒やし地の癒やし。ハワワを瞬時に救いたまえ。ヒールでゴンス!」

 

 いろいろ言いたいことが有りすぎて、いまいち頭に入ってこない。でもこれで戦闘が維持できているのだから、ハワワの装備にもゴリにも余裕があるのだろう。

 

「ムーンボール!」 

 

 青白い玉が飛び出し、ウィザードが戦っている岩石人形へと命中する。きれいな多角形の板を撒き散らせながら、そのままスゥッと消えていった。

 

「残りは2だよ」

「おら、連撃だ!」 

 

 少爆裂でダメージを受けていた最後の一体だったけれど、それで倒すことはできなかった。全てが同じダメージというわけではないので、ちょっと運が悪い感じだ。

 

「えい、えいっ!」 

 

 さっきからずっとエリスは戦っているが、あまり大きなダメージは与えられていないだろう。

 

 でもふざけているわけではないはずなので、頑張れって応援したくなる。

 

「ムーンブラスト」 

 

 ウィザードが倒し損ねた岩石人形に、僕は魔法をぶち当てる。すでにギリギリだろうという予想通りに、それだけで倒すことができた。

 

「残り1だよ!」

「集中攻撃行くぜ」 

「我が癒やしの力よ。ハワワを癒やすのだ。ヒールでゴンス!」


 神様どこ行ったと思うけれど、ゴリに突っ込んだら負けな気もする。


「ムーンスピア」


 本当なら爆裂が欲しいところだけれど、もしかしたら範囲攻撃しかないのかもしれない。リックについては他のメンバーが何も言わないなら、僕から言うのは止めておこう。

 

「槍の秘伝、串刺し!」 


 見た目では違いがわからないけれど、ウィザードが岩石人形を槍で突いた。すると岩石人形の反対側にまで、ダメージが突き抜けているようにエフェクトが飛んでいく。


「痛っ!」

「あっ、悪い」 

「うおぉぉぉぉ、麗しの乙女の柔肌よ! 天の力もて神秘の癒やしを! ヒールでゴンス!」 

 

 串刺しはおそらく、背後にいる魔物にまでダメージを与える秘伝なのだろう。岩石人形の陰に隠れてエリスが見えなかったのか、技の選択を間違えたらしい。

 

 でもその攻撃で、最後の一体も消えていく。ランダムパーティでの初戦闘は、なんとか無事に終了した。

 

「ふぃぃぃ。いやぁ、白熱したねぇ!」 

 

 おそらくはウィザードとエリスが喧嘩をはじめると予想し、僕はがんばって話を誘導する。

 

「そうよね。いい戦闘だったわ。ウィザートは今度は気をつけてよね」 

 

 エリスはそう言いながら、胸の下で手を組んで、両足を交差するようにしてポーズをとる。

 

 もしかしたら胸を強調しているつもりかもしれないけれど、革の胸当てがあるので、全くその意味をなしていない。

 

 と言うか、なんでそんな事をしているのか理解できなかった。

 

「悪かった。気をつけるよ」 

 

 ウィザードも素直に謝ったので、特に喧嘩にはならなかった。エリスがぱちっとウィンクした時、僕はなぜなのかピンときた。

 

(ゴリにウィンクって、麗しの乙女という言葉で機嫌が良くなったってことか。ゴリはこの展開を予想していたのかも)


「あの、エリスさん。素敵です」

「ふふっ、ありがとう」

 

 ますますエリスの機嫌が良くなっていく。でも戦闘には勝ったけれど、まだまだ連携は取れていない。

 

「そうだ。ターゲットリーダーを決めようよ。最初はウィザードで、次はエリスって感じで、交互にやるのはどう?」 

「それは良いアイディでゴンス!」

「ん? ああ、それでいいぜ」 

「私が先じゃないのは気になったけど、今ならなんでもいいわ」 

 

 エリスがごきげんだったおかげか、思ったよりもすんなり話はついた。

 

「ハワワは魔物がでたら、慌てずに名乗ってね」 

「はい!」 

「そうと決まればサクサク行こうよ!」 


 パンッと手を叩いて、エリスがその場で足踏みをする。笑顔ですごく楽しそうにしているので、パーティの雰囲気もいい感じだ。

 

 喧嘩とかして険悪になりそうだったけれど、意外とエリスはムードメーカーかもしれない。

 

「ハワワ、頼んだぜ」

「行きます」


 再びハワワを先頭に、僕らは隊列を組んだ感じで進んでいく。

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