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召喚師で遊ぶVRMMOの話  作者: 北野十人
ロッカテルナ湖を攻略したい
112/176

112.行き止まりの部屋

 左に曲がったり、右に曲がったりしながら、左の壁に沿って進んでいくが、なんにも代わり映えがしない。

 

 天井からコウモリがってこともないし、水は透き通っていてよく見えるけれど、水中に魔物がって感じもなかった。

 

「退屈なゾーンね」 

「今のところ何もないけれど、何もないってところが、僕は少し怖いよ」 

 

 マーミンがふっと足を止めて振り返る。

 

「どういうこと?」

「この地下水路の目的だよ。もしかすると罪人をここに落として放置したとか考えたら、すごく怖くない?」


 言いながら僕はブルッと震えてしまう。もしその予想が確かなら、出口なんてないだろう。

 

「ラル。想像力はすごいけれど、出られないゾーンなんてあるわけ無いでしょ。そもそも赤さんが同じようにここに来たとして、ちゃんと脱出してるじゃない」


 もしも赤さんがここに来ているのなら、その言葉はすごく心強い。でも別にここに来たとは言っていないし、発見したのはあの渦だった可能性もある。

 

「もう。怖がらせないで」 

 

 あるわけないと言いながらも、僕の予想はマーミンを怖がらせてしまったようだ。ルードも話が終わったのを理解したのか、再び通路を進んでいく。

 

(でも確かに、出られないゾーンなんてあるわけないよね) 


 僕は逆に、マーミンの言葉で安心していた。


--------------------------


 代わり映えのしないなかを歩いていくと、やっと変化を発見した。

 

「水路のない通路があるわ」


 通路はいわゆるT字路になっていて、左に曲がる方には水路はなく、右に曲がる方へは水路が続いていた。

 

 右の方へは、相変わらず脇に歩ける通路がある。でもまずは左を確認したい。

 

 マーミンが左の通路を確認できる場所まで移動すると、いきなり真剣な表情になる。

 

「どうしたの?」 

「行き止まりみたいね」


 僕も顔を覗かせて確認すると、少し通路が続いた先に、小部屋のようなものが見えた。でも全体は見えないので、行き止まりかどうかはわからない。

 

 ただ小部屋の奥に、骸骨が横たわっている。

 

「魔物かな。あれって骸骨だよね。でもなんで行き止まりってわかるの?」

「えっ、あそこで骸骨になったなら、部屋に出口はないのかなって。でも行ってみないとわからないわよね」

 

 きっと出口がないんじゃないかっていう不安な気持ちが、マーミンの判断を狂わせたのだろう。こんな地下に閉じ込められて、代わり映えのしない通路を歩かされたら、誰だって冷静さを失って当たり前だ。

 

 僕だってマーミンが一緒じゃなかったら、もっと不安になっていたかもしれない。

 

「ルード。近づいてみて」 

「モガァ」 

 

 ルードは通路を進み、骸骨へと近づいていく。すると横たわっていたはずの骸骨が、カタカタと動き出した。

 

「ルード、戦闘開始だ!」 


 ルードが骸骨へブレイクを使って攻撃すると、それだけで骸骨が砕け散る。

 

「あれ、弱い?」 


 駆け出した流れで小部屋に入ると、そこは生憎と行き止まりだった。

 

「上……どこまで続いているのかしら」 

 

 マーミンにつられて上を見ると、天井が見当たらなかった。僕にもどこまで続いているかも見えないくらい、高いところに天井があるのだろう。

 

「もしかして、ここから罪人を落として放置したのかしら……」


 さっきの僕に影響されてなのか、マーミンがとんでもないことを言ってくる。

 

「この高さから落とせば、おそらくこの部屋で終わりだよ。これだけ大掛かりな施設を作っておきながら、一人でおしまいって事はなさそうだし、なにか別の理由があるんじゃないかな」 

 

 そんな事を話していたら、砕け散った骸骨の隙間に、なにか紙のようなものをみつけた。

 

「これは……」 

 

 僕が拾い上げた紙には、殴り書きしたような文字が書かれている。

 

--------------------------

熱き魔人の宝を手に入れる夢は、どうやら夢で終わるようだ。

仲間はすべて倒された。

俺もここまで逃げてきたが、すでに脱出路はなくなっている。

そういえばもう一つ出口はあるか。

危険を知っていても、そっちへ行けばよかったかもしれない。


思い浮かんでくるのはグチばかりだ。

畜生、アイツがこんなことを言い出さなけりゃ。

止めだ。最期くらい、格好よくいこう。


覚悟していたが、熱き魔人はやってこない。

ここに逃げ道があれば、俺は無事でいられただろう。

ついていない。


食料も尽きた。

助けも来ない。

だから忠告しておいてやる。

熱き魔人は眠らせておけ。

起こしたことが間違いなんだ。

宝なんて忘れろ。

それにどれだけ価値があったとしてもだ。

--------------------------


 僕は手紙のようなものを読み終えると、それをマーミンに渡した。

 

 このメモで施設の存在理由がわかった気がする。熱き魔人と言うくらいだから、冷たいものに弱いのだろう。

 

 だからこういう水路を作って、熱き魔人を封印した。

 

 そしてもう一つ大事なことは、出口はちゃんとあるということだ。ただ危険を知っていてもという言葉から、普通に出ることはできないと予想できる。

 

「やったじゃない! 出口はやっぱりあるのよ」 

「そうだね。それを探して、また水路の脇を歩こうか。っの前に、休憩しとく?」 

「ここで? どうせなら他のところで休みましょうよ」 

 

 普通の魔物なら消滅するけれど、この小部屋には骨が散乱してしまった。ゆっくり休める気分にはならなさそうだし、マーミンの言うとおり先へ進もう。

 

「それもそうか。ルード、先頭を頼むよ」 

 

 僕らは隊列を組み直し、再び左壁の法則で歩いた。

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