<K16> 魔闘大会
アリスは文武魔のトリプルトップを狙うのです。
※ 4/23 ジュンヤ編(第一章)とアリス編(第二章)を再構成しています
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5年生となった私たちは、イグリーズ学園で学ぶ最後の年となります。そして学園生活一番のイベントがあります。
イグリーズ学園の校舎は円筒形の形状をしてるんだけど、その中央はバームクーヘンのように空洞になってるのです。
その空洞の中には何があるのかっていうと、練武場。なんとも物騒な名前だけど、一応訓練とかの場所だからね。
この練武場を使って、年に一度の卒業生対抗魔闘大会が行われるのです。
正式には卒業生のトップを決める、言わば武器術と魔術の成績を決めるための大会なんですけどね。
座学の成績は直ぐ解るし、トップ30とかが貼りだされるので解るけど、武器術や魔術は先生の好みでつけるわけにも行かず、実際に生徒たちに戦わせて、成績を決めるのが習わしだとか。
なんか強引だなぁ。まるでアニメの●下一武道会みたい。
おらワクワクすっぞ!
じゃなくて。
出場する生徒は、卒業生でここまで生き残った88人が出場します。もちろん学年別ですけどね。
因みに生き残ったというのは、別に生徒が死んだわけじゃなく、退学したってこと。
この5年間で40人近い生徒が、授業についていけないと判断されたり、また自主的に辞めていったりしました。
ザックのために辞めていった奴も多いらしいけど。
辞めていったのは平民クラスが半分以上。下級貴族クラスが10数人。うちの上級貴族クラスは流石に脱落者ゼロ。
やっぱり貴族として、意地でも脱落するわけには行かないって事もあるだろうし、ザックのような奴が居ないってこともあったのかな。
で、大会は武器術と魔術に別れまして、武器術の出場者は36人。大半が男子です。これは毎年そんなもんらしいです。
反面魔術は武器術に参加しない男子と、女子の殆どが出場。というのは武器術に出ない生徒は、魔術に出ないと成績もらえず、卒業を目の前にして退学になるそうです。
強制ですね。最後までバリバリ武闘派の学園です。
ということで、魔闘大会が始まるのです。
「アリス様、アリス様。」
エリーザの手作りサンドイッチをおいしく頂いていると、いつも通りに公爵令嬢のベルティユ様とリリアーヌ様を始めとして、侯爵令嬢やら伯爵令嬢が集って来る。
かくしてお昼休みは、10人を超える女子会となるのです。
「今年の武器術は、アリス様の優勝で決まりですわね。」
リリアーヌ様が綺麗な金髪を揺らして、私をきらきらした瞳で見てくる。なんか最近この子の視線が怖い。
「そうですねぇ、優勝ができたらよろしいのですが。」
多分勝つのはあたしに決まってる。でもそんな事言うとね、厭らしいじゃないですか。
「でもリリアーヌ様、最近大公様のご子息、クリフ様も油断できませんわ。」
赤巻ロールっ子のベルティユ様が言う。
確かに彼女の言うとおり、クリフもなかなか腕を上げている。
「いえいえ噂によりますと、下級貴族クラスに天才がいるといいますわ。」
侯爵令嬢リュシール様が眉を顰めた。
「下級貴族クラス……ですか?」
私はぴくっと反応する。多分アイツだ。
ただの勘だけど、そんな気がした。
「下級貴族の癖に生意気ですわ。」
「アリス様と剣を交える等、無礼討ちにするべきです。」
こらこら、あたしは悪役令嬢かっての。
「そのような暴言を言っては行けません。この学園では試合の時は、身分は関係なし。もし身分の差を気にしてわざと負ければ、即退学です。また家格の高い者が家格を傘に来て脅すのも、退学です。」
私が静かに、宥める様に言うとみんなシュンとしてる。かわゆいの~。
「それよりも皆様は武器術には出られないのですか?」
私が尋ねると、みなさん顔を見合わせてはにかんでる。
多分女子の嗜みとして、武器術は~とか思ってるんだろうな。皆さん高貴なお家の方々ですから、やっぱ武器術は嗜まない、ってことでしょうね。
私は異質なんだろうなぁ。
「あの、アリス様は魔術にも出られる、と聞いておりますが。」
アクシズ辺境伯の子女マルセル様が口を挟んだ。
「はい、時間が合えば出るつもりです。」
試合は同時進行だから、難しいのよね。無理に出る必要は無いんだけど、一応ダブルトップ取りたいじゃないですか。あ、座学もトップだからトリプルだ!
なにせこの世界の算術とか地政学とか、小学生並なんだもん。現役JKとして、いくら陸上に命掛けてたとはいえ、楽勝です。
私の言葉に皆さん「はぁっ」と溜息を吐かれております。ふふふ、トップは渡しませんよ?
小学校レベル相手に威張るな、とか言うな。
特にマルセル様などは、上級貴族クラスでは私に次ぐ実力者。多分優勝争いになるかも。もっとも他クラスがどう出るか、全くわからないんですけどね。
武器術ではラザロ大公の子息クリフ様と北東地区担当のロレッツオ辺境伯の子息ツェザーリ様、この2人は突出して実力がある子たち。もちろん私の方が上ですけどね。
ツェザーリ様のお父上は辺境伯なので、隣国との揉め事があると真っ先に矢面に立つそうです。そのご子息であるツェザーリ様もお強くなければ生き残れないそうです。頑張ってください。
マルセル様も同様で、いざとなれば戦線に立つとか。彼女は攻撃系魔法を使わせれば、なかなか侮れないのです。
そして大公子息のクリフ様。
「おい、アリス……」
声の主はクリフ様。
なんでこの人は、私に対して敬称無しなんだぁぁっ!あんたは次期大公になるかもだろうけど、私は現役皇女だぞぉ!
この御方は私と武器術を張り合ってきたお方。
ま、私の全勝ですけどね。
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