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召喚師で遊ぶVRMMOの話  作者: 北野十人
小鬼を仲間にしよう
12/176

12.魔物の名は『はぐれ鬼』

「はぐれ鬼? 初めて見るぞ」


 Tシャツの小鬼の例もある。もしかすると夜のレアポップかもしれない。僕は様子を見ながら、魔法力の回復に努める。

 

「ラビィ。僕が戦うから。ヒールをよろしくね」

「わかったナァ」


 『はぐれ鬼』はゆっくりと森の中を歩いている。僕の視界から消えていかないほどの、ゆっくりとした動きだった。でもあの『はぐれ鬼』は小鬼と違い、二メートル以上の背の高さがある。筋肉もムキムキだし、攻撃を受ければかなりのダメージになるだろう。

 

「よし。そろそろやるよ。ムーンブラスト!」


 僕はムーンブラストの最大威力、魔法力消費10で発動した。輝く光の球が『はぐれ鬼』へと正確に向かっていく。『はぐれ鬼』はこっちに気がついたみたいで、魔法の方へと体を向けた。

 結果的にそのせいで、ムーンブラストは『はぐれ鬼』の右肩に命中した。

 

(胸に一撃のはずだったのに……) 

 

「グウォォォォ」 


 ドシンドシンと音を立て、『はぐれ鬼』が近づいてくる。僕は近づかれる前に、さらに魔法を打ち込んだ。

 

「腕で受けるのか!」


 胸を狙った一撃をかわすでもなく、左手を前に出して受け止めた。いわゆる僕の最大威力の魔法なのに、ダメージを受けているようには見えない。

 僕はそこから移動して、ラビィから離れるような位置を取る。『はぐれ鬼』は狙い通り、僕の方へと向かってくる。

 

「突進ナァ!」 

 

 どうやって倒そうかと思案していたところで、ラビィがまさかの突進をした。でもそのおかげで更にまさかが起こる。『はぐれ鬼』の左足の膝。それがラビィの突進の狙いだった。

 

「グウォ」 

「アクアショットナァ!」


 横からの突進で折れ曲がりかけた膝に、アクアショットで追い打ちをかける。ブォキィと嫌な音が聞こえ、『はぐれ鬼』は地面に倒れかけた。

 

「離脱だナァ」 


 ラビィの方へ倒れかけてくる『はぐれ鬼』から、さっと距離をとった。

 

「ナイスだラビィ!」


 僕の方へ近づいたことで、ぎりぎり『はぐれ鬼』が見えたのだろう。膝を壊して倒れたなら、僕の魔法もかわせないはずだ。

 

「ムーンブラストぉ!」 


 倒れ込んだ『はぐれ鬼』の頭に向かって、僕は渾身の魔法を撃ち込んだ。だけど『はぐれ鬼』は右手をかざして、僕の魔法を受けとめる。

 

(倒れても両手は自由ってことだ) 


 僕はバスタードソードを振りかぶりながら、『はぐれ鬼』に向かって走り込む。

 

「それっ!」 


 横向きに倒れ込んだ『はぐれ鬼』は、右手で僕の剣を受け止めた。でもさすがに無傷ではない。しっかりと右腕に刃が食い込んでいる。それでも『はぐれ鬼』はまだ元気だった。近づいた僕の足に、太い左腕が近づいてくる。

 

 グッとふくらはぎを掴まれると、骨でも砕けたんじゃないかという痛みが走る。だがこれは僕の狙い通りだ。足を掴まれると言うのが、僕の作戦なのだ。

 

「右手には剣が、左手は僕の足。ならお前の頭は何で守る?」 

 

 近距離で青く輝く光が瞬く。それは驚愕の表情を浮かべた『はぐれ鬼』の頭を、正確に撃ち抜いた。

 

 多角形の板を撒き散らしながら、『はぐれ鬼』はすぅっと姿を消していく。


>>>>>>>

鬼の角×1

鬼の指輪×1

石貨×7253

人エッセンス×2

獣エッセンス×3

鬼エッセンス×7 を手に入れました

<<<<<<<


 

「僕の勝ちだ!」 

「マスター、やったナァ!」 

 

 ラビィが突進してくると、僕はその勢いのままに一緒に地面に倒れ込んだ。右足を痛めつけられて踏ん張りがきかず、受け止めきれなかったのだ。

 でも痛かったはずの右足から、スッと痛みが消えていった。

 

(これはヒール? そっか。ラビィの魔法だ) 


 ラビィを抱きしめながら、無事でよかったと僕は安堵した。

 

--------------------------


 運が良かったのか、そのまま寝転がって休んでいても、小鬼の襲撃はなかった。僕らは完全に回復すると、まだ暗い森の中に座り込んだ。

 

「なんで卵はドロップしないんだろう。ドロップはいい感じなのに」 


 石貨の方はどこかで使えるお金って言う説明だから、いつ役に立つかはわからない。でも『鬼の指輪』は悪くない。何しろ筋力+2。物理攻撃力に換算すると、攻撃力+2の一品だ。


 召喚師の物理攻撃力の計算は、筋力×1.2だ。切り捨てなので、この装備だけを考えれば、どちらも+2だけ上昇する。剣士や戦士はこの係数も優遇されているので、単純な強さだけなら、やはり専門職にはかなわない。

 

「次があるナァ」 

「そうだね。今ドロップしないなら、次でドロップすればいい。ドロップするまで頑張るよ」


 僕は少しづつ明けていく森のなかで、次こそは手に入れると気合を入れた。

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