表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
召喚師で遊ぶVRMMOの話  作者: 北野十人
小鬼を仲間にしよう
1/176

01.初めてのログイン

 おそらく今はVRMMOが一番盛り上がっている時期だろう。最初の頃はVRと言うだけで人が集まっていたけれど、すぐに使用する人たちは物足りなさを感じていた。

 曰く、触感が変、臭いがしない、なんか違和感を覚えるなど、最初は感動していたが、すぐに満足できなくなる。

 

 だが今は技術的にも最高潮となっていた。なにしろ問題になっていた触感や臭いなど、まさしく現実世界と変わらないくらいのクオリティだ。技術が低かったために存在していた違和感も、今では誰も問題にすることはない。

 

 VRは様々な分野で利用されているが、一番人気はゲームだろう。一部エッチな目的で発展している分野もあるが、一般的にはやはりゲームなのだ。

 

 その中でも気になるのは『バトルバトルオンライン』だ。いわゆるファンタジーRPGでプレイヤーは冒険者となり、魔物を倒したりクエストを楽しむゲームだ。僕もプレイしたかったのだけど、生憎ベータには当選できなかった。でも正式サービスに間に合うようにゲームは手に入れたので、正式から参加することができる。

 

 普段の僕ならば情報サイトは見たりはしない。でもゲームに参加できない状況だから、ベータプレイヤーが纏めている情報サイトを見ずにはいられなかった。

 

「いろいろ情報があるけれど、まずは職業の紹介だ」

 

 剣士や戦士から魔法使いや斥候など、様々な職業が存在する。その中でも僕がプレイしたい職業は、もちろんのこと召喚師だ。他のゲームでも召喚師が大好きで、むしろ召喚師が存在しないゲームはやる気が起きないくらいだ。

 

「えっと、むむぅ」 

 

 召喚師の固有スキルは召喚。これには『契約』『召喚』『送還』『解放』の四種類が含まれている。魔物を倒した時にドロップする卵と契約を行うことで、召喚できるようになる。ただし、召喚師は召喚が固有スキルなので、本人に特別な力はない。

 

「剣士とか他の職業は、直接効果を上昇させる固有スキルを持っているけど、召喚師は召喚と言うもの自体が、アドバンテージって言う考え方みたいだ」 

 

 さらに説明には、これからゲームを始める人には召喚師はお勧めしないと書いてある。まず第一に卵は魔物からドロップするが、間違いなくレアドロップだ。魔物の種類によってはウルトラレアドロップかもしれない。

 あるゾーンで戦ってレベルをあげて、適正を超えても一度もドロップしていないなんて普通のことだ。新たなゾーンに行ったからといってドロップするわけでもない。

 結局何一つ契約できないまま、いつまでもゲームをプレイすることになるだろう。

 

 運良く契約できたプレイヤーは楽しく遊んでいるらしい。ただし契約した魔物は取得経験値を吸い上げる。つまり魔物を倒して100の経験値を得ても、分けあって50しか入らない。


 魔物を召喚していることで、パーティでの経験値が優遇されることはない。だから召喚師が経験値を理由に敬遠されるということはない。でもパーティで取得した経験値を、契約した魔物と分け合うのだから、これにより成長は遅くなり、他のプレイヤーとの差は広がる。


 契約した魔物は成長と進化をしてくれるので、大器晩成とは言えるかもしれない。


 ただそれは召喚獣を手に入れたらの話なのだ。

 

「マイナス思考が強い感じだ。いくらレアって言ったって、ドロップしないわけじゃない。そもそもレアハンターのこの僕に、手に入れられないはずもない。しかも成長と進化があるのだから、召喚師のポテンシャルは最高とも言えるじゃないか」


 得られる経験値が少ないなら、たくさん稼げばいいだけだ。どのみち僕は召喚師以外でプレイする気はないし、特に問題だとも思わない。

 

「とりあえず正式を待とう。何を考えたところで、プレイできないし」 

 

 僕は召喚師を想像しながら、早く正式が来ないかとワクワクしていた。


--------------


 ついに正式の日がやってきた。

 

「よし。ログインスタートだ」 


 あらかじめVRヘッドギアを被っていた僕は、時間と同時にログインを試みる。するといつのまにか僕は、白く光る何もない部屋の中にいた。

 

「フルダイブ型もいくつか見てきたけれど、感覚がほとんどリアルと変わらない気がする」 


 そんなことをつぶやいたら、どこかから声が聞こえてきた。

 

『まずはキャラクターを作成してください』


 最近ではログイン前にキャラを作成させて、すぐにプレイできるようにするのが流行りだけれど、このゲームはそれを許していない。そのせいですぐにでもプレイしたいのだが、キャラクターメイキングから始めなくてはならないのだ。

 

「名前はラル。種族は人間、職業は召喚師でおねがい」 

 

