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召喚師で遊ぶVRMMOの話  作者: 北野十人
ロッカテルナ湖を攻略したい
116/176

116.伝達方法

 廊下へと戻る階段を降りていると、途中でパンクがいない事に気がついた。

 

「パンク?」


 ふと見ると、廊下の床板が割れて、大きな穴が開いている。僕の夜目の技能でも、穴の奥が真っ暗で見ることができない。

 

「この穴に落ちた? でもこんなに大きな穴なら、音が聞こえても不思議じゃないのに……」


 声に出してみても、考えはまとまってくれない。そもそも屋根裏部屋にゴーストがって言うのを信じすぎて、他の部屋を調べなかったのが失敗だ。

 

 廊下の穴は大きすぎて、僕にはジャンプしても越える自信がない。行ける場所は少ないけれど、今からでも他の部屋を調べてみよう。

 

 行ける方向が一つしかないので、階段の裏に回って廊下の奥を進んだ。

 

 でもすぐに行き止まりで、左右の壁にそれぞれ扉がある。

 

「4桁のダイアル式のロック。大昔の鍵だ」

 

 昔はいい肉だとか、ご苦労さんなど、語呂合わせの番号が流行っていたらしい。でもここで試して何かあっても嫌なので、ちゃんと調査していこう。

 

 右の扉には鍵もかかっていないので、僕は先にそっちから調べることにする。

 

 扉を開けると、ちょっとした小部屋になっている。家具なども何もない部屋の中央に、片手で持てる小さな太鼓とバチが置いてあった。

 

 左手に太鼓を持ってみると、縁にドンドンカッカッカッとか、文字が彫られていた。

 

「この通りに叩けばいいのかな……」


 右手にバチを構えると、僕は彫られた通りに太鼓を叩く。

 

 ドンドンカッカッカッ、ドンカッカッ。

 

 部屋に家具などがないせいで、意外に大きく音が響く。ちょっとうるさいなと思いながら、間違えないように太鼓を叩いた。

 

 最後にドンと叩いた時、いきなりバァンと太鼓から煙が上がる。


「っ」


 思わず太鼓から手を離し、僕はその場に尻餅をついた。

 

「なんで爆発するんだよ!」


 僕の叫びに、声を返す人はいない。もうもうと上がる煙の中から、ひらりと紙が落ちてきた。

 

 座ったままそれを拾い上げると、紙には文字が書いてある。

 

「えっと、お前の声は聞こえるが、それ以外は聞こえない。4つの数字が知りたいならば、壁に問いかけよっか……」

 これを見てどうすればいいかなんて、すぐには思いつかなかった。でもはっきりと分かるのは、番号が知りたければ、壁に聞けってところだけだ。

 

「壁さん、壁さん。4桁の番号を教えてください」


 素直に壁に向かって言ってみたけれど、当然ながら何も返答はない。そもそも壁に聞けと言うのは、何かしらのなぞなぞだったりするのだろう。

 

「壁は比喩ってことかな。そうすると最初のお前の声は聞こえるのくだりは、そういう機能を持った何かってことだと予想できる。っとすると、マイクかな? いや、なんだか違う気がするよ……」


 しばらく悩んでいたら、壁の向こうからガァンと何かがぶつかった音が聞こえた。

 

「壁の向こうに誰かいるの? 僕の声聞こえま……そういうことか!」

 

 そこで初めて気がついた。これは比喩とかなぞなぞじゃなく、ものすごくストレートな問題だ。

 

「そっちのだれかさん。4桁の数字を教えてください。そっちの声は聞こえないから、今みたいに何かを叩いてね。というわけで、最初の一桁目は?」


 ガァン、ガァン、ガァン、ガァン。

 

 4回聞こえたから、最初の数字は4だろう。

 

「4だね。次は何?」


 何も音が聞こえない。僕の声が聞こえなかったのだろうか。

 

「ごめん。4の次の数字は?」


 それでも何も聞こえない。少しだけ不安になったけれど、ぎりぎりでひらめくことができた。

 

「あっ、0だね。合ってたら一回だけ鳴らしてよ」


 ガァン。

 

 思った通りの返答だ。0さえ乗り切れば、難しいところはないだろう。

 

 そうやってやり取りしを繰り返したら、4093という数字がわかった。0は危なかったけれど、これであの扉は開くはずだ。


「ありがとう。4093だね。あってたら一回よろしく」


 ガァン。


 期待通りの音だった。

 

「それじゃね」


 もしかすると赤さんやパンクも、同じような状況にあるのかもしれない。

 

 そんな予感を抱きながら、僕は小部屋を出た。


--------------------------


 僕は小部屋を出ると、正面の扉の横にあるロックを確認する。

 

 数字のボタンがついているので、さっき確認したとおり、4093を打ち込んだ。

 

 ガシャンって言う音が聞こえ、ギィっと勝手に扉が開く。

 

 入り口から中を見ただけでもわかるけれど、部屋の中は空だ。念のため中に入ったけれど、5人も中に入れば狭くなりそうな部屋は、驚くほどに何もない。

 

「ロックまで掛けた部屋が空なのか……」

『おい、誰かいるのか?』


 部屋の中で、パンクの声が聞こえた。

 

「僕だよ。ラルだよ」

『誰もいないのか……だが壁に聞けってどういうことだ?』 

 

 もしかするとパンクは、さっきの僕と同じような状況なのかもしれない。僕は床をドンッと踏んでみた。

 

『おっ、そういうことか。誰だか知らねぇが、ロックを解除する4桁の数字を教えてくれ。その数だけ今みたいに叩けばいい。まずは1桁目だ』


 僕はさっきと同じように、床を踏んで音を鳴らす。4回音を立てたところで、僕は体を硬直させた。

 

『んっ、最初の数字は4だな。次は2桁目を頼む』

 

 次の数字は0なので、僕はそのまま動かない。

 

『聞こえなかったのか? 次の数字を頼む』

 

 やっぱり0は伝わりにくいのか、最初の僕と同じような勘違いをしていた。

 

『なんだ。いなくなったのか? もう一度聞くぜ。次の数字は何だ?』

 

 どうやら伝わらないらしい。この様子では、気がついてくれなさそうだ。仕方がないので、僕は10回床を叩いた。

 

『あん? 数字は1桁だろ。今のって10回だよな。まさか謎掛けなのか』

 

 9の次は10。すなわち0に気がつくことを期待したけれど、やっぱり伝わりにくいみたいだ。

 

『最初は4だから、410って3桁目まで教えてくれたのか?』

 

 その理論で行くならば、1桁目で40回も音を立てなければならない。完璧にするならば、4093回鳴らせば、すべての数字がわかるだろう。

 

 だがそれはあまりにも無茶な理論だ。

 

『待てよ。さっきのロックには、数字以外にも+と―のボタンがあった。10回鳴らしたってことは、つまり漢字の十。プラスの記号を表しているんだな! よし、三桁目をくれ!』


 僕の声は届かないので、間違いを訂正することはできない。そもそもそこまですごい発想ができるなら、単純な0に気がついてほしかった。

 

 とりあえず3桁と4桁の数字は普通に伝えることができた。でも2桁目だけは、完璧に間違えている。

 

 もしも僕が昔に廃止された、なんちゃら信号とか言う、叩く音で会話ができる方法を覚えていたら、結果は違ったかもしれない。でもパンクも知ってなくちゃならないし、どのみち無理だという事を理解した。

 

『誰だか知らないがありがとよ。またな!』


 どうやらパンクはいなくなったようだ。それで開かなければ戻ってくるかもしれないし、しばらくここで待機していよう。

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