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ドジな女神に不死にされました  作者: 無職の狸
第三章 巻き込んだ男と巻き込まれた少女
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<C12> 鍛冶の神トール

††


 ドワーフのランバードが怪訝な顔をして俺を見ている。

 

 きっと神の武具(アーティファクト)を持っている癖に、なんでわざわざ聞いてくると、訝しんでいるのだろう。


「ちっと見せてくれないか。」


 ドワーフがカウンターの中から出てきた。俺はまあいいかと剣を降ろして渡した。

 

「ふむ、本物の雷神剣《ライトニングブレード》、神の武具(アーティファクト)だ。あんたは、こいつを………どうやって手に入れた?」


 ドワーフの眼が厳しくなる。どこか怒っているような、疑っているような、猜疑的な、なんとも言えない感情が入り混じっている。


「オーガウォリアーが持っていた。」

「ウォリアーか、何故亜人が……で、そいつは倒したのか?」

「じゃなきゃ死んでる。」


 ランバートは俺の言葉に頷き、くしゃっと顔を綻ばせると雷神剣に目を落とした。


「そりゃそうだな。」

「そうだ。」

「こいつはな、遥か昔にうちで造られたもんだ。」

「ほう?」


 こりゃ驚いたな。見て直ぐ解るわけだ。

 

「100年前に祖父が造った。」

「100年前?」

「多分そんくらいだ。」


 随分大雑把だな、おい。

 

「それが50年前に盗まれた。」

「売れたんじゃなくて、か。」

「いや売りもんじゃない。殺傷能力が高すぎるってんで、祖父が倉庫に仕舞っておいたんだ。」

「そうか……んじゃ返そうか?」


 俺がというか、俺たちのパーティがオーガウォリアーから奪ったのだから、俺たちのものだと言えばそれまでだが。

 

 なんか祖父の形見みたいな品となれば、ちっと心が痛む。


「返す……だと?」


 俺が返すといったら、ランバートが驚いた顔をした。

 

「いいのか?」

「ああ、もともとはオーガウォリアーが持ってたもんだ。」

「そうか……ちょっと待ってろ。」


 ランバートはそう言って店の奥へと引っ込んでいった。

 

 しかしあいつって何歳なんだろな。

 

 ドワーフはどちらかと言うと長命種らしいが、さっきから100年前とか50年前とか、なんか凄い年齢に感じるのだが。


 背が低いから──150センチくらいかな、アリスといい勝負だ──どうしても太った子供に見えてしまうが。




 待つ間、ルミを相手に剣やその他の武器をみていたが、そうこうしているとランバートが戻ってきた。ドワーフのおっさん、いや髪も髭も真っ白の年寄りを連れて。


「待たせたな。」

 

 ランバートが俺に手を上げていうと、白髪のドワーフが片手に雷神剣《ライトニングブレード》をもって近づいてきた。

 

「あんたがこの雷神剣を取り戻してくれたのか。」


 白髪のドワーフが俺の顔をまじまじと見上げた。

 

「いや、俺だけじゃなく、一緒にオーガウォリアーを倒した仲間が居る。」

「そうかそうか。ありがたいことじゃ。ようやっと父の形見が戻ってきた。感謝するぞ。」


 白髪のドワーフは俺の手を握り、ぶんぶんと振る。

 なんかめっちゃ感謝されてる……てか、痛てえ、まて、すげー腕力だな、おいぃぃ!痛ってえぇ!

 

「おお、これは失礼。つい嬉しくて加減を忘れてた。」


 慌てて手を離すが、恐らく俺の顔が引き攣っていたのかもしれないな。

 

 ほんとに痛かったぞ。いったい握力いくつ有るんだ?下手な枝ぐらいなら握り潰せるぞ、普通の奴の手なら握り潰されてるところだぞ。

 ドワーフが強いのか、このドワーフが異様に強いのか、どっちか知らんがとにかく凄い握力だった。


「ささ、こちらへどうぞ。」


 俺は白髪のドワーフ──ランスに店の奥へと招かれ、俺はそこで驚くべき光景を目の当たりにした。


 店の奥は鍛冶場と居間となっていた。そう居間だ。畳敷きで囲炉裏があって、掛け軸まであって……まるっきり古風な日本の居間じゃねーか。


「ふぇふぇふぇ、驚いたか。」


 ああ驚いたぜ。ランス、お前まさか……

 

「ちっと色々あってな、まあ、この佇まいが馴染むんだよ。」


 なんかさもわけありっぽく顔をニヤつかせる。

 

 まあいきなり転生者か、なんて聴くのもあれだ。とりあえず俺は囲炉裏の前に座った。もちろん座布団というか、なんだこれ。御座か?時代劇とかに出てきそうな、丸い……ああ、イグサってやつか。イグサの座布団か。

 

 そう思うと、この部屋ってのはどことなく古いな。まるで時代劇っぽくもある。

 

 そして出されたのは、紛れも無いお茶。味は判らないが色合いはまさにお茶だ。


 一口飲んで見ると、うん、お茶にかなり近い。というかなんでこの世界にお茶が有る。どこかに茶畑でもあるのか。

 

