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召喚師で遊ぶVRMMOの話  作者: 北野十人
ロッカテルナ湖を攻略したい
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114.新たなクランクエスト

 クランハウスに戻ってみると、エントランスホールのソファには、パンクと赤さんが座っていた。

 

「こんにちは。珍しい組み合わせだね」 

「よぉ。そうか?」

「こんにちはでござる。ちょっと情報交換をしていたでござるよ」


 僕はパンクの隣りに座ると、何の情報を話していたのか聞いてみた。

 

「ロッカテルナ湖の情報でござるな。攻略はできている気がするでござるが、ちょっと怪しいのでござる」 

「最後にボスがいるんだけどな、そいつが弱いんだよ。しかもドロップがないから、本当にボスなのかって噂になってるんだ」


 行ったことがないからなんとも言えないけれど、それだけ聞けば真のボスがちゃんといそうだ。でもそれを話したところで、なんの意味もないだろう。

 

「そうなんだ。一筋縄ではいかない感じなんだね」 

「まあな。そこにたどり着くのも大変なのに、最後が肩透かしって、なんか怪しいだろ?」

「攻略サイトの検証チームの結論は、未実装になっているでござる。そのせいか、最近はロッカテルナ湖の攻略より、火竜山に行くプレイヤーが増えているようでござるな」


 パンッっと手のひらを拳で叩きながら、パンクが面倒そうな顔になる。

 

「火竜山は俺達はルートが違うからな、最近は断っているんだよ。っていうよりも、ちゃんとロッカテルナ湖を攻略したいだろ?」 

「でも未実装なんでしょ?」


 僕もそれを鵜呑みにして、ロッカテルナ湖の攻略やーめた、っとはならないけれど、一応パンクにも確認してみる。

 

「攻略サイトがどうであれ、俺はやりたいからやるんだよ。ラルも同じだろ?」 

「まあね」

「拙者も攻略と調査をやめる気はないでござる」


 うちのクランのメンバーは、我が道を行く人しかいない気がする。それが悪いわけではないし、なんだかむしろワクワクする。

 

 攻略サイトに示された効率的な道をなぞるよりも、自分でやってみたいことを見つけて進んでいく。きっとそのほうが何倍も楽しいはずだ。

 

 だから僕は『あっち行ってみようぜ』って言葉が大好きだ。

 

「今の僕はレベルを上げて、あのクエストをクリアして、ロッカテルナ湖の攻略をはじめたるのが目標なんだ」

「レベルなんて戦ってれば……」


 パンクの言葉を、コンコンコンッて言うノックが遮った。


「どちら様でしょうか」


 前に見たトムが、素早く小部屋から出てきてそう言った。

 

「レアハンターズに仕事の依頼があってきました」

「マスター。よろしいですか?」


 トムが僕に聞いてくる。エントランスホールで話していたから、おそらくクランクエストだろう。

 

 パンクと赤さんに目配せすると、二人とも頷いてくれた。

 

「いいよ」


 僕はトムへ返事をしながら、赤さんを僕の隣に呼び込んだ。ソファは大きいので、僕ら三人が横並びになっても、狭くなる感じはしない。

 

 ただ向こうが一人だったら、ちょっと威圧してしまう気がした。


「お入りください」


 トムが扉を開けると、30代くらいの細身の男性が入ってくる。パリッとしたワイシャツに、スーツのような黒ズボン。ちょっと高級感がある出で立ちで、いわゆるいい生活をしてそうな感じがした。

 

「失礼いたします」 

 

 一人だったかと思いながら、男をソファへと促した。でも特に威圧されている様子はないし、もともとそういう反応はしないのかもしれない。

 

「どういったご依頼ですか?」

 

 クランマスターなので、僕が代表して尋ねた。

 

「私はチェルナーレで不動産を営んでいるハゴットと言います。あるお客様から、屋敷にゴーストがでるという苦情があったんです」

「お化け退治をしろってことか?」

 

 パンクが結論を急ぐけれど、まだまだ聞きたいことがある。

 

「そうです。そのゴーストを退治していただきたいという依頼です」

「えっと、そのゴーストはなんで突然出てくるようになったんですか?」


 話の流れを戻すために、僕はハゴットへ疑問をぶつけた。


「何十年も借り手がいなかったのですが、半年前に契約していただきました。お客様は最近になって、屋根裏部屋の存在に気が付き、掃除をはじめたそうです。するとそれをきっかけにして、男のゴーストがでるようになったとか」


 契約時には屋根裏部屋に気が付かず、最近になって気がついて掃除をした。すると男のゴーストが出現。まとめるとこんな感じだろう。


「そのゴーストの目的はなんですか?」

「妻と息子はどこだって言っているらしいですが、怖くてそれっきり屋根裏部屋にはいっていないそうなので、はっきりとはわかりません」


 最初に屋根裏部屋にゴーストが出た時から、そんなことを言っているなら、かなりの執着がありそうだ。

 

「住人の方は、それ以来屋敷には戻らず、別の場所で生活してもらっています。どうか早々に退治して、問題の解決をお願いします」


 少なくとも、そのゴーストを物理的に排除しても、このクエストはクリアできそうだ。でも最高点を狙うならば、それで解決してはならない。

 

「わかりました」

「ありがとうございます。それではよろしくお願いいたします」


 ハゴットは立ち上がると、丁寧にお辞儀をする。僕も思わず、座ったままでお辞儀してしまった。ハゴットがクランハウスから出ていくと、早速パンクが話し出す。

 

「よっしゃ。たまには男祭りと行こうぜ!」


 男3人しかいないから男祭り。それも悪くはないけれど、今すぐ出発は気が早い。


>>>>>>>

クランクエスト:屋敷の平和を取り戻せ

ゴースト×1

報酬:10クランポイント

<<<<<<<


 クエストを受諾した表示を見ても、最速クリアはゴースト退治だ。でもクエスト名を見れば、決して退治がベストな感じではない。

 

「待ってよ。このクエストは多分、力押しは通用しないよ」

「拙者も同意見でござる。謎解きの得意なモルギット殿がいれば心強いでござるが……」


 珍しく赤さんが言葉を濁す。ログインしていれば連絡も取れるけれど、生憎と今はログインしていない。

 

「ログインしていないんじゃ無理だろ。ないものねだりなんてしないで、今できることを全力でやろうぜ!」


 即断即決のパンクらしいけれど、僕は若干の不安を感じていた。


「それもそうでござるな。やはり拙者はパンク殿に賛成でござる」


 赤さんはあっさりと意見を覆す。まあ僕だってできれば完璧にクリアしたいけれど、無理そうだからまた今度なんて言うほど、空気が読めないわけではない。


 何より僕の好奇心が、早く行けと急かしてくる。


「行こうか」

「おう。それでこそラルだぜ」

「男祭りに出発でござる」


 僕がすっと右手を前に出すと、パンクと赤さんが手を重ねてくる。

 

「エーンドパンクリオーン!」


 男祭りってシチュエーションに合わせて、少し前に流行った男臭い映画の掛け声で、僕らは右手を突き上げた。

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