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召喚師で遊ぶVRMMOの話  作者: 北野十人
ロッカテルナ湖を攻略したい
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119.ランダムでパーティ

 チェルナーレの街をポータル目指して歩いていたら、ふとパーティマッチングを思い出した。

 

 最近はアロイ・ガライを攻略することが多かったし、目先を変えて鉱山迷宮のハードへ行ってみたくなった。

 

 そう決めると、僕はパーティマッチングのメニューを開く。初めてだけれど、使い方がわからないということはない。

 

 目的だけを登録すれば、あとは勝手にシステムがマッチングしてくれる。

 

 ほどなくしてパーティリーダーの元へ転送しますというメッセージが流れ、すぐに鉱山迷宮前のポータルへと到着した。

 

「よっ! パーティリーダーの剣士で名前はウィザードだ。よろしくな」 

 

 シャープで軽そうな全身鎧を着て、槍を装備した男が、右手を軽く上げて自己紹介してきた。職業と名前がややこしいけれど、初対面で言える勇気はない。

 

 その直ぐ側には、戦士の人や露出過多の斥候の女性がいるけれど、どうやらパーティメンバーらしい。

 

「ぼ、僕はまだはじめたばかりで初心者のハワワです。よろしくお願いします」 

 

 戦士のハワワはガッチリと鎧を着て、片手斧を装備していた。表情は見えないけれど、話し方から緊張している感じがした。

 

 タンク役をすると思うのだけれど、ちょっと頼りなさそうで不安になる。

 

「あたしはエリス。戦闘系斥候のエリスよ」 

 

 あっさり風味の顔をして、茶髪のパーマをポニーテールにしたエリスは、なんとなくオシャレ感が漂っていた。

 

 でも首から下だけで言えば、おへそが丸見えになるミニTシャツに革製の胸当てで、小さめのショートパンツからは、生足が丸出しになっている。

 

 どちらの装備も赤がベースで、とにかくすごく目立っていた。

 

 ただこのシステムでは生足でも、下半身防具の防御力はあるし、傷がついて血が出るということもない。でもだからといって、積極的に肌色成分多めの装備をする理由はないだろう。

 

 そんな格好で魔物の出る迷宮へ行くのって考えたら、影響はないとは言え、もっとちゃんと装備しなよって思ってしまう。

 

「えっと、僕は召喚師のラル。よろしくね」 

「よろしくな。後二人参加するから、もう少し待ってくれ」 

 

 召喚しようと思ったけれど、どうやらプレイヤーでフルパーティにするみたいだ。よく考えたら召喚獣もパーティメンバーになるので、最初から召喚してパーティマッチングをするべきだったかもしれない。

 

「ラルってすごい格好だよね。私には真似出来ないわ」 

 

 ケラケラって感じで笑いながら、エリスが僕を指差した。

 

 王冠に小鬼のTシャツ、執事のズボンにモコモコの手甲、おまけにイモキンマントを装備した僕は、特徴のある装備という枠でくくれば、意外とイケているはずだ。

 

 でも他の人から見れば、変な格好というのはちゃんと理解している。

 

「能力重視だからね。僕は見た目にこだわらないのさ」 

「私は逆よ。見た目が悪かったら、ものすごい装備だとしても捨てちゃうわ。オシャレでしょ?」


 エリスは脚を交差させ、胸を張りながら両腕を頭の後ろで組んだ。うっふ~んて感じでこっちを見てくるけれど、特に興味が湧いてこない。

 

 僕の好みではないというのもあるけれど、あからさまにセクシーでしょって言われても、そうなんだくらいにしか感じなかった。

 

「い、いいと思います」 

 

 でもハワワは優しいのか、エリスを褒めていた。装備しているフルフェイスのヘルメットが下を向いているので、鎧の中で照れているのかもしれない。

 

「ポニーテールが似合ってますね」


 僕は当たり障りなく、髪型を褒めておいた。

 

「でしょ。やっぱり女の子はポニーテールよね」


 満足したのか、エリスは誘惑ポーズをやめる。

 

「っと、来たぜ」 


 そこへ残りのパーティメンバーが転送されてきた。偶然だと思うけれど、二人ともに黒いフード付きローブを装備しているので、顔がよくわからない。

 

「沈黙のヒーラー、ゴリでゴンス」

「闇魔道士のリックだ」


 背の高さは違うけれど、見た目が似ているせいか、どっちがどっちかわからなくなる。

「えっと、背の高いほうが……」 

「リックだ」 

「そうか。よろしくな」


 全員で改めて挨拶をかわすと、僕は闇魔道士という名前が気になってきた。もちろんゴンスとか初心者戦士とか、他にも気になることはあるけれど、闇魔法の取得方法は判明していないので、本当に使えるのか確認したい。

 

「リックは闇魔法を使うの?」 

「影に棲み、闇に生きるが闇魔道士なり!」


 右手で胸をどんと叩いて、どやって感じでリックが言った。これを翻訳するならば、闇魔法は使えないってことだろう。

 

「一応説明するが、ハワワはタンク、俺とエリスが近距離アタッカーで、リックとラルが遠距離アタッカーだな。で、ゴリは回復を頼む」


 順当というか、職業的にも当然の割り振りだ。全員が頷いていると思ったら、ハワワが右手を上げている。

 

「あの、タンクってなんですか?」 

「ん?」 

 

 今回の目標は鉱山迷宮のハードだ。つまりそれなりにレベルが無ければ参加できない。ハワワが初心者だったとしても、ここまでレベルを上げるためには、パーティでの経験もあるだろう。

 

 なのにタンクとは何という質問に、他のメンバー全員が戸惑っている。

 

「魔物の攻撃を受け持つ役割だね。多分、名乗りのスキルを持っていると思うけれど、主にそれで魔物を引きつけるんだ」

「そうなんですね。わかりました」

「って、ちょっと待ってくれ。ハワワは今までどうやってレベルを上げたんだ?」 

 

 きっとここにいる全員が、聞きたかった質問だろう。

 

「この前までPL大好きってクランに居たんですが、解散してしまったんです。パーティを組むのはそれ以来です」 

 

 パーティメンバーのうち、ウィザードとエリスと僕以外の表情は見えない。だからはっきりとはしないけれど、この話を聞いても怒っている感じの人はいなかった。

 

 場合によっては『やってられるか』とか言って、パーティから抜ける人もいたりするけれど、今回はそういう人はいないらしい。

 

「PL大好きって、パワーレベリング大好きってことかな」

「えっと、よくわからないですけど、リーダーの人はプリティレディ大好きとか言ってました」

 

 ハワワの現状を見れば、リーダーがふざけているのがよく分かる。初心者をパワーレベリングして、何かの理由で解散して放置したってところだろう。

 

 役割のある戦闘で、重要ではない職業はないけれど、タンクは要になるはずだ。ある程度説明しながら、ゆっくり進んでいったほうが良いかもしれない。

 

「軽く説明しながら行きますか」

「そうだな」 

「ほら、決まったならサクサク行こうよ」 

「どこまでも行くでゴンス!」

「よろしくおねがいします」


 こうやって話しているだけでも、ある程度は性格が出ている。エリスは間違いなく話を聞いていないし、沈黙というキャラ設定なのに、ゴリは元気に返事をしていた。

 

 リックが無言なのは闇魔道士のキャラだろうけれど、沈黙のリックとか言う方が、しっくりくるかもしれない。

 

「行くぜ!」 

 

 ウィザードが迷宮を選択すると、僕らは中へと転送された。

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