師匠と呼ばせて下さい!
「どうして、そうなる!」
レオ様にそう言われた私は、キョトンとしながら問い掛けた。
「違うのですか?」
「全く違う!」
「そうなのですね。てっきり10歳なのかと勘違いしてしまいました。申し訳ございません」
でも、まあ、そうだよね。ゲームでも殿下達と同学年だったし、侯爵家の子息が年齢詐称なんてするはずないよね。
「でも、それでしたら、なぜ?」
私の『なぜ魔石が使えたのか』という質問に、レオ様はメダルを差し出してきた。
「これは、何ですの?」
「これは、特例の証だ」
「特例?」
「そうだ。特例を認めて貰えると、10歳前でも魔石を使った実践を行う事が出来るんだ」
「そうなのですか!特例って、どうしたら認めて頂けるのですか?」
私の質問に、レオ様が丁寧に説明してくれる。
「特例は、魔力量が多く、魔術の知識を身につけていて、精神的に落ち着いている者が認められる」
「なるほど。分かりました」
レオ様の説明に、私は特例を諦めた。ちょっとでも特例として認めて貰いたいと思った私がバカだった。魔力量は普通だって言われてるし、魔術の知識は教えて貰い始めたばかりだし、精神的に落ち着いなんていない。無理すぎる。
でも、知識を得るのは8歳になってからだったよね?それなのに、もう身につけたって事なの?この人、天才か!!って、ゲームでは天才だった。
「すごいのですね」
「いや、ウチは更に特例だからな」
『ウチ』って言うと、サンシューズ家だよね?確か、現サンシューズ家当主であるレオ様のお父上は、魔術院長官だったような。
「魔術院長官様のお家だからですか?」
「いや。それも無きにしも非ずだが、ウチが代々魔術師を輩出する家系だからだ。特例として6歳から魔術の知識を学ぶ事が許されている。まあ、それも落ち着いた性格の者しか許されないのだがな」
「なるほど〜。それで、ドレスをあっという間にキレイにする事が出来たのですね」
「そうだ」
レオ様の話を聞いて、私はレオ様を『すごい人』だと認識した。
「他にも、何か出来るのですか?」
「出来る」
「例えば、どの様な事をお出来になりますの?」
「そうだな。風の魔石を使って、重さをほとんど感じずに運ぶ事が出来る」
レオ様にそう言われ、私はピンときた。それって、さっきの私の事を言ってるんだよね?お姫様抱っこの事だよね?
ーあ〜、良かったぁ。重さをほとんど感じないなら、私の体重は知られてないって事だよ。ほっとしたー。
ほっとしたら、次にレオ様への尊敬の念が湧いてきた。もう魔石とか魔術を使いこなしてるなんて、レオ様ってすごい!!
「同じ歳なのに色々な事が出来るなんて、すごいのですね!わたくしのドレスをキレイにして下さいましたし。ありがとうございます!ぜひ、師匠と呼ばせて下さいませ!」
「はっ?師匠?」
その時のレオ様の顔には、『意味不明』『理解不能』と書かれていた。しまった。唐突すぎたか。
「断る!」
案の定、ソッコーで拒否られてしまった。残念。でも、こっちのレオ様はどうだか分からないけど、ゲームのレオ様は人嫌いだったし、ここは大人しく引く事にしよう。本当は、本当に弟子にして貰いたいくらいなんだどなー。
「そうですか。それは、残念です。では、学院に入学した後、魔術の授業で分からないところがあったら、教えて下さい」
「なぜだ?教師に聞けば良いではないか」
「嫌です。先生よりレオナール様の方がすごそうではありませんか!それに、同級生にすごい人がいるなんて、すごいですもの!ぜひ、教えて頂きたいのです!」
私が勢い込んで言うと、レオ様はぽつりとこぼした。
「……気味が悪くないのか?」
「はっ?何がですか?」
ーしまった!思わず素が出ちゃった。
けど、幸いな事にレオ様は私の言動に気がついていない様だった。
ー良し良し。しめしめ。
私はさっきの言動をなかった事にして、しれっと問い掛けた。
「あの、ちなみに伺いますと、『きみ』というのは卵の『黄身』ではありませんよね?」
「断じて違う!だから、どうしてそうなる!」
「いえ、先ほどわたくしが早とちりをしてしまいましたので、今回はきちんと確認しておこうかなと思いまして」
「……なるほど」
「レオナール様、気味が悪いというのは何がですか?あっ!待って下さい!分かりました」
レオ様が口を開きそうになるのを、私は手で制した。
「レオナール様のそのお顔が、気味が悪い程に美しいという事ですね!」
ーどうだ!この名推理!決まったな。フフフフフ。
私がドヤ顔で『そうに違いない』とうんうん頷いていると、レオ様が言った。
「全く違う!!」
ーあれ〜?おかしいな。




