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召喚師で遊ぶVRMMOの話  作者: 北野十人
ロッカテルナ湖を攻略したい
105/176

105.黒騎士の修練場のボス

 戦闘が終了すると、部屋の中はシーンとなった。さっきまで鎧がガンガン鳴っていたことすらも、ウソのように感じるほどの静けさだ。


「最初は俺が行く」

「了解」


 パンクがそう言った途端、床に大きめの魔法陣が輝き出した。

 

 やがて現れたのは、暗い青色の鎧の魔物だった。

 

「暗青鎧だ。水系の魔法は無効だから、攻撃する時は火系で頼む」


 見た目通りの耐性のようだけど、いつもこれがボスなのだろうか。

 

「ボスはいつもこれなの?」 

「いや。中ボスと同じランダムポップだ。おらぁ!」


 パンクが暗青鎧へと走り込み、素早くメイスを振り下ろした。ガーンと激しい音がするけれど、ダメージエフェクトはそれほどでもない。

 

 そこへ暗青鎧が、パンクへと右腕で殴りつける。

 

「カウンターシールド!」 


 それを完璧なタイミングで、パンクは打ち返した。そこへハイズが走り込んでいく。

 

「連撃! シャシャッ」


 物理にも強いのか、飛び散る多角形の板が、さっきよりも少なく見える。

 

「慌てるな! こいつは2番目に注目を浴びているやつに、問答無用でダメージを与えてくる。離れてもダメージが飛んでくるし、絶対にかわせない」

「慌てるなって言うか、もう攻撃しちゃったじゃない!」

「耐えろ!」


 攻撃した以上、注目しているリストは変化しているだろう。僕が攻撃して2番目になってもいいのだけれど、耐えられるかどうかの確信がない。

 

(でもラッキーだ。戦闘中は召喚獣の入れ替えはできないけれど、今の状態ならまだ間に合う) 

 

 僕を含め、ラビィもサクラもエリーも攻撃していない。同じパーティのパンクが攻撃しているけれど、この判断は別枠のはずだ。

 

「サクラ送還。ルード召喚!」


 サクラがスゥッと消え、僕の前にルードが現れる。いつものようにバトルアックスを頭上に掲げ、新たな銀鬼シリーズの装備を身につけての登場だ。

 

「ガモォ!」 

「ルード。あのボスから注目を浴びるんだ!」


 再びガモォと叫ぶと、ブレイクを使用して暗青鎧へと攻撃した。さらにサークルアタックで連続攻撃を決めている。

 

「おっ、やるじゃねぇか」 

 

 パンクはそれに刺激されたのか、メイスでさらに攻撃する。

 

「ルード。パンクから注目を奪うくらい、全力で攻撃だ!」

「俺から注目を奪おうだなんて、本気で言ってるのか?」

 

 パンクはそう言うと、攻撃するのを止めた。

 

「ルードを召喚するまで10秒あった。だから俺は、10秒は何もしない。遠慮はいらねぇ。それで同等だろ!」 

「ルード。全力で行くんだ!」

「ガモォ!」

 

 ガンガンと暗青鎧へと、バトルアックスを叩きつける。ただ秘伝の方はリキャストタイムがあるために、重ねて使うことはできないみたいだ。

 

「本当に遠慮しねぇな。でもそうじゃなきゃ、面白くねぇぜ!」


 きっちり10秒経ってから、パンクが再びメイスを振るう。まだ注目はパンクにあるようで、暗青鎧のパンチに、再びカウンターシールドを決めている。

 

 ルードは暗青鎧の後ろから攻撃する形になっているが、ブレイクを混ぜながら、必死に攻撃を続けていた。

 

(名乗りも雄叫びも使わないのは、このボスには通用しないからか……) 

 

 パンクはなんで名乗らないんだろうと思っていたけれど、ルードも雄叫びを使わなかったので理解した。

 

 そういうのが無効の魔物がいても、全然不思議ではない。

 

 そんなことを考えていたら、不意にガンっとルードの鎧が鳴った。

 