 一応ベータの情報を調べているが、はっきり言って召喚師の評判は悪い。なぜなら魔物と契約しない限り、最初の一体すら召喚することができないからだ。しかも契約できるのは魔物からドロップする卵でしかできないのに、魔物の卵は販売もしておらず、卵はウルトラレアドロップと言えるくらい手に入らない。

 

 卵の入手方法は魔物退治だけしかない。さらに召喚師以外が魔物を倒しても卵はドロップしないらしい。って言うように、なかなかハードな職業だった。

 

 そしてこのゲームは職業制のスキル制だ。スキルポイントさえあれば、どんな一般スキルも手に入る。取得個数に制限はあるが、基本的にはそれでスキルを取得する。ただスキルポイントで取得できないスキルも存在する。

 それが職業固有のスキル。いわゆる固有スキルというものだ。

 

 もし召喚魔法が職業固有でないならば、召喚師を選ぶ必要はなかった。でもよりにもよって召喚魔法は、召喚師の固有スキルなのだ。

 

「剣士は連撃、戦士は防御。魔法使いは魔術とかなのに、召喚師だけは召喚魔法そのものなんだよね」 

 

 スキル名から予測できるように、その職業を補助する目的の固有スキルの中で、召喚師だけは中核になる召喚そのものが固有技能だった。

 

「連撃は連続で攻撃を叩き込む。防御はダメージを軽減する。魔術は魔法の威力を上昇させる。なのに召喚師は基本的に召喚ができると言うだけ。まあ召喚のスキルの中に、契約と送還、解除もあるけれど、全部基本的なことなんだよね」 

 

 とは言え、僕は他のゲームでも召喚師が大好きだ。だから不遇かどうかなんて関係なく、召喚師が存在するならば、僕はその職業を選んでしまう。


 ここまで召喚師の悪いところばかり考えていたけど、このシステムはなかなかに奥深い。大器晩成なだけで、僕は他の職業に見劣りするとも思わない。なにしろ契約した魔物は、プレイヤーと同じように成長する。しかも条件を満たせば、進化とかいって更に強くなるのだ。

 

 同時に召喚できるのは一体だけど、それは最初だけで増えていくらしいし、召喚師という職業に、僕は未来しか感じなかった。

 

『登録完了しました。一般スキルを取得してください』


 キャラ作成時に最大五つまでスキルを選択できる。ここで選べるのはスキルポイントを1消費すれば覚えられるものだけで、特殊なスキルは選択できない。


「無魔法、魔力制御、魔力の雫、魔物言語、識別でおねがい」


 これらは最初から決めていた。魔法は属性魔法もあるが、無魔法は属性が存在しない魔法だ。つまり弱点にならないかわりに、無効にされることがない利点がある。魔力制御は魔法を使うならあるべきスキルで、魔法の効率化などができるようになる。簡単に言えば消費魔法力が減ったりするのだ。

 魔力の雫は最大魔法力の上昇と自然回復の上昇だ。魔法使いをやるならば、必須技能といえるだろう。

 

 ただ魔物言語は今のところ役には立たない。ベータの情報でしかないが、魔物との会話が成功した例がないのだ。ついでに識別も役立たずだ。なにしろ識別がなくても、装備や道具の詳細は見られるし、魔物の名前などもわかる。

 

 ベータでは死にスキルとよばれ、全然やくにたたなかったそうだ。何しろ情報が見えているというのに、識別する存在の情報を表示するというスキルだからだ。

 

「不人気職業に無能なスキル。まあそんなスキルがいまさら増えても気にすることじゃないさ」 


 使いみちははっきりしなくても、召喚師なのだから魔物言語は有用な気がするし、識別というスキルが存在している以上、何かしら意味はあるはずだ。僕だって勝算なくこんなスキルを取ったわけじゃない。

 魔物言語は魔物との会話だから、召喚した後で意味があるかもしれないし、識別だって使うべき時があるはずだ。

 

『登録完了しました。後は見た目の設定ですが、美化機能を使いますか?』

「よろしく」


 なんとなく自分っぽさを残しながらも、自分ではない別人を作る。しかも他の人が見て、格好いいとか綺麗だなと思うようにするのが、この美化機能だった。

 

「お、格好いい」 


 作成された自分を見ると、どこか自分でありながら、自分とは思えない男になっていた。本来の自分よりも、細身でスッとした爽やかなイメージの姿になっている。

 

「初期装備は灰色Tシャツと茶色の長ズボンなんだ。マントとかも欲しいけど最初は我慢だね」


 召喚師と言えば、僕はマントがつきものだと思う。まあマントでなくても、ローブでもいいけれど。

 

『それではどうぞ。お楽しみください』 


 不意に白い部屋が眩しく輝いた。やがて光がおさまると、さっきと同じような部屋にいる。ただ部屋の中央に、木の人形が立っていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] レアハンターの自分に取れないわけない!って言い方少し気持ち悪いな この言い方やとレアハンターて言う変な能力みたいのがあってその力で必然的にてに入れられるみたいに感じる、あとナルシスト…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