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レオ様の色

「では、レオ様の何が気味が悪いというのですか?わたくしには全く分かりませんけれど」


私はクビを傾げた。


「……髪だ」

「髪…ですか?とてもキレイな髪だと思いますけれど」


レオ様が何を言っているのか、私にはさっぱり分からない。キレイでツヤツヤしていてサラサラしている、そのうらやましいストレートの黒髪に何か問題があるとでも?


「キレイ?」

「ええ。ツヤツヤでサラサラの髪ではありませんか。それに、その瞳の相まって夜空の様ですよね。黒い髪はまるで夜空の様。金色の瞳はまるで夜空に浮かぶお月様の様です」

「……夜空か……。そんな事、初めて言われた」

「そうなのですか?でも、キレイな髪ですよね。それに、その色は……はっ!?」


途中まで言いかけて、慌てて口を噤んだ。しかも、両手で口を押さえて。


ーやっちゃった。これって、かなり怪しいよね。


案の定、レオ様は眉をひそめている。


「『それに』の続きは何だ?」

「いえいえ。何でもありませんわ」


私は首をブンブン振って、何でもない事を強調した。けど、我ながらとぼけっぷりが酷すぎた。これでは、何かあると言っている様なものだよね。あちゃー。


「何でもなくはないだろう。続きは何と言おうとしたんだ?…あそこで止められたあげく、いきなり口を噤まれたのだぞ。気になるではないか。それとも、私には言えない様な事なのか?」

「いえ!その様な事は全くございません!」


私は反射的にそう返した。実際、言えない訳ではないのだ。けどなぁ。


「では、言えるな?」


レオ様が眼光鋭く問い掛けてくる。


ーうう、うう、うう…。美形の怒った顔って、迫力がありすぎる…。


私はレオ様に屈した。


「あのですね。わたくしが言おうとした事は、わたくしにとりましては最大級の賛辞なのです。ただ、それが他の方にとっては賛辞に感じられないかもしれないと言いますか…。下手すると侮辱ととられかねないと言いますか……」


私の歯切れの悪い返答に、レオ様は眉を寄せた。


「どういう事だ?実際に聞いてみないと分からないので、言ってみてくれ」

「うう〜。分かりました。ですが、わたくしにとっては最大級の賛辞であるという事を忘れないで下さいませね?」


私は言外に、レオ様に『怒らないでほしい』と訴えた。その訴えは、功を奏した。


「分かった」


レオ様の返答を受けて、私は少し安心して話し始めた。


「『それに、その黒い髪と金色の瞳はノワールと同じですもの!とっても素敵です!』と続けようとしておりました」

「?。ノワールとは?」


私があえて言わなかった事を、レオ様は的確にツッコんできた。


「…ノワールは、ウチの猫です」

「はっ?猫?」

「はい。猫です」


レオ様がぽかーんとした感じで質問してきたのに対して、私はハッキリと頷いた。


ーはぁ。だから、言わなかったのに。


私にとってはノワールは大事な家族だけど、他の人にとってはただの猫。『猫と同じ』と言われて怒る人もいるかもしれない。そう思い当たったから、途中で止めておいたんだけどなー。

でも、それが逆に怪しかったんだから、どうしようもない。


レオ様は『猫。猫…』と呟いている。そんなにショックだったんだろうか。私だったら、『猫と同じ』って言われると嬉しいけどなー。


「あのー、レオナール様?大丈夫ですか?」

「あっ、ああ、大丈夫だ…」


いやいや、『大丈夫』と言いつつも、まだ呆然としている様な気がしますがな。それでも、レオ様は私に聞いてきた。


「それで、君はその猫の事を素敵だと思っているのか?」


私はその質問に満面の笑みを浮かべながら頷いた。


「はい!」


頷いた後、私はノワールについて頑張って説明をした。


「ウチのノワールもレオナール様と同じで、夜空の様な漆黒の毛に月を思わせる金色の瞳をしています。その何と美しい事か!しかも、その毛は極上のビロードの様な手触りをしており、素晴らしくなめらかです。そして、サラサラのふわふわのもふもふです。素晴らしすぎる!金色の瞳は昼は鋭く美しく、夜は丸く愛らしい。ノワールは美しい上に可愛らしいのです!おお!何と魅力的な事か!」


私は滔々とノワールについて語った。語り終えてレオ様を見ると、ぽかーんとしていた。


ーあら、やだ。語りすぎたかな?いや、まだまだでしょ!

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