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ドジな女神に不死にされました  作者: 無職の狸
第三章 巻き込んだ男と巻き込まれた少女
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幕間 ドジ女神再び!

長らくお待たせしました。更新再開です、まずは幕間から。

††


 ふんふんふん~♪


 うふふんふん~~~♪


 機嫌のよい鼻歌が聞こえていた。


 およそ彼女に必要なことかどうかはわからないが、シャワールームというには、やたらと広いシャワールームの中で、白き髪の女性がお湯を浴びていた。


 勢いよく落ちてくるお湯が女性の白いほどに白い肌を濡らし、伝い落ちていく。


 身体を濡らす行為は、彼女にとって特に必要なことではない。だが大昔からの慣習なのだろうか、シャワーを楽しみ濡らした体に大きなタオルを巻きつけて上機嫌でシャワールームから出てきた。

 

「んふ~~、やっぱシャワー最高~~。すっきりしゃっきり、気分最高ですわぁ。」

「やっと出てきたか。」


 気分よく出てきた女性が固まり、今の低いしわがれた声の方へと恐る恐る顔を向けた。


 椅子に腰かけ、足を組んだ白髪の老人が、たっぷりとした顎鬚を撫でてこちらを見ていた。

 

「こ、これは……ローゼス管理官…様」


 女性はタオルを巻いた姿のまま、その場に膝を付き頭を垂れた。

 

「よいよい、まずは衣を羽織りなさい。」


 老人はニコニコと笑みを浮かべ、あられもない恰好の女性を見ていた。


「あ、これは、し、失礼しましたぁ!」


 気づいた女性は慌ててたちあがるが、その拍子にタオルがはらりと落ちてしまう。

 

「おやおや……」

「ひ、ひぇぇぇぇ」


 落ちたタオルを拾い、慌ててその場を立ち去って行った。

 

「まったくドジな奴だ。」


 老人が嘆息すると、指を軽く鳴らした。光が周囲から集まり始め、老人の手の中に細いステムの上に丸いボウルが乗った形をした、ワイングラスが現れた。


 老人がやれやれと嘆息して、注がれた赤い果実酒を口へと運んでいく。



 少しして白い衣を羽織った女性が、戻ってくると

 

「お待たせ致しました、ローゼス管理官。」


 老人の前に跪き、再び首を垂れた。


「突然のご来訪故に、何も持て成す用意ができておらず、剰え見苦しい姿を……」

「そう畏まらんでもよい。それよりもイーロイ、星は動いておるか?」「はい、平穏に、適度に争い、調和が取れているかと。」


 イーロイの言葉に老人──ローゼスは目を細めて頷くと、軽く首を上げた。するとその視線の先の空間に青い星が映り、徐々に拡大されていった。


「………イーロイ、面妖なことじゃな。」

「は?」


 老人の優しそうな目が急に厳しくなった。


「どういう……」


 イーロイが慌てて顔をあげ空間に出現したスクリーンを見上げると、そこには少年が映っていた。

 

 船の上だろうか、甲板の上でなにやらしているのだが、どちらかと言うと、海に向かって俯いている様に見えた。

 

 年の頃なら14歳くらいか、白く見えるが銀色の綺麗な髪をしている。革を主体にした防具を付け、腰には湾曲した剣を装備していることから、狩人ハンターと見える。

 

 イーロイはその少年にどこか見覚えがあるが、どうも思い出せない。魂を見ればわかるかもしれないが、それよりローゼスが何を言いたいのかが気になった。


「何故あの少年が【不死神】などもっとるのかのう……」


 ローゼスが首を傾げる。そこでイーロイは思い出した。あの少年だと。基はこの辺境の星と星幽アストラルレベルで繋がる星、第12星系辺境の惑星から流れ着いた星幽体アストラルボディの持ち主だ。


 一度転生させ、そして自分のミスで殺してしまった少年。名前は知らん。

 

