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ドジな女神に不死にされました  作者: 無職の狸
第三章 巻き込んだ男と巻き込まれた少女
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<C20> ゼクスフェス再臨

††


 軽やかに地を蹴りあげ、矢のように飛び魔族を斬り捨てるアリス。俺はそれを援護するように、斬龍丸《ドラゴンバスター》から斬撃を放ち、アリスから離れた位置を飛ぶ魔族を撃ち落とした。


 地上まで降りてきた奴らや、亜人たちはツェザーリやクリフ、騎兵たちが倒してくれるし、レヴィが次々に魔法で倒してくれる。


 例え100匹の亜人だろうが、魔族だろうが物の数ではなかった。あいつが来るまでは。


 轟と風を切る音がしたかと思うと、奴が突然現れた。


 ガキンと金属のぶつかる音が響き渡り、空中を舞っていたアリスが撃墜されたかのように弾き飛ばされた。


「アリスっ!」


 クリフが慌てて走るが、残党に邪魔をされ思うように進めない。


 俺ももちろん走った。


 アリスの方へ、ではなく、新手の魔族、《三面六臂の女》の元へだ。


 忘れようったって忘れない。一度は殺された身だ。ここであったが100年目じゃないが、あいつは俺が殺る。親の仇、村のみんなの仇、何よりアマンダを返せっ!!


「てめぇは、死ねぇぇぇ!!!」


 俺は怒号と共に地を蹴り上げ斬龍丸《ドラゴンバスター》を構え跳んだ。


 三面六臂の女がこちらに顔を向けた。あの時と同じ能面の様に表情のない澄ました顔。


 眉が少し訝し気に動いた気がする。もしかして覚えているのか。


 ならば好都合、手前を殺す!


 だが途端に女の目が光ったかと思うと、凄まじい雷撃が迸り、俺に向かってきた。


 避けることもできず、衝撃が俺を包み込んだかと思うと、弾かれくるくると錐もみしながら地面へ叩きつけられた。


 だが、こんなもの利かねぇ!


 回転して着地すると、女の目が若干見開いたような気がする。驚いてるか、それとも完全に思い出したか。


 俺がこいつと初めて会った時もそうだったな。亜人の群れと血まみれで戦う俺に、こいつは雷撃を落とし亜人もろとも吹き飛ばそうとしたんだ。だが俺はびくともしなかった。


 今もそうだ、ちょっと身体が帯電しているが、屁でもない。


 再び地面を蹴り上げ宙へと跳び、奴との距離は少しあるが、斬龍丸《ドラゴンバスター》を横薙ぎにする。


 蒼く白い斬撃が弧を描いて飛び、《三面六臂の女》に向かった。


 避けるかと思ったが、奴の動き以上に俺の斬撃が早かったのか、それとも軽く弾けるとでも思ったのか、6本の腕が蠢き、握られた様々な形の剣が斬撃を断ち切ろうと振り下ろされた。


 蒼白い斬撃が6本の剣からなる強撃に霧散した。だが残念、貴様には見えなかったか、俺は2度剣を振ったんだ。


 奴の能面がぎょっとした表情を浮かべ、俺は口角を上げる。


 1つ目の斬撃に隠れた2つ目の斬撃が、僅かの時間差で奴に襲い掛かった。


 6本の剣はすでに使い切っている、さぁ、どうするよっ!


