<K07> マリア、お前何者?
マリアは出着る子なのです。
※ 4/23 ジュンヤ編(第一章)とアリス編(第二章)を再構成しています
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そういうわけで部屋の片付けが終わった。
主にマリアとエリーザがしてくれました。
私見てただけです。
だって手伝おうとすると、仕事を取るなって怒られるんだもん。
冗談は置いといて、私は制服に着替えさせてもらって、まずは宿舎内と校舎をぶらりと見て歩くことにした。
明日からお世話になるのだから、一応下見を兼ねてということで。エリーザは自室の片付けも有るため、マリアが付き従うことになる。
ん、自室?もう終わってるだろって?いえいえ、エリーザとマリアのお部屋の片づけです。
そう私のお隣はエリーザとマリアのお部屋です。そうなんです、付き人の部屋もあるんですよ、この寄宿舎。
考えてみれば当然だよね。貴族って自分だけじゃ何もできないからね。大人になればそうでも無いんだろうけど、基本的に着替えは全て侍女がしてくれます。
自分一人でお着替えなんてしません。
お風呂も侍女が付き従います。
お湯に浸かってでたあとは、侍女が全て洗ってくれます。自分で洗うといっても洗ってくれます。あんな所からこんな所まで、バカっ丁寧に綺麗にしてくれます。
ほんと赤面ものですが、慣れました。
だからまぁそういうわけで、寄宿舎なんぞに貴族の子を一人で放り込んだら、大変なことになるわけです。
私の場合、お城でのお付の侍女はエリーザを筆頭に6人いるのですが、それ全部を連れては学園に来るのは流石に無理なので、2人まで許可されるわけです。
それで筆頭のエリーザと新人のマリアとなったわけですね。
まあそうした内部事情は置いといて、上級貴族専用制服とやらに着替えて、マリアを従えてイグリーズ学園の校舎を歩き回ってみることにしました。
校舎は寄宿舎から歩いて10分程。廊下を歩いて階段降りて~からの~、私の教室に到着します。
途中生徒や侍女さん達と廊下でスレ違いますが、私が上級貴族だとわかると、平民や下級貴族の生徒は、ささっと避けてくれます。
う~ん、THE格差社会。
実際学校だから~なんて甘えは無いんですよね。下手に上級に対して下級や平民が何かしたら、斬首ものですから。そうした事を教えるのも、この学園であるわけですね。
さて教室ですが、本来生徒だけが入れますが、授業中じゃないのでマリアも引き連れてGOGO
私は皇女、文句あるならお父様にどうぞ~とばかりに、すいませんごめんなさい。そこまで偉ぶってません。
私のクラスは1年上級貴族クラス。名前からして格差です。
ふと見ると40人程は入れそうな教室のなかに、数人の生徒がおります。早めに到着した方々でしょうか。
金髪の少年が1人、銀髪の少年が1人、銀髪の少女が1人、ライトブルーの髪の少女が1人、それに赤毛の少女がいる。
赤毛の子は縦ロールしてたりして、あんなのマンガとかの中でしかみたことな~い。なんか大人びて見える~。でもみんな私と同じ歳のはず。
私が教室に入った途端、全員がこちらを向いてガン見してきます。なんか~目立ってる?マリアを連れてるから?
「なんだアイツ、侍女連れてるぜ。」
金髪の男の子が悪そうな顔で呟くと、それに従うかの様に銀髪の少年が卑屈そうに笑った。
「まだオシメが取れないんですよ。」
「は、一人で歩けないとか、どんだけ臆病貴族だよ。」
少年たちの言葉に赤毛の少女が顔を顰めた。
「ちょっとやめなさいよ。」
ふむふむ、悪ガキと窘める少女達って構図かな。少年たちが黙りこんだ所を見ると、赤毛の女の子が家格が上なのかな。
しっかしなんだかな~。あんたらどこの貴族じゃ。ドタマかち割るぞ。だいたい此処にいるのは伯爵以上、全員上級貴族なんだからね、下手なことを言うと、子供とはいえ首が飛ぶんだからね。
あ、だからマナー教育か。つまり奴らはまだまだマナーをキチンと教わってないと。
んじゃ教えてやりましょうか。
と思った傍からマリアが動いていた。
おいい?ちょっとマリアちゃん、それってナイフ?
