表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/75

謝罪と後悔

ブックマーク、ありがとうございます!!


今回は結構シリアスです。

「では、お兄様、お気をつけて。行ってらっしゃいませ」

「行ってらっしゃいませ」

「ああ、行ってくるよ」


共に朝食の時間を過ごした後、お兄様は家族やミシェーレ家で働いてくれている皆に挨拶をして、颯爽と馬車に乗り込んだ。

昨日家に帰って来たと思ったら、今日にはもう学院に行ってしまったので、私とカティアは少し淋しい思いをしながら、お兄様をお見送りした。

お兄様が学院に戻るまでの間、私とカティアは学院の様々な話を聞く事が出来、久しぶりに兄妹揃っての楽しい時間を過ごしたから、余計に淋しく感じてしまう。


だけど、学院の話を聞くのは楽しかった。

入学式に授業、部活に行事。何でも、文化祭や体育祭もあるんだって!

まるで真衣子の世界の学校のようで、ちょっとびっくり。文化祭はあってもおかしくないと思うけど、体育祭なんて貴族の皆様はやらなそうだと思ってたからね。

男の子が体育祭に参加するのは良いとして、女の子はどうするんだろうね?

何か参加出来るような種目があるのかな?それとも応援だけ?


私は自他共に認めるくらいのお転婆。木登りして落ちちゃうくらいだもん。だから、体育祭にはちゃんと参加したい。けど、一応伯爵家の令嬢だから、無理かもしれないなぁ。

今度、お兄様に体育祭について聞いてみようっと。

家族ーー特にカティアとノワールーーと離れるのは嫌だと思ってるけど、ちょっとだけ学院に楽しみが出来た。



お見送りの後、カティアを部屋まで送って行く。部屋までの会話は、(もっぱ)ら学院の話だ。


「学院って楽しそうですわね、お姉様」

「そうねぇ。ただ、授業や試験は大変そうだけどね」

「わたくし、試験は嫌ですわ」

「そうよねぇ、嫌よねぇ」


真衣子の経験を思い浮かべ、うんうんと同意する。試験は大事だと思うが、受けるのは嫌だ。気分が下がるから、もう試験の話はやめよう。


「ねえ、学院では寮生活になるけど、どんな部屋だろうね」

「確か、公爵家や侯爵家等の身分の高い方は広い1人部屋なんですよね?」

「そうみたいね」

「それで、伯爵家は1人部屋か2人部屋か希望を出せるのでしたね。お兄様は2人部屋だとか。お姉様はどうされるおつもりですか?」

「わたくしもお兄様と同じように2人部屋にするつもりよ。2人部屋の方がお金がかからないし、それに楽しそうだもの」

「そうですよね!楽しそうですよね!!」


お兄様の学院の話には、度々同室のお友達が出てきた。そのお友達とは気が合うらしい。おかげでお兄様は楽しい寮生活や学院生活をおくれているみたい。その話を聞いて、私は羨ましくなった。多分、カティアも。


私にだって友達はいる。だけど、お兄様とお友達のような感じではない。

お兄様とお友達は対等な友達って感じがする。

けど、私は違う。私の友達は、お父様が治めるアジュール領で生活している。つまり、領主の娘と普通の子達。身分差があるのだ。


元々、私は身分差なんて気にしてなかった。お父様もお母様も貴族だからって威張り散らすような人ではないし、領の皆に対しても気さくにしていたから。

だから、私は勘違いしてしまったのだ。私と友達の間には差なんてないと。対等な友達なのだと。

ううん、違う。本当は考えた事もなかったのだ。私と友達の間に身分差があるという事を。友達が身分差を気にしているなんて事を。


何てバカ。何て愚か。

その事を知ったのは、昨日のお昼頃。

体調は問題ないから大丈夫だ、と早速、木から落ちた時に一緒にいた友達に謝りに行った。お兄様が一緒に来てくれたから、お父様もお母様も何とか送り出してくれたのだ。


皆は今日もオレンジを収穫していたから、すぐに見つけられた。そこで、皆に謝った。

「心配かけてごめん」「迷惑かけてごめん」「私のせいで怒られたんじゃないか。だとしたら、ごめん」と。

心配してくれていた友達は「無事で良かった」と言ってくれた。

でも、1人の友達が言ったのだ。

「オレは悪くないのに、シフィルお嬢様のせいで怒られた」「シフィルお嬢様が我が儘を言ったのに、何でオレが怒られないといけないんだ」と。


その言葉は、私の胸を心を突き刺した。だって、その通りだったから。

私が我が儘を言って木に登った。皆の制止を振り払って。

それで落ちたのは、自業自得だ。でも、皆は家族に怒られた。私の予想通りに。だけど、私の想像以上に。


「シフィルお嬢様にケガをさせて!!」「領主様や奥様に顔向けが出来ない」「シフィルお嬢様とお前は住む世界が違うのだから、一緒に遊ぶなんておこがましい」


住む世界が違うなんて、考えた事もなかったのに。私のケガなんて、決して皆のせいではないのに。

木になんて登らなければ良かった…。


涙が出そうになったが、懸命にこらえて謝った。

「ごめんなさい、ごめんなさい…」


友達は許してくれたけど、この事で壁が出来てしまった。自業自得だけど、悲しくて淋しい。

それに、私を詰った子とはもう遊べない。私が顔向け出来ない。


この日、私は友達を1人失った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