<K10> りんごを2つとりんごを1つ足したらいくつ?
小学校の算数です
※ 4/23 ジュンヤ編(第一章)とアリス編(第二章)を再構成しています
††
午後になり魔術と武器術の教科についての説明が有ります。オリエンテーションみたいなもんです。
講堂のような場所に集められた125人の前に、6人のセンセが立っている。
3人が武器術のセンセ。3人が魔術のセンセだ。
センセ達の一通りの挨拶と紹介があり、今後の授業内容や分担などが知らされる。
簡単にいえば、何処まで習いたいかということ。
女子に武器術をとことん仕込んでも、将来において戦士となるわけでもないのだから、必要もないし、中には鍛えてキン肉マンになるなんて望んでいない人もいる。
というわけで、魔術コースと武器術コースに別れることになる。
中には両方習いたいという生徒もいるので、その辺りの生徒の分担が主体となります。
まず武器術のコースは1年生の間は基礎鍛錬が主体で、合間に武器の使い方のレクチャーから、人型の人形などを使った実践が行われます。
2年生では1年生の授業内容に魔獣との実戦戦闘、3年以降では対人戦闘が加わります。
卒業年度の夏になると、学年トップを決める武術大会とかもあるとか。
男子が盛り上がりますね。うん、盛り上がってる。でも女子は眉を顰めてる子が多いです。普通の対応ですね。
もちろん戦闘訓練を望まない生徒達は、基礎訓練と簡単な実践応用のみが課題となります。このあたり本人希望で良いらしいので、割とゆるいです。
そして魔術に関しては1年生では魔術を使える者も使えない者も、座学を中心として、初級魔術の基礎訓練を行うそうです。
2年生になると1年生の授業に加えて、より実践的な魔術と応用へ、3年生では初級魔術のより高度な実践応用になりますが、3年の夏までに魔術の才能の見極めが行われます。
魔術の才能がない、と判断された場合、残りの2年半は基礎訓練のみとなって、クラス分けの上で、初級魔術の体得が課題となります。
魔術の才能があると見極められた生徒は、中級から上級へと進むそうです。
才能格差ですね。
私の場合は、武器術も魔術も、どちらもお墨付き頂きましたし、今直ぐ最前線で魔族と戦えるほどだそうです。むふぅっ。
そんなこんなで先生紹介とご挨拶と今後のスケジュールをざっくり聞いた所で、今日は解散。
本格的な授業は明日からとなります。
私はこのまま寄宿舎に戻ってもよかったのですが、まだ日も高いですし、ちょこちょこと校舎を見て回り、その後校舎からでて学園私有地内をお散歩。
先日から拝見していてわかったのですが、イグリーズ学園の校舎は楕円形をしています。結構大きな楕円形校舎の周りは、かなり広大な私有地になっていて、あちらこちらに塔が立っています。
エリーザ情報によると、あの塔には積層立体魔法陣とかいう高度な魔術式が書かれ、他の塔と連携して結界を構築しているそうです。
万が一の時、例えば魔獣が王都の城壁を破って侵入しても、この結界内には入れないとか。少なくとも時間稼ぎはしてくれるとか。
つまり学園は巨大な結界に守られている、ということですね。いやぁ、お金掛かってるなぁ。
王立であって、さらにあちこちの貴族から大枚貰ったり寄付があるから、可能なわけですね。
だったら王都全域を……え?王都は広すぎてお金が掛かりすぎて無理?税金が跳ね上がって反乱が起きかねない?あそですか。
さてそんな安全安心な私有地の中ですが、野原があったり森があったりと、なかなかいい感じです。
野原にはウサギや鹿とかが居たり、草食系のおとなしめの動物が闊歩しています。
一応動物の殺害や捕獲は禁止です。見つかれば即時退学だとか。
変に厳しくないかな?
動物愛護団体にでも加入してるんですかね?
「マリア~」
私が呼ぶとマリアが寄ってきます。流石に広大な野原となると、マリアも姿を隠せないので、私の数歩後ろをついてきてます。
「はい、アリス様。」
マリアが頭を垂れている傍から
「ここってさぁ、いい感じの森と野原だよね。」
と私が尋ねると、マリアはきょとんとしてる。
「奔るのも良いし~、森の中だったら、面白そう。」
「は、はぁ。」
マリアには意味が解らないみたいだけど、今はまだいいや。
私の予想が正しければ、ここはいい場所になりそうだ。
人も居ないしね。
うふっ
翌日は早速朝早くからテレーズ先生のホームルームをしたあと、早々に授業開始。
マナーやら算術やらで午前中を過ごしますが、マナーも幼い時からエリーザにしこたま仕込まれていたので、今更習うこともなく、算術に関しては、は?と驚くような低レベル。
まずは数字という概念。1から9までの数字の存在と、ゼロという存在の説明。
次に簡単な足し算。
まるで小学校1年生。
「りんごを2つとりんごを1つ、足すと答えはどうなりますか?」
とか云われて、ちょっと戸惑いながら
「3個……かな?」
なんて初々しく答えました。
「そのとおりですアリス様。」
とテレーズ先生がとっても褒めてくれた。
さらにクラスの皆が流石皇女様と褒め称えて拍手してくれる。
いやぁ、それほどでもぉ。とちょっと照れて座った私です。
ヤッテラレッカァァァァァ!
ナンジャコリャァァァ!
と机をひっくり返してやりたいのを、ぐぐぐぐっと抑えました。
こちとらそんな初期の算数なんてとっくの昔に終えてるわぁぁ。
もうね、もうね、沸々と笑いなのかジレンマなのか解らないものがこみ上げてきましたよ。
マナーの時はね、私も数年前から習ってたことですから、それに各家庭に於いて色々諸事情もあるし、私以外にもスムーズにこなしてる子もいたから、スルーしたけど。
なんじゃこの算術わぁぁと、憤慨しそうになって抑えました。
そっか~~考えてみれば当然か、いや考えなくても当然だ。
あたしまだ8歳です。満年齢なら7歳。つまり、小学校1年生だよね~。
あははは、マジか……
それにこの世界って、算術ができる人って割と少ないとか。
大人になっても加減算はある程度できるけど、3桁以上は無理とか。乗除となるとできない人が殆ど何だとか。
つまり?
私の前世の知識をもってすれば、算術では最強でヒャッハーって、どうするんじゃい!
商人にでもなれってか?
いやぁあ、ある意味楽勝過ぎて眠くなってくる。
††