 イーロイは慌て口をパクパクとさせた。あの少年は人族に転生していた。寿命はせいぜい100年もない。そのくらいの短期間なら問題は無いはずだった。


 何故ローゼスが今来たのか。


「ふ~む、【不死神】などそうそう出現するはずは無いのだが。何故じゃ、しかも……」


 スクリーンがずれると綺麗に着飾った仮面の少女が映された。おそらくは同じ船の上に乗りあわせているのだろう。背景が殆ど同じだ。

「あの少女は【天臨王】……【不死神】ほどでは無いが、これもまた珍しい。」


 ローゼスがじろりとイーロイに視線を向けると、イーロイはさっと目を逸らした。


「ほ、ほんとに珍しいことです……ね」

「そのようじゃのう……他にも【覇王の巫女】、そしてなんということか【勇者】が堕天して居るではないか。」


 イーロイがビクッと顔を上げて、汗を滴らせた。


「なんと混沌とした世界よ……」


 ローゼスは手に持ったグラスを空間に消すと、椅子から立ち上がりイーロイを見下ろした。


「──イーロイよ。」


 ローゼスの鋭い眼差しが、イーロイを射殺す様に見つめた。

 

「ひゃ、はいっ!!!」


 イーロイはブルブルと身体を震わせ、ただひたすら汗を滴らせている。


「何故このような事となっているか、知っておるか?」

「いえ、あの、その……」


 狼狽え生返事をするイーロイから目を離し、再びスクリーンを見上げる。


「愚か者め。お前は星の一つもまともに管理できぬというのか、情けない。」

「申し訳ございません……」

「あのようなコマが揃ってしまっては………この星が消滅したら、大神たいしんラーデウスはお主に罰を与えるかも知らぬぞ。」


 途端にイーロイが真っ青になって、さらにがたがたと震えだしローゼスを見あげる。その目は恐怖に染まり、その顔は本来の美しさの欠片すら見いだせなかった。

 

 もしここで不死神、天臨王、それに堕天してしまったが、勇者の称号を自分が与えたなどとわかったら、どんな叱責を受けるかも解らない。


 虚無の次元への幽閉などではすまないだろう。それこそ永劫の責め苦が待つ、コキュートスの次元送りになりかねない。いや確実に落とされる。


「覇王の巫女、不死神、天臨王、勇者ならばまだしも、堕天したとなれば──何故小奴らが発生したことを黙っていたか、この大馬鹿者が。」

「は、はぃぃ、申し訳ございません……」


 ローゼスの重い口調にイーロイは消え入りそうな声で応える。


「……魔族の配置によって、バランスが崩れたとはいえ────これではやり過ぎじゃ。」

「申し訳ございません。」


 イーロイは頭を床に擦り付ける様に土下座した。神の次元にも土下座文化が有るらしい。


「こうなっては仕方ない。いずれ星の運命さだめ、星の望むままに……我等は見守るのみ、か。」

「そ、そんな。」


 イーロイは目を潤ませローゼスをすがるように見るが、ローゼスはただ顔を横に振るだけだった。


「イーロイ、お前をこの星の執政官アルコーンとして配置したのは儂の失策だったな。」

「ローゼス管理官……」


 イーロイはローゼスの足元に這いつくばると、顔を伏せて泣いた。

 

 気軽に称号を渡してしまったことが、そんな大事になるなど、全て自分の迂闊さのせいで、まさかこんなことになるとは。


 可能ならば自ら地に落ちて、なんとかしたかった。


「儂は此度は所用にて近くまで来たので立ち寄っただけ、あの星の事は儂は知らぬことじゃ。だが何れ大神たいしんに知れることとなれば、その時はお前が責任をとれっ!」


 イーロイは顔をあげ情けを乞うが、ローゼスはそれを蔑む様な視線で返した。


「使えぬ女め。」


 ローゼスは侮蔑の目でイーロイを見つめ、掻き消える様に姿を消した。


「あ、あ、そ、そんな、なんで、なんでなの、私は何もしていないのに、なんで責められなければ行けないの。


 こんな馬鹿なことがあってたまるか、全てアイツラが悪いんだ。虫けら如きの為に何故私が罰せられねばならない。


 そうだ、全てが虫けら共が存在していることが罪なんだ。


 見ておれ、あんな転生者のために、コキュートスに落とされてたまるか。」


 イーロイの顔が憤怒の表情に変わり、全身から蒼白い焔が燃え上がり始めていた。


「誰ぞあれ!」


 部屋に声が反響した。


††

次はお昼ぐらいに更新する予定です。土曜日中に3話更新予定です。

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