<C20> ゼクスフェス再臨
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軽やかに地を蹴りあげ、矢のように飛び魔族を斬り捨てるアリス。俺はそれを援護するように、斬龍丸から斬撃を放ち、アリスから離れた位置を飛ぶ魔族を撃ち落とした。
地上まで降りてきた奴らや、亜人たちはツェザーリやクリフ、騎兵たちが倒してくれるし、レヴィが次々に魔法で倒してくれる。
例え100匹の亜人だろうが、魔族だろうが物の数ではなかった。あいつが来るまでは。
轟と風を切る音がしたかと思うと、奴が突然現れた。
ガキンと金属のぶつかる音が響き渡り、空中を舞っていたアリスが撃墜されたかのように弾き飛ばされた。
「アリスっ!」
クリフが慌てて走るが、残党に邪魔をされ思うように進めない。
俺ももちろん走った。
アリスの方へ、ではなく、新手の魔族、《三面六臂の女》の元へだ。
忘れようったって忘れない。一度は殺された身だ。ここであったが100年目じゃないが、あいつは俺が殺る。親の仇、村のみんなの仇、何よりアマンダを返せっ!!
「てめぇは、死ねぇぇぇ!!!」
俺は怒号と共に地を蹴り上げ斬龍丸を構え跳んだ。
三面六臂の女がこちらに顔を向けた。あの時と同じ能面の様に表情のない澄ました顔。
眉が少し訝し気に動いた気がする。もしかして覚えているのか。
ならば好都合、手前を殺す!
だが途端に女の目が光ったかと思うと、凄まじい雷撃が迸り、俺に向かってきた。
避けることもできず、衝撃が俺を包み込んだかと思うと、弾かれくるくると錐もみしながら地面へ叩きつけられた。
だが、こんなもの利かねぇ!
回転して着地すると、女の目が若干見開いたような気がする。驚いてるか、それとも完全に思い出したか。
俺がこいつと初めて会った時もそうだったな。亜人の群れと血まみれで戦う俺に、こいつは雷撃を落とし亜人もろとも吹き飛ばそうとしたんだ。だが俺はびくともしなかった。
今もそうだ、ちょっと身体が帯電しているが、屁でもない。
再び地面を蹴り上げ宙へと跳び、奴との距離は少しあるが、斬龍丸を横薙ぎにする。
蒼く白い斬撃が弧を描いて飛び、《三面六臂の女》に向かった。
避けるかと思ったが、奴の動き以上に俺の斬撃が早かったのか、それとも軽く弾けるとでも思ったのか、6本の腕が蠢き、握られた様々な形の剣が斬撃を断ち切ろうと振り下ろされた。
蒼白い斬撃が6本の剣からなる強撃に霧散した。だが残念、貴様には見えなかったか、俺は2度剣を振ったんだ。
奴の能面がぎょっとした表情を浮かべ、俺は口角を上げる。
1つ目の斬撃に隠れた2つ目の斬撃が、僅かの時間差で奴に襲い掛かった。
6本の剣はすでに使い切っている、さぁ、どうするよっ!
