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召喚師で遊ぶVRMMOの話  作者: 北野十人
ロッカテルナ湖を攻略したい
118/176

118.ハードの黒騎士

 ハードの黒騎士の修練場でも、僕らは順調に進むことができた。やはり赤さんの火力はすごく、強くなっているはずの動く鎧でも簡単に破壊していた。

 

 とはいえ、僕だって役に立っていないわけではない。ラビィはもちろんのこと、エリーも火力として優秀だし、僕の魔法だって捨てたものではないのだ。

 

 ボス戦は周囲の魔物のポップ数が増えていたけれど、特に問題なく倒すことができた。

 生憎ドロップは振るわないけれど、もともとそれが目的というわけでもない。僕は鎧の卵があったらいいなくらいだったので、それで落ち込むこともない。

 

 僕らは戦闘を終えて落ち着くと、パンクを先頭に例の小部屋へと向かった。

 

--------------------------


 小部屋への道は、ノーマルの時と変わらなかった。何度か角を曲がった先に、同じように男の石像があった。

 

 ただその像は、最初から左手に盾を装備している。

 

「こんなところに部屋があったでござるか。気がつかぬとは不覚でござる」 

「いわゆる野良パーティでやってたら、そんな余裕もないよね」


 黒騎士の石像はノーマルよりも背が高く、2メートルくらいありそうだ。それが下半身を覆うくらいの大きさの、ラウンドシールドを持っているのだから、なかなかの威圧を感じる。

 

「そういえば盾を装備してるんだね」 

「そこがノーマルとは違うんだろうな」


 そう言いながら、パンクが石像に装備をセットしていく。僕も持っている装備と、黒騎士の槍を石像にセットした。

 

「最後は赤さんよろしく」

「任せるでござる」


 赤さんが鎧をセットすると、石像が輝き出した。


『我、ビクトール・ランディ。最も統率に長けた黒騎士なり。資格を持ちし者たちよ。我に挑むか?』


 前は最弱の黒騎士だったけれど、今回は統率に長けたとか言っている。このことから、対パーティ戦になるんじゃないかと予想できた。

 

「多対多の戦闘でござるな」

「何人いようと、俺が抱え込んでやるぜ!」


 パンクが多数を抱えながら耐えられれば、こっちは一方的に攻撃できるようなものだ。たとえ複数を相手にしても、パンクがいれば大丈夫だと思える。

 

「よし。やるよ」 

「行くぜ!」 

 

『我を倒してみせよ!』


 その瞬間、フッと景色が変わった。

 

--------------------------


 前に黒騎士と戦った時と同じような部屋に転送された。でも予想とは違って、さっきの石像と同じ姿の、ランディしかいなかった。

 

「最初は一人でってことか? 行くぜ! 我が名はパ……」 

「我が名はビクトール・ランディ!」


 パンクの名乗りにかぶせるように、ランディが名乗りを上げた。

 

「っちぃ!」


 ランディの背後の床に、6つの魔法陣が浮かぶ。そして姿を見せたのは、ノーマルで戦った黒騎士そのものだった。

 

「黒騎士パーティでござる。それよりもターゲットを、ランディ殿から変えられないでござる」


 珍しく赤さんの声に、ちょっと焦りが混ざっていた。でもそれ以上に、僕に向かってくる黒騎士たちに、ターゲットをあわせられないことに驚いてしまう。

 

「ルード。サークルアタックだ!」

 

 黒騎士がルードの横を通る時に、範囲攻撃でダメージを与えてもらおうと思っていた。なのにルードは、サークルアタックを発動しない。

 

「まさか……ブレイクだ!」 

「ガモォ」


 ルードはブレイクを使って、ランディに攻撃する。それを見て僕は理解した。名乗りを受けると、プレイヤー側はターゲットを変更できないのと同時に、範囲攻撃を封殺されてしまうのだろう。

 

「ぐっ」 

 

 近づいてきた黒騎士の攻撃を、避けきれずに横腹をかすめた。その瞬間、脇腹から全身に電流が走った。

 

 しかもその一撃で、僕の体が硬直する。

 

「不覚でござった……」


 赤さんが黒騎士の槍の直撃を受け、スゥッと姿が消えるのを見た。それと同時に、硬直した僕へ向けて、黒騎士の槍が突き出される。

 

