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ドジな女神に不死にされました  作者: 無職の狸
第一章 今度の人生はスローライフで行こうと思ってたのに、どうしてこうなった
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<37> 貴方、日本人でしょう

ジュンヤ編として最終話です。


貴方も私も……



††


 旅は進む。

 

 途中で拾ったおかしな大貴族を仲間に、旅は順調に進んでいく。

 

 そして数日が経ち、野営で俺が見張りとして起きていた。

 

 馬車では女達が眠っている。ルミもコッペルを抱枕にして馬車の中だ。


 クリフには悪いが男たちと同じように野原に寝袋に入って寝てもらっている。


「なに、こうした旅も面白いぞ。」


 と笑ってくれているので、良しとしよう。



 見張りと言っても、周囲を見回すことはない。危機感知スキルも随分レベルが上がっているし、辺りの気配を伺っているだけですむ。


 何かが近づいてくれば、勝手にアラートが教えてくれるのだ。


 で、暇となった俺はマントの中の武器を確認する。


 武器と言っても、以前対オーガウォリアーの時に使った、ゴルフボール大の球だ。


 あれから使うような魔獣や亜人には出くわさなかったので、補充の事をすっかり忘れていた。


 オーガをぶっ飛ばしたもんだから、ニトロとレヴィが教えろ教えろ煩いので、少し実演したりしたからストック減っていた。


 残弾はまだあるが一応少し補充しておくことにする。


 胸の前に手掌を上向きに広げ、そこに魔力を集中させ、魔力の球体を作り出す。全魔力の1%、つまり100MP程を注ぎこみ、50センチ程の光球となったそれを、今度は圧縮して小さくしていく。

 

 通常初期魔術で作る火球や水球といったものが、5MP程、中級になると20MPから50MP程使うらしい。俺には魔術が使えないので、あくまで聞いた話だ。

 

 つまりこの球体には中級魔法2発から5発分が詰まっている。

 

 魔力の塊を圧縮し、ゴルフボールくらいになった所で、周囲に結界を張り、懐から出した黒い布で包んで解けない様に結界を封印して出来上がりだ。

 

 結界のお陰でめったに爆発することはない。例え剣で斬ろうが、魔法をぶつけようがね。そのため使うときにはいちいち解呪して結界を解く必要がある。


「面白いもの作ってるのね?」

「うわぁ!」


 不意に声が掛かり、俺は驚いて振り向いた。その拍子に布で包んだ球がコロコロと転がってしまう。

 

「ふ~ん、魔力弾……ってところかしら?」


 見上げると仮面を付けたアリスがいた。アリスは転がった魔力弾を摘み上げ、興味深そうに見ている。

 

「アリスさん、どうしたんですか。」


 俺はどきどきしながら尋ねた。


 アリスの言うように魔力弾なわけだが、こいつを作るときは結構集中するので、誰かが近づいても解らない時がある。危険ならアラートがなるんだけど、仲間とか危険がないときは、やばい。


「アリスでいいわ、それより、こんなの造ってどうするの?」


 魔力弾を摘み、不思議そうに尋ねるアリス。


「はぁ……まあいっか。俺は魔法が不得意なんすよ。だからこの魔力弾を敵にぶつけて、爆発せてやるんです。あんま威力は無いですけどね。」

「へぇ……威力がないんだ?」


 アリスは俺を見て、そして魔力弾を見て不思議そうな顔をしている。

 

 もしかして……

 

「この魔力弾、どう見ても中級攻撃魔法、数発分くらいの魔力が詰まっているようにみえるんだけど、それが威力がないって、随分じゃない?」


 一発で見破られた。結界で閉じ込めてるってのによく解ったな。


「え~~~と、ちょっと事情が、魔力だけは豊富なんですよ。いやあのそうじゃなくて、まあ、その魔法はほとんど……術式の展開とか上手く行かなくて~。で、考えたのが魔力弾。魔力を球に込めて投げて爆発させるってことです。」