バシュッ
大量の空気が爆縮したかのように破裂し、三面六臂の女が吹っ飛んだ。空中でくるくると回転し、ぴたりと止まる。
俺はすでに着地の大勢に入っていたが、空を見上げ鬼面となった女を見つめていた。
「ジュンヤッ!」
着地した途端に背後から声が掛かった。振り向く気がしない。
なにせアリスの声が怒りに震えているんだぜ、どんな形相してるか想像したくもないってもんだ。それに今はあいつから目が離せない。
あの鬼面、憤怒の鬼の顔となった奴は属性剣を使う。あれからずいぶん鍛えたつもりだが、何のことは無い、雷神剣であのざまだ。
神の武具とはいえ、貫通こそしなかったが、俺の防御を貫き傷つけ、雷撃は俺をマヒさせた。
所詮人間の防御力などその程度なのか。それとも俺の使い方が間違っているのか。
「あの化け物なんなのっ!」
アリスが激昂している。皇女らしからぬ、凄まじい荒い息を吐いている。ますます顔を見たくないぞ。
「以前、俺を殺し村を襲った魔族だ。」
「あんたを?んじゃ仇って奴の事?」
「ああ、あと1匹、お前も見た黒い鎧の首無しもだがな、とりあえず今はあいつに集中する。あの顔になった奴は6つの属性攻撃を剣に纏わせてくる。気を付けろよ。」
「属性攻撃ねぇ、マリアッ!」
アリスが怒鳴るとマリアがささっと寄り添い、言いたいことがまるで以心伝心の様に、再び収納魔法を使い腕を差し出した。
「敵が属性攻撃を使うならば」
アリスが差し出された腕近くの空間から出ている柄を掴むと、雷神剣をズルリと引き出す。
収納に剣を入れてるとか、なんかずるいぞ。なんて言ってると、アリスが野球のバットを構えるように雷神剣を振り上げ、俺の背後に回った。
「あんたが逝ってコーーイッ」
「へ?」
凄まじい風圧が背後から来たかと思うと、尻を衝撃が襲った。
「ぎゃぁぁぁぁぁっ!」
この馬鹿、雷神剣で俺の尻を叩きやがった。もちろん刃ではないが、ちょっとびりっと来たぞ、おぃぃ!!
「アリスぅぅ!!!」
「っアリス様!」
クリフとマリアの驚いた声、まさかマリアもそんなことに使うとは、流石に以心伝心というわけにはいかなかったようだ。
「ジュンヤぁ!」
「おわぁつ!」
続いてレヴィとグルームの驚いた声。
はい、俺ってば空中に射出されています。三面六臂の女に向けて。流石に奴も予想もしていなかったのか、こちらに向けて飛来していたが、慌てて空中で静止した。
「おわぁぁぁあぁあああああ!」
俺は大口開けて喚きながら奴に向かって一直線。
何の漫画だよ。
ともかくこのままじゃ、いくらなんでもやばい。
慌てて態勢を立て直し、空中で体を捻り回転させ刀を構えた。それを見る鬼面がすぐ様6本の腕を開き、剣を構え俺に向かった。
直撃寸前に空中で斬撃を飛ばし、奴の攻撃を牽制する。そして本命の斬撃を縦割りに叩き込んだ時には、俺と奴との距離はほとんどなかった。
奴が身体を斜めに動かし俺の斬撃を躱した。右の3本の剣のうち、1本が俺の剣を弾き、大きく逸らしたところで2本の剣が俺に向かう。
なんの属性か知らないが、2種の属性剣が俺の頭を貫こうと向かってくる。そこに背後から伏兵が現れた。
俺を飛び越え剣が頭上から斬りつけた。
「逝っけぇぇぇっ!!」
甲高い声と共に振り下ろされる、太く豪胆な剣戟に奴の残る左手の3本が反応した。
アリスの身長ほどもある両手剣を3本の剣が受け止めた、金属音が響いた途端に、凄まじい雷撃が迸った。
「グガァァァ!!」
「んぎゃぁぁ!」
空中で雷撃を見舞われた俺と魔族が、同時に悲鳴を上げる。
敵味方諸共かよっ!!
雷撃を受けた2人の動きが止まる、次いで俺と三面六臂の女が雷撃の衝撃ではじけ飛び、墜落した。
なんでだぁ!
さっきの雷撃は平気だったのに、なんで武器から迸る雷撃は痛てーんだよっ!
まあ剣を受けての直撃じゃないから、それほどではないが、それでも体がマヒしたぞ。つーか、なんだこの雷撃、以前にオーガウォリアーに受けた時の数倍は威力が有るぞ。
オーガから受けた時は、まだ意識が保てたってのに、直撃じゃないってのにマジこれヤバイ。
だがそれはあいつも同じだろう、ご自慢の翼を動かすこともできず、くるくると回転しながら落ちていく。まあ俺も同じようなもんだが。
このままじゃ頭からおちるな~と思ってたら、そこにアリスが宙を翔けてやってくると、俺の手を掴んでフワリと浮かび、尻から落としてくれた。はぁ、また尻かよ。
「何しやがんだ。」
「助けたでしょ、感謝しなさい。」
ああ、こいつ顔が上気してる。興奮してるんだ。この戦闘狂がぁ!
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