ドキドキのお茶会
ーうひぃ〜、とうとうお茶会の日が来てしまった。
そう、とうとうこの日が来てしまったのです。朝から緊張しまくり。ううん。もう昨日から緊張してたや。
ーはあ〜、緊張しっぱなしでもう疲れたよ。
行く前からすでに疲れてしまった。更にその上、湯浴みをしたりドレスを着たりとやる事がいっぱいで疲労感は増すばかり。
あれだね。この感じは七五三や成人式を思い出すね。行く前の準備が大変っていうね。
準備が整ったら、馬車に乗り込んで、『いざ出陣!』。まさにそんな心境。
お茶会へはお父様と一緒に行く事になっている。お茶会初心者の私達8歳児が、誰の助けもなくお茶会で王子殿下に挨拶するのが大変だからだ。
右も左も分からない子供達だもん。分からない事だらけだからね。
でも、お父様が一緒にいられるのは挨拶までなんだって。その後は、お父様とは別行動になるらしい。お父様達はお父様達で、別室で歓談するんだってさー。
ーちぇー、一緒が良かったなぁ。
やっぱり心細いもん。でも、お父様が一緒だと、本来の目的である『シャルロ殿下と同学年になる学友達と親睦を深める』事が大変になるからダメなんだってさー。子供達は子供達で交友を深めていくらしい。
確かにお父様が一緒にいたら、シャルロ殿下もお父様に気を遣っちゃうかもしれないもんね。仕方ない。我慢我慢。
お城には、行き着くのも大変だった。
ーあ〜、馬車の渋滞ってあるんだ〜。
たどり着くまでに、一体どれくらい時間がかかるのかっていうくらいの時間を耐え抜き、お城に着いたのはお茶会開始の10分前だった。
これからお茶会会場まで行かなくちゃならないんだけど、間に合うかな?
ハラハラしながら案内されるがまま歩いて行くと、お茶会の会場にたどり着いた。開始の5分前だ。
ーうわ〜、結構ギリギリだったー。
余裕を持ってお屋敷を出てきたというのに、この有様ですよ。渋滞を甘くみていた。お父様が。もうっ!!
お茶会の会場は、お城の庭園だった。
秋バラが咲き誇っているその様は、壮観だ。
ーきれーい!
あんまりキョロキョロと周りを見渡すと、周りの人から『はしたない』って思われちゃうから、そっと眺める。
リンゴーン、リンゴーン、リンゴーン…。
鐘が3回鳴った。お茶会の開始時間だ。
鐘が鳴り終わると、お城の中から人が歩いてきた。明らかに高貴と分かる女の人と男の子。その周りには護衛さん達が付いている。
きっと、王妃様とシャルロ殿下に違いない。けど、遠くてよく姿が見えない。
格好が分かるくらいだ。
王妃様とシャルロ殿下が見えた瞬間から、会場の話し声は一切消えた。皆、静まり返って、お2人(護衛さんもいるけどね)を見守っている。
ちらっと見えただけだけど、王妃様はおキレイな感じがする。
シャルロ殿下は、と言うと、護衛に囲まれていて、残念ながらご尊顔を拝せず。
ーああ、一体どんなお方かしら。出来たらイケメンだと良いな〜。
そしたら、観察する対象が増える。私が楽しい。
王妃様とシャルロ殿下が会場の前方に到着すると、挨拶をされた。
「皆様、本日はわたくしの息子であるシャルロの為にお集まり下さり、ありがとう。子供達には改めて礼を言います。ありがとう。本日は学院で同級生となる皆さんと、学院への入学前に交流を持ちたいと考え、お茶会を開きました。楽しんで行って下さいね」
やっぱり王妃様で合ってた。王妃様が優しい笑顔で挨拶をして下さったので、私は今日のお茶会にちょっと安心した。怖そうな人じゃなくて良かった。
「今日は私の為に集まってくれて、感謝する。私は、第2王子のシャルロ・ギュスターヴ・デュヴァラだ。今日は、皆と交友を深める事が出来たらと思っている。宜しく頼む」
王妃様の次にシャルロ殿下が挨拶をされた。私の前に他の子のお父さんが立っていて、全然見えないけど、ハキハキと喋っているのは聞き取れた。
お2人の挨拶の後は、私達が王妃様とシャルロ殿下にご挨拶をする番だ。皆が一斉にお2人の前に移動すると、あっという間に2列の行列が出来た。私もお父様と隣合って並んだ。
皆がさっと並んだけど、こういう時って、爵位が高い順に並んでいくんだって。予め教えて貰ってなかったら、アワアワ慌てちゃうところだったよ。
ウチは伯爵位だから、爵位的には真ん中だねー。公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵。
同じ爵位でも何となく序列があったり、序列を気にする人はいるらしい。
何それ?面倒くさい。
けど、いちゃもんつけられたら、たまったものじゃないから、ウチは伯爵位の一番後ろに並びましたよ。お母様から、そうアドバイスを頂きました。ウチは序列なんて気にしないんだけどねー。他はそうじゃなかったりするからね。
刻一刻と列が進んで行く。後、どれくらいかな?ひょいっと身体を傾がせて、列の進み具合を確認すると…。
ーやだっ!あとちょっとで順番だ。
一気に心臓がはねて、緊張感が高まった。心臓がすごくドキドキしてるのが分かる。
ーううう〜。緊張する〜。
この緊張感をどうにかしたい。
ーそうだ!!おまじないをしよう!
こういう時は、手のひらに『人』の字を書いて飲み込むおまじないをするしかない!
私は『人』を3回書いて、3回飲み込んだ。その上で、深呼吸をする。スーハースーハー。
深呼吸をした後、また列の進み具合を確かめた。後、3人だ。
と、そこでシャルロ殿下のお姿をやっとこさ拝見する事が出来た。
プラチナブロンドの輝ける髪、王子様だという事が頷ける、整ったお顔。そのお姿は、正に正統派王子様!瞳の色は残念ながら確認出来ないけど、きっと淡い紫色の瞳をしているだろう。
ーえっ?淡い紫色?
どうして、『きっと淡い紫色だ』なんて思ったんだろう。それは、シャルロ殿下のお顔を見た途端、頭の中にパッと浮かんだからだ。
なんで、思い浮かんだんだろう?何か、心なしかシャルロ殿下のお顔に見覚えがある気がするんだけど…。
でも、あんな正統派イケメンを見た事なんてあったかな?
私が内心首を傾げながら思い出していると、いきなり頭の中に映像が流れ出した。
「あっ!…………。あれは……」
そうか!思い出した!!シャルロ殿下、貴方は『殿下』だったんですねー!!!