 バシュッ


 大量の空気が爆縮したかのように破裂し、三面六臂の女が吹っ飛んだ。空中でくるくると回転し、ぴたりと止まる。


 俺はすでに着地の大勢に入っていたが、空を見上げ鬼面となった女を見つめていた。


「ジュンヤッ!」


 着地した途端に背後から声が掛かった。振り向く気がしない。


 なにせアリスの声が怒りに震えているんだぜ、どんな形相してるか想像したくもないってもんだ。それに今はあいつから目が離せない。


 あの鬼面、憤怒の鬼の顔となった奴は属性剣を使う。あれからずいぶん鍛えたつもりだが、何のことは無い、雷神剣《ライトニングブレード》であのざまだ。


 神の武具(アーティファクト)とはいえ、貫通こそしなかったが、俺の防御を貫き傷つけ、雷撃は俺をマヒさせた。


 所詮人間の防御力などその程度なのか。それとも俺の使い方が間違っているのか。


「あの化け物なんなのっ!」


 アリスが激昂している。皇女らしからぬ、凄まじい荒い息を吐いている。ますます顔を見たくないぞ。


「以前、俺を殺し村を襲った魔族だ。」

「あんたを?んじゃ仇って奴の事?」

「ああ、あと1匹、お前も見た黒い鎧の首無しもだがな、とりあえず今はあいつに集中する。あの顔になった奴は6つの属性攻撃を剣に纏わせてくる。気を付けろよ。」

「属性攻撃ねぇ、マリアッ!」


 アリスが怒鳴るとマリアがささっと寄り添い、言いたいことがまるで以心伝心の様に、再び収納魔法を使い腕を差し出した。


「敵が属性攻撃を使うならば」


 アリスが差し出された腕近くの空間から出ている柄を掴むと、雷神剣をズルリと引き出す。


 収納に剣を入れてるとか、なんかずるいぞ。なんて言ってると、アリスが野球のバットを構えるように雷神剣を振り上げ、俺の背後に回った。


「あんたが逝ってコーーイッ」

「へ?」


 凄まじい風圧が背後から来たかと思うと、尻を衝撃が襲った。


「ぎゃぁぁぁぁぁっ!」


 この馬鹿、雷神剣で俺の尻を叩きやがった。もちろん刃ではないが、ちょっとびりっと来たぞ、おぃぃ!!


「アリスぅぅ!!!」

「っアリス様!」


 クリフとマリアの驚いた声、まさかマリアもそんなことに使うとは、流石に以心伝心というわけにはいかなかったようだ。


「ジュンヤぁ!」

「おわぁつ!」


 続いてレヴィとグルームの驚いた声。


 はい、俺ってば空中に射出されています。三面六臂の女に向けて。流石に奴も予想もしていなかったのか、こちらに向けて飛来していたが、慌てて空中で静止した。

 

「おわぁぁぁあぁあああああ!」


 俺は大口開けて喚きながら奴に向かって一直線。


 何の漫画だよ。


 ともかくこのままじゃ、いくらなんでもやばい。


 慌てて態勢を立て直し、空中で体を捻り回転させ刀を構えた。それを見る鬼面がすぐ様6本の腕を開き、剣を構え俺に向かった。

 

 直撃寸前に空中で斬撃を飛ばし、奴の攻撃を牽制する。そして本命の斬撃を縦割りに叩き込んだ時には、俺と奴との距離はほとんどなかった。


 奴が身体を斜めに動かし俺の斬撃を躱した。右の3本の剣のうち、1本が俺の剣を弾き、大きく逸らしたところで2本の剣が俺に向かう。


 なんの属性か知らないが、2種の属性剣が俺の頭を貫こうと向かってくる。そこに背後から伏兵が現れた。


 俺を飛び越え剣が頭上から斬りつけた。

 

「逝っけぇぇぇっ!!」


 甲高い声と共に振り下ろされる、太く豪胆な剣戟に奴の残る左手の3本が反応した。

 

 アリスの身長ほどもある両手剣を3本の剣が受け止めた、金属音が響いた途端に、凄まじい雷撃が迸った。

 

「グガァァァ!!」

「んぎゃぁぁ!」


 空中で雷撃を見舞われた俺と魔族が、同時に悲鳴を上げる。


 敵味方諸共かよっ!!


 雷撃を受けた2人の動きが止まる、次いで俺と三面六臂の女が雷撃の衝撃ではじけ飛び、墜落した。

 

 なんでだぁ!


 さっきの雷撃は平気だったのに、なんで武器から迸る雷撃は痛てーんだよっ!


 まあ剣を受けての直撃じゃないから、それほどではないが、それでも体がマヒしたぞ。つーか、なんだこの雷撃、以前にオーガウォリアーに受けた時の数倍は威力が有るぞ。


 オーガから受けた時は、まだ意識が保てたってのに、直撃じゃないってのにマジこれヤバイ。

 

 だがそれはあいつも同じだろう、ご自慢の翼を動かすこともできず、くるくると回転しながら落ちていく。まあ俺も同じようなもんだが。


 このままじゃ頭からおちるな~と思ってたら、そこにアリスが宙を翔けてやってくると、俺の手を掴んでフワリと浮かび、尻から落としてくれた。はぁ、また尻かよ。


「何しやがんだ。」

「助けたでしょ、感謝しなさい。」


 ああ、こいつ顔が上気してる。興奮してるんだ。この戦闘狂がぁ!


††

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