<5> スキルレベルがあがりました
本日五話目で御座います。
不死なのでちょっと身体を鍛えてみることにしたようです
††
翌日悪ガキの親を連れて俺に虐められたと、わけの判らん文句を言いに来た。
モンペっすか?
ちっと冷静になれっての。
悪ガキどもは5歳から6歳、身長も体格も俺よりでかい。しかも4人もいた。
それを4歳の俺が虐めたと?正気でそんな呆けたこと言ってるのか?
最初はぎゃーぎゃーと文句をいっていたが、俺の親父がでてきた。「皆さんちょっと冷静になりましょう」と落ち着かせた。
冷静になって話しているうちに、だんだんおかしな事に気づきだした。
たった1人の年下の子供に、4人の年上の子が虐められた。冷静になると、そのどうにもおかしな話に気づいた親たち。
この世界にモンペが居なくてよかった。
結局悪ガキ共が白状して、返って親たちは平謝りし、自分の子供を引っ叩くやら叱りつけるやらして帰っていった。
うん、糞ガキには暴力もまた教育だ。平和ニッポンの子供ボケした親とは一味違う。
所詮子供のした事だと、親父もお袋は笑っていた。
お父さんお母さん、イジメは撲滅しないといけませんよ、等と言うことも無く、俺は2人に本当にケガはしてないか、あちこちを確かめられ、さらに悪い事に軟禁してたのに何をしてると、結局叱られた。
いや遊び盛りのガキを、家の中に軟禁するほうが悪いんじゃなかろうか?
と言い返さず素直に謝った。
何しろ今世では俺は素直で良い子何だから。でも結局は親父が、子供を家に閉じ込めるのは無理が有るだろうと、笑って許してくれた。
かくして俺の軟禁は解き放たれ、アマンダと共にまた薬草採集の日々が復活する。
外出が許されて数日、俺はふと考えた。
俺ってばアレだけ殴られても蹴られても、痛くも痒くもないわけだから。これってもし自分でやったらどうなのかと。
別に勇者とか戦士とかになる気はさらさら無いが、いつかまたあんな感じでガキどもに寄ってたかった虐められるときや、もっと大人になった頃には、それこそ剣とか武器で襲われることだって有るだろう。
この村はそれほど大きな村ではないが、それなりに人口は居る。だけど武装した人は見たことがない。
村には十数人の狩人の称号を持つ人がいる。普段は森にはいったりして、魔獣や亜人を仕留めてる人たちだ。
村に何かあれば、狩人の称号を持つ人が戦ってくれるらしいけど、よくは解らない。
子供にはまだ早い、そうだ。
それでも立ち聞きというか、盗み聞きというか、ともかく大人たちの話しを色々統合すると、この世界には幾つかの人種がいるとか。
まず人間。そして人間に友好的な森の住人エルフ族、主に鉱山などに住まうドワーフ族、背の低い子供の様なハーフリング族がいる。
これらの種族は、自分たちの村や結界の中で暮らしたり、人間と一緒に暮らしたりしてるらしい。
逆に人間に対する反勢力として、亜人と一括りにされているが、背の低い醜く深緑の肌をもち、やたらと数が多いゴブリン族。人間と同じ背丈と太った豚のような身体を持つ、オーク族。粗暴で頭のわるいトロール族。そしてもっとも危険な鬼のような怪物、オーガ族がいる。
これらの亜人達は、人間の居住区の近くに潜み、人間を襲い、喰らい、そして拐っていく。
拉致された男は亜人の餌となり、女は苗床にされるようだ。それってどこのエロマンガっすか?
まあいろんな住人と危険な種族が居るようだが、基本的にこの村は結界が張られているので、村にいる限りは安心だそうだ。
しかしもし村の外がそんな危険なのなら、俺は強くなって置かなければいけないかもしれない。
不死の体だから、襲われても死なないだろうが、アマンダや両親はそうは行かない。
はぁ~こんなことなら無双の力が欲しかったな。
まぁ悔やんでも仕方ない。
かくして俺のスローライフは、ちょっと方向が変わってきた。
危険な世界なら、みんなを、アマンダも両親も村の人達も、俺の大事な人達を守れるくらいに、強くなれば良い。
以前なら兎も角、今の俺はどんなに無茶をしても大丈夫だ。
例え死んでも蘇るんだから。
そう思ったら居てもたっても居られない。
俺はアマンダと薬草採集のあとに、一旦アマンダと別れてから、ひっそりと自分の時間を持つようにした。
まず林の奥へと入る。
昼間の薬草採集で見つけておいた、手頃な岩のところへ行く。
自分の背の高さくらいの大きな岩。それに向かって正拳突き!
んぐっ!
