11.暗闇の魔物
結局あの日は勢い余って130体くらいのバトルラビットを倒した。クエスト的には10体を10回で100体で良かったのだが、お互いがバラバラに戦っていたので、少しオーバーしたのだ。
「でもその価値はあったよね」
僕の召喚師レベルは上がらないけれど、ラビィはそれで3レベルになっていた。経験値を分けあうと言うから、もしかしてレベルが上がらないんじゃないかと思っていたけれど、ちょっと僕の考えとは仕様が異なっているらしい。
グループで得られる経験値は、僕のレベルが邪魔をして減ってしまう。その減った経験値を分けあうと思ったけれど、そうではないようなのだ。
バトルラビットで100の経験値が入るとして、それをまず50づつ分け合う。そこでレベル補正がかかって、僕には経験値がほとんど入らない。でもラビィはレベル1なので、50をそのまま取得できる。
高レベルになって契約した場合、育てるのが難しいと思っていたけれど、これは嬉しい誤算だった。
「ラビィ。今日は小鬼を狩るからね」
「まかせるナァ」
小鬼狩りの気分転換のはずだったけれど、ラビィをはじめ様々なことがあった。次の地域へ移動するという選択肢もあるけれど、僕は小鬼を諦めたりはしない。500で足りないなら、600でも700でも1000でも狩ってみせる。諦めない限り、ドロップする可能性は残っているのだ。
そんな事を考えならがら、僕らは南の森へと向かった。
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小鬼との戦闘はラビィ一人でも問題ないレベルだった。強くなっているし、アクアショットの一撃で倒しきれている。僕もムーンブラストで倒せるので、狩りの効率がかなり上がった。でもまだ卵はドロップしない。
「ムーンブラスト!」
「アクアショットナァ!」
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小鬼の角×1
人エッセンス×3
鬼エッセンス×1 を手に入れました
小鬼の角×1
人エッセンス×2
鬼エッセンス×5 を手に入れました
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ラビィの狩りのペースは、僕とほとんどかわらない。単純計算で前よりも二倍倒している事になる。
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小鬼の角×1
人エッセンス×2
鬼エッセンス×1 を手に入れました
人エッセンス×1
鬼エッセンス×1 を手に入れました
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ドロップがしょぼい時もある。こんなときは卵なんて出ないだろうなと、ついつい落ち込みそうになってしまう。
「アクアショットナァ!」
でもラビィの声が聞こえるだけで、前ほど暗くはならなかった。
「ムーンブラスト!」
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小鬼の角×1
人エッセンス×5
鬼エッセンス×4 を手に入れました
小鬼の牙×1
人エッセンス×3
鬼エッセンス×4 を手に入れました
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落ち込まなければドロップも良くなる。因果関係なんてあるはずもないのに、なんだかそんな気さえしてきた。
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小鬼の爪×1
人エッセンス×2
鬼エッセンス×3 を手に入れました
小鬼の角×1
人エッセンス×1
鬼エッセンス×2 を手に入れました
小鬼の角×1
人エッセンス×1
鬼エッセンス×4 を手に入れました
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ログを見てあれっと思った。僕は一体しか倒していない。なのにログでは三体分が存在する。
「すごい……」
ラビィの方を見ると、突進だけで一体倒し、アクアショットで二体目を倒す。森での小鬼の湧きが良いので、超効率で戦闘していた。
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小鬼の角×1
人エッセンス×5
鬼エッセンス×2 を手に入れました
小鬼の角×1
人エッセンス×3
鬼エッセンス×1 を手に入れました
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とか考えている間にも、ラビィは次々と倒している。
「よし、僕も負けないぞ!」
僕は気合を入れ直し、小鬼を討伐していった。
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夕方になり夜になった森は、星の光も届かずに、真っ暗になってしまう。
「マスター。なんにも見えないナァ」
「あっ、そうか」
小鬼は暗闇でも見える能力がある。でもバトルラビットにはそんな能力はない。
「マスターだけはわかるナァ」
小鬼が見えないのでは、戦わすわけにはいかない。幸い僕が見えるならば、回復役に努めてもらおう。
「ラビィ。戦闘はいいから、僕の回復をお願い」
「わかったナァ」
とは言えこの森で、僕が怪我をすることはないだろう。この場合の回復とは、魔法力枯渇による気分の悪さの回復だ。そもそもこのゲームではHPと言うものは存在しない。だからヒールで回復するのは、数字では見えない怪我やダメージなのだ。
だからヒールという魔法は、気分の悪さも癒やしてくれる。とはいえ魔法力枯渇という原因が消えるわけではないので、完全に気分が治るわけではない。
(でもすごく楽になる。ラビィはすごいな)
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小鬼の角×1
人エッセンス×2
鬼エッセンス×3 を手に入れました
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枯渇に近づければ、スキルレベルが上がる理論は、正しいのか間違っているのかはわからない。でも無魔法と同じペースでレベルアップしているから、多分正しいはずだ。
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小鬼の角×1
人エッセンス×5
鬼エッセンス×5 を手に入れました
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僕には夜も休んでいる暇はない。むしろ夜明けまでには、『小鬼の卵』をドロップしてみせる。
「ムーンブラスト!」
夜の闇の中で、月のように輝く光の玉は、とても美しく見える。見た目は美しいその魔法が、次々と小鬼を葬っていった。
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小鬼の角×1
人エッセンス×3
鬼エッセンス×2 を手に入れました
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「次だ!」
「ヒールナァ!」
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小鬼の角×1
人エッセンス×4
鬼エッセンス×5 を手に入れました
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何日目かも忘れたけれど、いまだにドロップする気配はない。でももともとそんな気配なんてものはない。こじつけで心を癒やす暇があるならば、とにかく倒すのが重要だ。
「ムーンブラスト!」
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小鬼の角×1
人エッセンス×2
鬼エッセンス×2 を手に入れました
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ラビィを仲間にしてから、僕はツいている気がする。
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小鬼の角×1
人エッセンス×3
鬼エッセンス×4 を手に入れました
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でもそんな気持ちをあざ笑うかのように、『小鬼の卵』はドロップしない。
「ヒールナァ!」
「ムーンブラスト!」
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人エッセンス×1
鬼エッセンス×2 を手に入れました
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小鬼の角さえドロップしない。そう言えば僕の幸運は13だ。ラビィは15だから、二人共に平均からは低い。
しかも幸運のパラメータだけは、レベルが上っても変化しない。クリティカルの確率に影響するとか言われているが、ドロップに影響するかまではわかっていない。
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人エッセンス×1
鬼エッセンス×1 を手に入れました
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ドロップが腐ってきたようだ。コモンすらドロップしないなんて、完全に運に見放されている。
落胆しながらも次の獲物を探している時、暗闇の中にうごめく大きな影が見えた。
「ん、なんだろ」
その影の大きさは、小鬼のものとは思えない。その影が近づいてくると、夜目のおかげではっきりと姿が見えた。