<7> 狩人になりました
本日2話目です
今日は洗礼の日のようです。
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時は流れて俺は数えで7歳になった。
新しい年の1日目、日本風に言えば元旦の日。
この世界っていうか、市井の民には数え7歳になる年の元旦に、洗礼を受けるという仕来りがある。洗礼と言ってもミサみたいなもんじゃなく、仕事の適性を占うようなものらしい。だから貴族様とかは関係ないとか。
格差ですね。格差社会なんですね。
俺の村はそれほど大きな村でもないので、今年洗礼を受けるのは俺とアマンダの他に14人程。大人たちに付き添われて村に1つだけある教会で、神官から洗礼を受けるのだ。
この教会は女神を祀ってるらしいけど、思い出してくないので無かったコトにした。
なんだかんだ新年のイベントみたいなもので、村からも結構な観客が集まる。大勢の村人の前で、幼児を晒し者にするイベントです。違う?
この洗礼を受けることで【称号】が決まるとか。てか既に【不死神】の称号もちですが、よろしいのでしょうか。
称号はいくつでも持てる?なるほど。
もしかして転職の神殿ですか?
え、教会?
あそですか。
アマンダと仲良く手を繋ぎ、なんで教会で称号って、なんか変じゃね~とぽかんとしていたが、そういうものらしい。子供が逆らっても意味が無いので、甘んじて受けることにした。
肌着に白い膝までのシャツだけを着て、神官様の前に並ぶ子供たち。やっぱ晒し者だ。
この洗礼では才能によって【村人】、【狩人】、【魔道士】のいずれかの称号が啓示の鏡に映される。
まるでゲームですね。うん転職の教会ですね。
【村人】ってのは単純に村の人。農作業をしたり木を伐採したり、また工芸品を造るなどして、村や街で暮らす人の事。要は一般人。
【狩人】ってのは武器使い。剣や弓を使って魔獣を捕まえたり、亜人を倒したりする。武器の種類などにより、将来が変化していく。戦士職にクラスチェンジしたりして、領主の軍への入隊ができたりするらしい。
【魔道士】ってのは魔法に先天的な才能がある者。将来的には攻撃魔法や付与魔法を主に操る魔術師系か、回復魔法を得意とする神官系にクラスアップするとか。
これらの称号の選択肢は、洗礼を受ける物の才覚に左右される。
一般的には殆どの者が【村人】であり、時には【村人】しか出ない年もある。
逆に【魔道士】ってのは殆ど出現しないとか。最後に出現したのは十数年前らしい。つまり一般的にいって【魔道士】は絶対数が少ない。
【狩人】も余り多くはないが、10人居れば3-4人はでるとか。雑多なんすね。村人と良い勝負っすね。
【狩人】から戦士系にクラスチェンジした人は、将来領主の軍の士官候補生になり、10歳迄にクラスアップできた人は軍へ優先的に仮入隊が出来る。
同じように【魔道士】になると自動的に王都へご招待だそうだ。王都には王立イグリーズ学園とかいう、厨二病が彷彿としそうな、貴族が通う学園がある。ここで英才教育を受けられるというご褒美が付いている。しかも普通は貧乏農村じゃ絶対払えない高額な入学金と学費が掛かるのに、全て無料で入れるとか。
まるでどっかの●リー・●ッター。
学校名は●グワーツ魔法魔術学校ですか?
その反面全寮制で、故郷に帰れるのは年末年始の一年に一度だけとか。結構小さな子どもには厳しい場所ですね。
しかし卒業すると、将来は宮廷魔術士とか魔術師団とかのエリート士官コースが約束されるとか。
とはいえ、称号選択で【魔道士】が出るのは、余程魔導に先天的な才能を持つものだけだ。
なんとな~く、隣の天然お気楽娘が気になります。
んで俺はというと
神官様が持っているパネルに触れて、ゆっくりと数字を数えていく。すると、パネルに模様が浮かび上がってきた。
1つは鍬が2本交差した家の絵、つまり村人だ。
1つは兜を冠った戦士の顔に剣と槍が交差した絵、つまり狩人。それも戦士としての才能が強く出ている。
以上。
なるほど俺には魔術の才能は無いってことでOK?
なんか周囲で見ていた大人たちが、驚いてざわついてる。やっぱ戦士の才能が強くでるのは珍しいのかも?
ちらっと両親を見ると、コクリと頷かれた。
昨夜親父は言ってた。どれを選んでも良い、お前に任せるということだ。俺は迷わず狩人を選択した。
でも将来クラスチェンジして、戦士になるなんて考えていない。
領軍に士官できる?
んなもん要りません。
だいたい軍隊なんてやだし。死にたくないし、死なないけど。
NO MORE WAR!なんて、どっかの逝かれた奴らに迎合するつもりはないけど、やっぱ村で平和に安穏として暮らしたいよね。
他の街や国が潰れても消滅しても、この村だけ平和ならおっけ。
どーせテレビも電気もネットも何もない過疎村ですから。
──王都に行っても無かったか。
他の街や村や国なんて関係ないっす。むしろ国が潰れたら年に一度税金納めなくてもよくなるし、サイコー。
ま、異世界ジョークは置いといて
村人となって畑耕して親を手伝うのもいいけど、折角傷つかない身体を持っているのだ、農耕で稼ぐよりも、狩人の方が稼げる気がしたからかもしれない。
それにここは、なんだかんだいって剣と魔法の世界、ファンタジーみたいな世界だ。だったら、ちょっとは魔獣との戦いとかもやってみたい。男の子だし、そんな冒険心からだ。
ちなみにアマンダも狩人を選択した。理由は
「ジュンヤといっしょ~~っ」
だそうだ。
何処までも付いてくるのね。可愛いから良いけど。
しかしなんかもったいない。アマンダは全ての称号が啓示の鏡に表示され、周囲を驚かせたんだよな。魔道士がこの村から出るってのは十数年振りらしいし。
アマンダのご両親も末は宮廷魔術師か!なんて燥いでたのに、それを全て放り捨ててあっさり『ジュンヤといっしょ~~♪』などと言って、笑顔で狩人を選択しちまった。うん、お前なんにも考えてないだろ。
村の期待も両親の思惑も一瞬で吹っ飛んだわな。お母さんその場で卒倒してたわ。
その後しばらくはアマンダのお母さんに『ジュンヤが~ジュンヤが~』とウジウジ云われたけどね……
すんませんしたーーっ
後でアマンダからは、『王都に行ったらジュンヤと会えなくなるからやだ』と言われた。そですか、全て俺の責任なんですね。はい。
完全に幼馴染から結婚てフラグが立ってるじゃねぇか、ほんとーに有難う御座います。
前世のお父さん、お母さん、俺、多分結婚相手決まったみたい、実質6歳なのに……
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お読みいただきありがとうございます。
さっそくブクマや評価を頂き有難う御座います。テンション上がりまくります。
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今日も数話アップする予定ですので、どうぞよろしくお願いします
m(_ _)m