結構痛い……痛いなんてもんじゃ無い……マジで痛い。
拳がじ~んと痺れてる。ついでに拳の皮がめくれ上がって血が滲んでる。傷つかないとか油断してたら、そうでもなかった。
防御力MAXとか、一体何なんだよ。
ちょっと涙目になってしまった。でも直ぐに【再生】スキルの恩恵か、修復が開始されていく。
まるでビデオの早回しみたいだ。でも瞬時再生じゃないのね。
しかしこの痛みは結構キツイ。
ちっと冷静に考えてみると、4歳とはいえ俺は殴るという行為、殴り方を知っている。つまり身体の造りと知識がバランスが取れていない。その状態で岩を殴ると、殴り方を知らない幼児ならまともに殴れないが、知ってる俺はまともに空手の正拳突きをしてしまった。
一応ヒッキーだってネットで知識を蓄えてるからな。それに高校や中学の時は、ある程度スポーツもしてたし、喧嘩もしてたし。
つまり、4歳の身体に分不相応な知識が、力いっぱい殴らせたことになる。身体のできていない状態で、満身の力を込めたらどうなるか。
普通なら拳の骨は折れてぐちゃぐちゃになってるはず。痛いどころじゃすまないはず。
防御力に感謝。
てことで、俺は改めて身体ができていないってことを前提に、もうちょっと柔らかい、若木にした。
すいません、ヘタレました。だって4歳児なんだから許せ。
若木を殴る。これも痛い、でもさっきほどじゃない。木が揺れて力が逃げるし、そもそも樹皮が柔らかいので痛みは少ない。それでもやっぱり皮が微かに捲れ、すぐに修復される。
これなら行ける。
ちょっと調子にのって
殴る→痛い→皮剥ける→再生する
のルーティンワークを繰り返していたら
♪~♪~♪|《スキル【再生】がレベル1からレベル2になりました。》♪~♪~♪
♪~♪~♪|《スキル【剛体術】がレベル1からレベル2になりました。》♪~♪~♪
おや、なんだこれ。
チャイムみたいな音がして、メッセージが脳裏をかすめた。音として聞こえるわけじゃなく、イメージとして頭の中に浮かんだ。
なるほどさらにゲームっぽいけど、スキルがレベルアップするとお知らせが来るのか。
でもなんかうざいな。どっかでオフにできないのか?
てことで、木を殴ったりケリを入れたり、時には格闘技まがいの事をしてみたりと、あれこれと数日繰り返してみた。
【再生】と【剛体術】がレベルあっぷし、それぞれ4と5になった。やっぱり称号で与えられたスキルってのは、加護が付いているのか伸びが早い。
他にも【拳術】とか【蹴術】とかいうスキルも覚えた。
攻撃スキルや攻撃力の方は、加護のあるスキルに比べると進捗は遅い。でも徐々に徐々に上がっていくようだ。もうナメクジが這う様に。
筋肉は……あまりついてないなぁ。
ともかくこれが俺の日課になった。
しかしこんなトレーニング、誰かに見られたら何と思われるか。ちょっとドキドキしていたが、見つかってしまいました。
「なにしてあそんでるのーーーっ!」
アマンダキターッ!!
俺の密かな訓練は僅か一週間程でアマンダに見つかってしまった。
「いや、これはね遊びじゃないんだよ。」
「あたしもやるーっ!」
わぁすっごくいい笑顔。もうやるきまんまんだ。
「これは身体を強くする訓練だから、遊びじゃなくて……」
「ジュンヤと一緒、やるーっ!」
あーもう。女の子がすることじゃないっての。
「これって面白く無いし、辛いし、痛い……」
「やるーっ!」
なんかほっぺ膨らんで睨んでる。やばいかな、ちょっとヤバイかな。
「でもね、あの……」
「ジュンヤと一緒するーーっ!」
あ、涙目……ヤバイ!
「えっと……」
「ジュンヤが仲間はずれしたーーーっ!!!」
泣き出したァァァァ
その場にへたり込んでギャンギャン泣き始めてしまった。こうなったらもう引っ込まない。ほんとこいつ我儘、泣けばいいと思ってやがる。
そんなアマンダを無視して……できるわけがない。
「わーかった、一緒にやろう。」
「やるーっ!」
ケロッと泣き止んだ。
完全に負けですね。
「その代わり、これは訓練といって強くなるために耐えることなんだ。苦しくても痛くても我慢して、すっごく辛いぞ。」
「うんっ」
俺の言うことをコクコクと頷いて聞いてくれる。ほんとこういう所素直で可愛いわ。
††
5話まで連続して更新してみました。
ご愛読ありがとうございますm(_ _)m
明日も2-3話アップしまして、月曜日からは毎日更新となるかと……
『異世界戦線奮戦記』も合わせて頑張るです。
どぞよろしくお願いします
m(_ _)m
※ホビット→ハーフリングに修正しました。