魔術の先生
「それにしても、護身術に魔術だなんて、教えてくれる先生に払うお金は大丈夫なんでしょうか?」
私がお金の心配をすると、お父様は苦笑した。
「子供がお金の心配しなくても良い」
「ですが…」
「心配するな。大丈夫だ。魔術を教えるのは、オーブリーだからな」
「えっ?オーブリーって、あの執事のオーブリーですか?」
「そうだ。その執事のオーブリーだ」
な、なんと!オーブリーは執事業だけではなく、魔術の先生も出来るらしい。オーブリーって有能なんだわ。
「オーブリーが教えてくれるなら、安心ですわ」
色々な意味で。
お金も安心だし、私も慣れてる人の方が安心。良かったぁ。オーブリー、ありがとう!!
オーブリーはお父様よりも5歳年上で、お父様の兄貴分だ。オーブリーの家のアルベール家はミシェーレ家に代々仕えてくれている家系で、オーブリーの父親が先代の執事だった。
そんな訳で、お父様とオーブリーは兄弟同然の仲なのだ。私にとっては伯父さんみたいな存在。
でも、魔術が得意だなんて知らなかった。
「あれ?お兄様の魔術の先生もオーブリーだったのですか?」
「うん。そうだよ。知らなかったんだね」
「知りませんでした」
いくら私だって、お兄様の先生達を全員知っている訳ではないのだ。知っているのは、剣の先生と家庭教師の先生とマナー兼ダンスの先生だけ。
あれっ?意外と知ってた。一緒に授業を受けたりしてるからなぁ。
私は剣は習ってないけどねー。ちぇー。
剣の先生は、お父様の護衛のジャコブだ。ジャコブのカイレ家もミシェーレ家に代々仕えてくれている家系だ。
ちなみに私は1人の護衛を役職名?で呼ぶ時はつい護衛さんと呼んでしまう。執事さんと呼ぶようなものだ。ちょっと珍妙な呼び方だけど、皆は慣れたものである。でも、本来は良くない呼び方なのだ。伯爵家の令嬢がそこで働く人を『さん』付けで呼ぶなんて、階級社会における貴族的にはダメなんだってさ。
まあ、うちは『貴族らしくない貴族』って言われてるから、家族や領内の皆は大目に見てくれてるけど。有り難い事だ。じゃないと、息が詰まっちゃう。
で、話を戻すけど、知らないのは魔術の先生だけでしたとさ。魔術は危ないから、8歳以上じゃないと行ってはいけないって法律で決まっているから、仕方がないか。私も8歳になったから、とうとう魔術の勉強が出来るって訳だ。
おぉ〜、ファンタジー!!これは嬉しい!頑張るぞ!!
頑張る事がたくさん出来た。でも、今の私はやる気に満ちている。うぉーーーー!!!
それに、色々経験する事は小説を書く上で糧になる。何事も経験だ。
まずは欲張らずに必要な事から1つ1つコツコツとやっていこう。部屋に戻ったら、ノートにやりたい事リストを作ろうっと。後は、ミーアとスケジュールを組もう。
そうと決まれば、部屋に戻ろう。
「お父様、お母様、この度はわたくしの我がままを聞いて下さり、ありがとうございます。また、朝早くからお時間を頂き、ありがとうございます」
「「どう致しまして」」
「あの、1つ伺いたいのですが、本当の本当にお金は大丈夫なのですよね?ご無理はされてませんよね?借金とか嫌ですよ?」
私が眉を八の字にして尋ねると、お父様は苦笑した。
「本当の本当に大丈夫だ。長雨で被害が出たが、昨年はそこそこの収穫量だったし、今年は豊作だ。それなりに金銭にも余裕が出てきたよ」
「良かったぁ」
ほっとして胸を抑えた。隣のお兄様もほっとしてる。良かったね、お兄様。
「それに、シフィルが裏庭で野菜を育ててくれたり、裁縫でちょっとした小物を作ってくれたりと助けてくれてるからな」
「いえいえ。助けになっているなら良かったです」
「十分助かっているよ。ありがとう。色々と不自由をさせていつもすまないなぁ」
「何をおっしゃいます!それは言わないお約束でしょ、おとっつぁん!」
「「「おとっつぁん?」」」
しまったぁぁぁ!ついノリで『おとっつぁん』って言っちゃった。3人の頭上に?が浮かんでるよ。
「な、なんでもございませんわ…。オホホホホ…。では、ありがとうございました。失礼致します」
早口であいさつして、バタバタと退室した。
ふぅ。何とか勢いで誤魔化せた。かな?
私が慌てて退室したから、お兄様を慌てさせちゃった。ごめんね、お兄様。




