最後の授業
私がアリス様にヤマタイト国語を教えて貰い始めたのも束の間、今日で最後の授業になった。今日は日本のカレンダーで言うならば、12月30日にあたる。
明日は大晦日。なので、授業もこれでおしまいになる。とうとう、社交シーズンが終わりになるのだ。この国の社交シーズンは年明けまで。
大晦日の夜には王城で年越しのパーティーが開かれ、年が明けるのを皆でお祝いしたら、社交シーズンは終わりになるらしい。お父様とお母様からそう教えて貰った。
明日の夜、お父様とお母様はその年越しパーティーに出席するんだってー。私は不参加だけど。まだ子供だから参加出来ないんだってー。
キラキラしたパーティーは楽しそうだけど、同時に疲れそうだから、別に参加出来なくても構わない。ただ、お父様とお母様と一緒に新年を迎えられないのは、少し残念だけどね。
「ありがとうございました」
授業が終わって私が礼をすると、アリス様が『はあ〜〜〜』と大きいため息をついた。
ーな、何っ!?私、何かため息つかれちゃうような事、しちゃった!?
と焦った私だったけど、アリス様の次の一言でその焦りは解消された。
「もう最後だなんて、早いわ〜」
ーあっ、そっか!それでため息をついたのか!
「淋しいわ〜」
「はい。わたくしも淋しいです」
アリス様とはすっかり打ち解けた私である。お別れは淋しい。
「また遊びに来て頂戴ね」
「はい。機会があれば」
社交シーズンが終わったら、私はアズール領の自宅へと帰るから、そう簡単には遊びに来る事が出来ない。王都は遠いよ。
本当はサンシューズ家も領地を持っているんだけど、侯爵家の人々は基本的には王都にいて、他の人に管理を任せているんだって。だから、王都から離れないらしい。
「レオナールも淋しがるわ〜」
「…そうでしょうか?それでしたら嬉しいですね」
レオ様とは、私がアリス様にヤマタイト国語を教えて貰いにサンシューズ家にやって来た時にたまに会っていたので、私と会えなくなる事を淋しがってくれたら嬉しいな。私は淋しいです。
ちなみに今日は、レオ様はシャルロ殿下の所に行っていて、サンシューズのお屋敷にはいない。
ー残念。このままお別れになるのは淋しいな。
そう思っていると、アリス様が言った。
「絶対に淋しがるわよ。今日、急いで帰って来るって言っていたから、帰宅するのはレオナールに会ってからにしてやって頂戴」
ーやった!レオ様に会える!!
「分かりました!」
レオ様が帰宅するまでの間、私はアリス様とお茶をする事に。メイドさんがサッと素早く用意してくれる。ありがとうございます。
「ルーちゃん、この間預かったお話を読んでみたわ」
アリス様がメイドさんから紙の束を受け取って、言った。そう、この前の授業の時に書いた小説を持って来たのだ。書いた小説におかしなところがないか、アリス様に確認をお願いしたのである。
「ど、どうでした?」
本当は、自分が書いた小説を他の人に読んで貰うのって、すごく緊張する。ものすごく緊張する。けれど、小説家になりたいならば、避けては通れない道だ。
書いた小説は、アリス様に聞いたお話を元に書いてある。ヤマタイト国に住む女の子が主人公の、ヤマタイト国を案内するお話だ。
もう1つは、ひょんな事からこの主人公がフラレンシアの国(私達がいる国の事だよ)にやって来るお話。フラレンシアにやって来たけど、周りの人達に黒髪の人はおらず、好奇の目で見られる主人公。たまに心ない言葉を浴びせられて、悲しみにくれる。だけど、黒髪をものともしない人と知り合い、元気を取り戻す。というストーリーだ。
この話を読んで、黒髪に偏見を持つ人が減る事を祈る。
「まず、最初に言わせて頂戴」
アリス様の言葉に、私はゴクッとツバを飲み込んだ。
ーひぃ〜、何て言われるんだろう〜。ドキドキ、ドキドキ。
「…お話、どちらも、とぉーーーーーっても良かったわ!!!」
「ほ、本当ですか!!」
「フフ、本当よ」
まさかの高評価!
ー嬉しいよ〜!良かったよ〜!