(召喚獣を狙わずに、僕に集中してきた。黒騎士の中身が人間だとするならば、それぐらいの知恵はあるよね……)


 名乗りの効果が切れる前に、赤さんと僕は、取り巻きの黒騎士によって倒されてしまったのだ。

 

--------------------------


 ふと気がつくと、黒騎士の修練場の入り口に飛ばされていた。

 

「やられてしまったでござるな」 


 すでに座り込んでいた赤さんが、僕を見て声をかけてきた。

 

「本当だよね。まさか名乗りを上げてくるなんて!」


 予想外の展開に、僕は興奮していた。統率が得意と言っているし、僕に集中攻撃してきたのも、作戦通りなのだろう。

 

「単体の強さではなく、パーティを活かした戦いだったよ。名乗りがくるなんて思っていないから、初手で遅れてしまった感じだよね」

「そうでござるな。最初の名乗りを防ぐか、先に名乗ってしまう必要がありそうでござる」


 名乗るとわかっていれば、対処法はあるだろう。でもできれば初見で倒したかった。仮にも騎士と言っているのだから、名乗る可能性には気がつけたはずだ。

 

「いやぁ、痛恨だよ。騎士なら名乗りそうなのは、気がつくべきだよね」 

「やけに嬉しそうでござるな」 

 

 赤さんは落ち込んだ様子はないけれど、興奮している様子もなかった。いきなりテンションが上がった僕を、不思議そうな感じで見つめてくる。

 

「僕が出会った中で、一番の強敵だよ。こんなにあっさりと倒されるなんて、考えてもいなかった。だからこそどうやって倒すか考えていたら、なんだか楽しくなるのさ」 

 

 もともと僕は困難であればあるほど、楽しくなってくる性格だ。だからといって無謀という訳ではないので、レベル1で高レベルゾーンに行ってウハウハとかは思わない。

 

「困難や逆境を楽しむタイプでござるな。さすがレアハンターでござる」 

「僕は必ず手に入れる。あのランディを……」 

 

 っと、ノってきたところで、パンクが転送されてきた。

 

「やられた! あんな技まであるのか……」

 

 パンクは戻ってくるなり、ガシャンと鎧を鳴らして床に座る。

 

「あいつはやばい。おそらく俺の装備だと、耐えきれなくなりそうだ」 

「そんなに攻撃力が高いの?」 

 

 パンクの耐久度も防御力も、かなり高いのはわかっていた。それでも耐えられないと言うならば、よほどの攻撃を受けたのだろう。

 

「赤さんの爆裂と同じで、武器に雷属性を持っている感じだ。魔法防御力では軽減できないし、雷耐性みたいのがないと、まともにダメージが飛んで来るぞ」 

 

 そういえば取り巻きの黒騎士の攻撃を受けた時、雷の衝撃で硬直までさせられた。黒騎士全員がそれをもっているのなら、雷対策をするべきだ。

 

「耐性装備が必要ってことかな」 

「爆裂、雷、氷、闇、光の耐性は、聞いたことがないでござる」 

「一応黒騎士シリーズを集めたら、黒騎士見習いの称号のおかげで、多少の雷耐性は手に入るぞ」 

 

 そういえば失敗した場合は、装備がどうなるのか気になって、インベントリを確認してみた。

 

 ちゃんと戻っていたので、僕は性能を確認する。

 

「耐性が小さいとは言えあるけれど、そもそも防御力が足りないよね」

「そうなんだよな。性能が微妙だから、黒騎士戦での専用装備って感じもしない」 

「いろいろ謎が多いでござるな」 

 

 戦ってみた感じで、パンクが耐えられないと言うなら、再戦しても無駄だろう。

 

「鉱石の謎とかもあるし、他のゾーンとの絡みもあるのかも?」 

「あるかもしれないが、今のところは不明だな」 

「話の途中でござるが、救援要請がきたでござる」 

 

 赤さんは普段からいろいろなパーティと組んでいるから、こういうのはよくあることだ。こっちのきりもいいし、そろそろ解散でもいいだろう。

 

「はい。気をつけてね」 

「またな!」 

「では失礼するでござる」 

 

 赤さんは素早く街へと戻って行った。

 

「きりもいいし、こっちも解散するか」 

「そうだね」


 僕はレベル上げもかねて、一人でアロイ・ガライへと向かった。

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