「30秒ごとに、2番目に注目しているやつにダメージが飛ぶ。今回はきっちりルードが受けたらしいな」 

「よかった。この装備でダメージとか、考えたくもないわ」 

 

 余り気にしていなかったけれど、ハイズは最初に出会った時と同じ装備だった。それなりにレベルは上がっているようだけど、装備にまでは手が回っていないらしい。

 

「2番目を越えない程度に、攻撃開始だ!」 

「りょうかい」


 エリーがウピッピッピィみたいに叫ぶと、見たことがないほど大きな炎が現れた。

 

(あっ、これってフレアアローだ) 


 矢の形はしているが、迸るくらいに燃えている。それが僅かな軌跡を残し、暗青鎧へと命中した。

 

 多角形の板を激しく飛ばしながら、火の粉が弾けるように舞っている。キラキラ系は大好きだから、その様子に思わず見とれてしまった。

 

(いいね! やっぱりエフェクトはキラキラがいい!) 


 ラビィがゴッデスヒールをパンクに飛ばした。一気にダメージは受けなくても、少しづつ削られているようだ。

 

「もういいわよね。シャッ」

 

 ハイズも背後から近づいて、暗青鎧へと剣を振り下ろす。僕の予備とは言え、性能は悪くないはずなのに、あまりダメージエフェクトが飛んでいなかった。

 

(さすがにボスってことだね。気を引き締めていこう) 

 

「ラルも攻撃して良いんだぞ」 

 

 どういうボスなのかの分析をしていたら、自分が攻撃をするのを忘れていた。

 

「ムーンボール! 狙っていたのさ。主役はあとからやってくる」 

「うそつけ」

 

 ごまかせるわけもなかったけれど、僕の調子は上がってきた。

 

 そして暗青鎧が腰をぐっと落とした。

 

「くるぞ!」 

 

 ハイズはすぐに飛び退いて距離をとったが、パンクとルードは、ぎりぎりまで攻撃を続けている。

 

 そして見事攻撃が開始される前に、サッと二人共飛び退いた。

 

「ルード。やるじゃねぇか」

「ガモォ」


 すぐに逃げてしまっては注目を浴びられない。だからといって被弾すれば、余計なダメージでしかなくなる。そんな状況で、完璧な行動を二人はとっていた。

 

 暗青鎧の攻撃がおさまると、ルードはブレイクで攻撃しながら近づいた。わずかにパンクが遅れるが、その程度では注目を奪えないらしい。

 

「予想以上にすごいけどなぁ。一番は絶対に譲らねぇ!」 

 

 パンクは絶え間なく攻撃を繰り返す。ルードも頑張っているのだが、一度も注目を奪えなかった。

 

(レベル差もあるし、この結果は当然かも知れない。むしろこの状況で、ここまでできるルードを褒めるべきだ) 

 

 メインタンクにパンク、サブタンクにルードという役割分担のおかげで、こっちは全く被弾していない。

 

 こうなれば暗青鎧も硬いだけで、安定して戦うことができた。

 

「これで決めるぜ。カウンターシールド!」


 パンクは暗青鎧へ向けて、カウンターの一撃を繰り出した。暗青鎧は多角形の板を撒き散らしながら、パンクの宣言通りに消えていく。

 

>>>>>>>

黒騎士の小手×1 を手に入れました

<<<<<<< 

 

「おつかれさま」

「おつかれー」

 

 黒騎士の槍ではなかったけれど、最初で装備がドロップした。幸先が良いなと喜んでいたら、ハイズの浮かない顔が目に入る。

 

「ハイズ、どうかしたの?」 

「えっ? 黒騎士の槍がドロップしなかったから……」


 レアに分類されるドロップが、そんなに簡単に出るはずもない。毎回ドロップしないだけで落ち込んでいたら、やる気もなくなってしまうだろう。

 

「次の楽しみが増えたと思って、次を頑張ろう」 

「そうだぜ。俺も大したものは手に入っていないが、全く気にならないからな」


 ハイズは俯かせていた顔を上げ、僕らの方へと向けた。

 

「そうだよね。さっ、次を頑張りましょう!」


 気持ちを切り替えられたのか、ハイズはいい感じの笑顔になっていた。

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