パンダが白黒の理由
これは、作者の勝手な妄想です。
これは昔昔のお話です。
ある日の朝、世界が生まれました。
世界と同時に、沢山の色も生まれました。
しかし、この時の世界は無色。
世界と色は、分離して存在していたのです。
無色の世界を見た神様は、その事を残念に思い、世界に色を付ける事にしました。
しかし、この広くて大きい世界に色を付けるのは、いくら神様であっても大変な事でした。
そこで、神様は、自らの力を使い、一つの色を司る色神を創り出したのです。
それは、数え切れない程の色神達でした。
神様は、色神達に言いました。
「君達の力で、この無色の世界を素敵な色で溢れかえさせてくれ。 この世界に生きるもの達が幸せであるように祈りを込めて。」
その言葉を聞いた色神達は、深く頷き、四方八方に散らばっていきました。
そして、世界に存在しているもの達に色を付ける為に。
水には、全てを潤すように透明な色を、森には、皆を癒す為に緑色を。
色神達は、祈りを込めて順番に色を付けていきました。
そんな色神達の様子を見ていた神様の前に一匹のパンダが現れました。
「神様、私には、まだ色が付いていません。良ければ、私にも、素敵な色を与えてくれませんか?」
パンダが頭を下げながら、言いました。
「よかろう。お前にも、色を与えよう。お前には、何色がいいだろうか…」
神様が悩んでいる時に、白を司る色神(白神)と黒を司る色神(黒神)がやって来ました。
「じゃあ、僕の色を与えてあげますよ!」
「じゃあ、俺の色を与えるぞ!」
二人は、同時に言いました。
「えっ?」
いきなりの白神と黒神の登場にパンダは、ビックリして何も言えませんでした。
「コラコラ、何をいきなり言ってるんだ!」
と、神様は白神と黒神に呆れながら言いました。
「だって、パンダには白がお似合いだと思います!」と白神。
「何を言うか!パンダには、黒が合うんだよ!」と黒神。
二人は、お互いにそう言うと、白と黒のどちらがパンダに合うのかを言い合っていました。
そんな姿を見た神様は、白神と黒神に気付かれぬ様に、パンダに優しく問いました。
「なぁ、パンダや。お前は、白と黒のどちらがいいと思う?白神は、白を。黒神は黒を勧めているが・・・一番、大事なお前の気持ちを教えておくれ。」
「はい、神様。僕の気持ちは・・・」
パンダは、神様に本当の気持ちを告げました。
その言葉を聞いた神様は、嬉しそうに言いました。
「その気持ちをあの二人に伝えてあげておくれ。きっと、二人は喜ぶ」
神様の目線の先には、白神と黒神。
まだ、どちらの色がパンダに相応しいか言い争っていました。
パンダは、勇気を持って白神と黒神に向かって話し掛けました。
「白神様、黒神様、僕の気持ちを聞いてはくれませんか?」
どちらの色が相応しいか言い争っていた白神も黒神も、パンダの声に振り向きました。
「何ですか?もちろん、白が良いのですよね?」
「いいや、白より黒だよな!」
白神と黒神の言葉を聞いたパンダは、首を大きく横に振りました。
「何故ですか?白のどこが嫌なのです?」
「黒のどこが嫌なんだよ!」
白神は、悲しそうに。黒神は、悔しそうに言いました。
「いいえ、白も黒も嫌ではありません!!」
「「じゃあ、何で?」」
「それは、僕が欲張りだからです」
「「・・・???」」
白神も黒神も、パンダの言葉の意味が分からないようでした。
その様子を見たパンダは、説明するように言いました。
「僕は、優しく、そして強くなりたいのです。仲間を愛し、大切に想い、そして、守りたい・・・。だから、全てを包む優しさを示す白、そして、全てを守る強さを示す黒。とても、素敵な色だと思うのです。白神様、黒神様、僕に白と黒の2色を与えてくれませんか?」
「白は、全てを包む優しさ?」
「黒は、全てを守る強さ?」
白神も黒神も、パンダの言葉に戸惑っていました。
その二人の様子を見た神様が言いました。
「パンダに、お前達から白と黒の祝福を与えてあげておくれ。白神の純粋な優しさと黒神の威厳のある強さ。どちらも、素敵な色だからな」
神様にそう言われ、ハッと我に返った白神と黒神はお互いを見て、深く頷きました。
「はい、神様。僕からは、大切な仲間を愛おしく想い合えるように優しき白の祝福を!」
「はい、神様。俺からは、大切な仲間を最後まで守り抜く事が出来るように強き黒の祝福を!」
白神と黒神の祝言が終わると、パンダの体がキラキラとした光に包まれていきました。
そして、光が消えると、そこには、白黒のパンダがいました。
「白神様、黒神様、ありがとうございます!僕は、この色に恥じないように、優しく、そして、強くなります!!」
そう言って、パンダは嬉しそうに仲間の元へ帰って行きました。
その様子を白神も黒神も満足気に見つめていました。
パンダを見た時に思いついたお話です。全てのものに意味がある。きっと、色もそうなのでしょう。