 やっぱこいつ、日本人だろ。


 茶を飲んで目を剥く俺を、ランスはニコニコしてみている。


「これは……」


 俺は敢えて聞いて見る。

 

「お茶という飲み物だ、近くにチャ畑を持っていてな。」

「チャ畑、だと?」

「ああ、オヤジが造ったんだ。今では手広くやっておってな、人を雇って栽培してチャの販売もしておる。貴族連中にも結構うけておる。」


 鍛冶屋がお茶の販売とかなんか変だが、それってつまり、このドワーフの父親が日本人だったということか。


「それじゃ……この部屋は……」

「もちろんオヤジのデザインじゃ。なんぞ故郷がどうの言ってたな。」


 やはり……


「それで……」

「おお、雷神剣はワシのオヤジ、トールが造ったんだ。」

「トール?」


 ランスの言葉に俺は首を傾げた。どっかで聞いた名前だな。


「風説に寄れば神の武具(アーティファクト)を造った鍛冶の神、なんて奉られているよ。」


 ああ、思い出した。ニトロが言っていた鍛冶の神(トール)だ。てか、おい、ドワーフが鍛冶の神ってことか?


「……余程の名工だったってことか?」


 俺が尋ねるとランスがにやりと笑った。

 

「そうだな、雷の魔法を封じた魔剣、雷神剣やら大地を刳り溶岩を吹き出させる槌矛、全ての魔力を弾き返す魔封じの盾、そんな想像も出来ん魔武具を研究し造っておった。オヤジにずっと付き添っていた儂でも、未だに無理じゃ。」

「なるほどな。」


 溶岩を吹き出す槌矛に魔封じの盾か、とんでもねぇな。ランスの口ぶりだと、他にも色々造ってそうだな。


「もっともそれらの武具は、全て盗まれちまったがな。」

「はぁ?」


 おいおいい、そんな危険な武器が世に出てるってのか?


 て、何故俺にそれを話す。へんなフラグ立ててんじゃねーぞ。

 

「盗んだのは……魔族だ。」


 なに?

 

「50年前、店が盗賊団に襲われた。父はそんときに殺された。盗賊団は人間だったが、背後に魔族がいたらしい。まあ噂に過ぎんがな。」「盗人は捕まえたのか?」

「ああ、人間は捕らえた……というよりも、全員死んで見つかった。」

「神の武具(アーティファクト)は?」


 ランスは俺への回答に肩をすくめた。非常にわかりやすい回答だ。盗んだ人間は殺され、武具は盗まれたまま、ということか。


「なあどうだ、あんたがもし神の武具(アーティファクト)を取り戻したら、全てくれてやる。」


 はぁ?


「頼む。雷神剣を持つオーガウォリアーを倒せたあんただ。父の創造した武具(アーティファクト)を全て取り戻してくれないだろうか。」


 ガバッときたよ、THE土下座。やっぱお前も日本人だろーっ!

 

 オヤジに教わった?あそですか。

 

「はぁ……まあいいか、どうせついでだ。」


 同じ日本出身者だ、これこそ同郷のよしみってやつだな。


「ついで?」

「ああ、俺は有る目的の為に魔大陸《ノスフェラトゥ》へ向かってる。」

「ノスフェラトゥへだと?」

「あんたの祖父の仇はとれるか判らんし、武具も全部取り返せるとは思えない、だがやるだけやってみるよ。」

「だ、だが、魔大陸へ行くなんざ……」

「もちろん生きて帰れるとは思ってねぇよ。」


 もちろん嘘だ。死ぬことはない。だけどどう有るかまでは想像もつかないからな。


「だからまた武具を奪われたら、スマンが諦めてくれ。」

「ノスフェラトゥへいくとは、それはつまり……魔族と戦う気なのか。」

「俺はある大切な人を探している。もし生きているなら、絶対に連れ戻すつもりだ。どこまで出来るか判らんが、俺の身体が、いや精神が消滅するまで、諦めるつもりはない。」


 俺はこのとき、また恐ろしげな顔をしてたんだろな。ランスが汗を掻いて見ていたよ。


 だが嘘は言ってない。やれるだけの事はする。アマンダが生きているなら、奪い返す。例え肉体が滅びても、何度でも蘇って、必ず。


「そうか、ジュンヤと言ったな、いつ旅立つ。」


 ランスに唐突に聞かれてちょっと困った。


 あのお姫様の我儘で出発が遅れるわけだが、一応最低5日はこの街に滞在するだろう。

 

「予定では5日後だ。」

 

 するとランスはコクコクと頷いた。

 

「それでは4日後の夜、此処に来てくれ。」

「なんでだ?」

「あんたに礼がしたいからじゃ」


 ランスはそういってニヤッと笑った。


 飯でも奢ってくれるのか?


 ドワーフの特製料理ってのも悪くはないが、ありえねぇな。このパターンなら、なんかよさ気な武器でも造ってくれるのかもしれないな。


「わかった。」


 4日後を楽しみに待つとしようか。


††

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