暑中お見舞い
ねっとりとした
葉書一枚が届いた
向日葵の花が
涙腺を汚した
散らばった水分は
暑さで白く乾き
リモコンを探しながら
自らの身体を
扇風機のように回した
悪戯に
身体を動かせば
想いだけ
走り出す事は
無いだろうと
強く強く描きながら
プランターに
水を撒きながら
長方形の名前を
反芻して
満杯になった水が
プランターから流れた
片手にあるホースは
紫色を陽に晒して
その先端で虹を作った
それは
現象としての名称で
色の数は
少なく見える
蜻蛉が飛び
まだ蝉が鳴く
夕暮れの夕暮れの風
咲いた花は
何時ぞやの虫より
ひたすらに強いと
思い込もうとして
風鈴の音が
遠くで響くのを聞く
祭りの音の先に
手当たり次第
光があるように
葉書一枚で
足りない情報は
携帯電話と固定電話
パソコンのメールで
トライアングルを鳴らす
「久しぶり」の言葉は
未来で
必ず言われる挨拶
指先が震える声と
テレビを見ながら話せる声
黄色の魚が
思い出を泳いだ
過去に
クシャクシャだった紙は
油塗れで蓋をした
缶切りは失くしたから
缶詰は開かない
それも
いつかは消える
破裂ではなく収縮して
残暑まで残る葉書は
年に二回の乾季と雨季
少しだけ厚い
紙の質感は
キャンパスにもなれば
小説にもなり
積もり積もって
歴史にもなる
牛乳パックと紙漉き
大人の漢字と子供のひらがな
バツ印と書き直した一字
流れた時代
僕等の電子音
アレも
その中に含まれていると
定義しなくては
分からなくなった
良き人が聞いて呆れる
その指先に
裏側と想いがあろうと
勝てない理由がある
人は必ず
そんな存在だ
負担の先に利を見出す
負担の先に心を問う
目の前での声を
大切にする理由だ
後 百年経とうと
それを忘れる事は無い
例え
電波に乗せた
嘘の声であろうと