「アリス様に対する無礼な振る舞い、小奴らを始末致します。」
「ひぃぃぃっ!」
マリアがナイフを両手に、小僧どもの首に当ててるって、ちょまて、まったらんかーい。あんたどんだけ行動早い。
「お待ちなさい、マリア。ナイフを収めて離れなさい。」
「はっ、お心のままに、」
私が叱るとマリアはナイフを服の中へと戻して、数歩下がった。
「な、なんだ、なんなんだよっ!」
金髪小僧がマリアと私を交互に見て怒鳴りつける。
「ひぇぇぇぇ……」
銀髪小僧はその場にぺたりと尻もちを付いている。
「貴様、許さん、許さないぞ!俺はキルギス侯爵の息子だぞ。」
あそう……だから?
「皆さん、お初にお目にかかります。これから5年間、共にこの学園で学ぶこととなりますので、よろしくお願い致しますね。」
金髪小僧の怒鳴り声を無視して、スカートの端をチョンと持ち上げて軽く会釈する私。
「てめっ何無視してんだよっ!」
煩いな~。
「国王ヴィクリーヌ=アマディス2世が娘、アリス=ルイーザと申します。」
「こ、皇女様っ」
赤巻ロールの少女が驚いた。
「こ、こうじょ……」
金髪小僧が唖然としている。
おーおーこりゃ面白い。
「し、失礼いたしましたっ、私マグダナル公爵が娘ベルティユと申します。」
「わ、私は──」
と慌てて少女たちが次々に挨拶してくれた。
最後に固まってた小僧と、へたり込んでいた小僧。
「お、おれ、いや私は─」「キルギス侯爵のご子息ですね。覚えておきます。」
私が遮るようにいうと、びくっと顔を強張らせた。あ、ちょっと泣きそう。うーん、楽しいけど相手は子供だし、もういっかな。
「は、はい、ジェラールと申します。」
涙目でだらだらと汗かいちゃって、なんか可愛いわ~。
「皆さん、明日からどうぞよろしくお願い致しますね。」
私がニッコリ笑うと、全員「ははーっ」と頭を下げた。
「そんなに畏まらないで下さい。皆さんご学友ですから、身分の上下など無しで、フランクに気軽にお付き合い下さい。」
そうして私は踵を返して教室を出て行く。
わ~~、なんか気分いいわ~~。
って一つ忘れてた。
「マリアッ!」
廊下を少し進んでから私は振り向いてマリアを見つめる。
「は、はっはい。」
慌ててキョドった顔するマリアをさらに見つめる。
「なんであんたはあんな動きができるのよっ!」
マリアのさっきの動き、あれは普通じゃない。7、8歳の子供の動きじゃなかった。私のように何年も鍛えてきた動きだ。
「え、あのえっと、」
マリアの瞳が泳いでおります。
「ちゃんと答えないと、お城に戻って貰いますよ。」
「こ困りますぅ、それだけはどうぞお許しくださいっ!」
「じゃあ、なんであんな動きができるか、正直に言いなさいっ!」
マリアはしばらく考え込んでいた。しかし諦めた様にはぁっと嘆息して口を開いた。
どうやらマリアが商人の娘、というのは嘘らしい。王立騎士団の副団長の娘で、幼い頃から武器術や体術の英才教育を受け、皇族を影から守る者の一人なのだとか。
「影?」
「は、はい、皇族の方々を影から見守り、外敵を排除致します」
「マリアはその影の一人なの?」
「ま、まだ見習いです。ですがこの度アリス様が学園に入られるということで、年齢が近い私が身近でお守りすることになりました。」
なるほど、学園内に於けるお付の者は2人まで。それで侍女となって付いてくれるというわけか。
なるほどね~。影なんて、まったく何処のアニメだよ。
ありがたいけどね。
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