 なにを解説してんだ、俺は~~、うわあ一気に汗かいてきた。


「そうそれはいいけど、まるで軍隊の大筒並みの威力があるんだけど。いいえ、もしかしたらそれよりも威力がありそう。」

「あはは、威力は兎も角、ヒントはそれです。軍隊が演習してるのを見て、思いついたんですよ。」

「……面白いこと考えるのね。でもこんなの持ってて爆発しないの?」


 う~~、突っ込むなぁ。俺の秘密兵器みたいなもんなんだぞ。


「魔力操作で小さな結界は作れるんで、それで包み込んで、後はトリガーの呪文を込めて、解呪しなければ爆発しないようにして、ます。」

「なるほどねぇ、ほんとよく考えてる……それでマントの下に山程吊るしてるわけだ。」

「え………」

「中には、こいつの10倍以上の魔力が込められた弾もあるみたいだけど?」


 笑みを浮かべるアリスに、俺はゴクリとツバを飲み込んだ。


「………なんで、解るんですか。」

「何故かしら、解るの。」


 アリスはニッコリとわらって、俺の隣に座った。


「お城くらい簡単に吹きとばせそうね。どこかのお城を狙っているの?」

「そ、そんなつもりは無いですよ。」


 腹の底を見透かされたような気分だ。


 この女、何者なんだ?


「私も今度造ってみるから、作り方を教えてね。」

「は、はぁ、良いですけど、危険ですよ?」

「大丈夫よ。私は天才だから。」


 何を言ってるんだこいつ。


「それよりね、其方と話しがしたいと思ってるんだけど。」

「俺と?」


 おいおい?まさかの一目惚れ、とかか?

 前世ならいざしらず、今はそんな気にはなれないぞ。


「俺なんかと2人きりで話したりして、アリスの旦那、大丈夫なのかな。」

「いいえ、まだ夫ではありませんよ。あの人は、クリフ様は……将来夫になる……かも知れないお方です。」


 アリスの頬がちょっと赤くなった様に見えるが、くすっと笑みを零した。いや完全にクリフに惚れてるだろ。


「まあ、アリスが良いなら良いけど?」


 確か前世でネットで読んでいた文献だと、中世の頃の男女、特に貴族はかなり乱れていたらしい。性に対して割りとオープンだったとか。結婚前に他の男と遊びたいのか?


「私は貴方に聞きたいだけですよ?」


 俺の思考を読んだのか、アリスの唇がツイッと釣り上がった。


「貴方が魔大陸ノスフェラトゥへと向かう理由。」

「あ、そ、そうか、そうだよな。」


 ですよね~。


 まあ仕方ないよな、誰がどう聞いたって不思議に思うよな。魔大陸へ単身乗り込むとか、死ににいくようなもんだ。


 数万の魔族と亜人の大群、それと睨み合う人間の軍隊。


 普通なら生きていられる訳がないよな。


「死にに行くつもりか?それとも、何か大事な用があるのか。どっちなのかしら?」


 仮面の下から、アリスのブルーの瞳が覗き込んでくる。


 なんていうか美人だ。仮面を付けていても、その下にある美しい顔が垣間見える。


「俺の勝手だ。」


 俺はぷいっと顔をそむけた。


「なるほど、プライバシーの侵害かな?それとも個人情報保護法に抵触する?」


 そそいまはプライバシーとか、個人情報の流出とかめっちゃ煩いから────









「え……」


 俺は言葉に詰まり、振り向いてアリスを見た。


 何いってんのこの子。なんで『個人情報保護法』なんて単語を知ってるの?


 俺が言ったからな?


 アレ一発で覚えたのか?


 仮面の下のブルーの瞳が細くなり、笑みを浮かべている。


「ねえ、貴方………日本人でしょ。」


 アリスは可愛らしい笑みを浮かべて、俺が絶句するような言葉を言う。


 当然俺は、固まった。


 アリス、お前一体……


††

いつも沢山のブクマや評価を頂き、有難う御座います。

m(_ _)m


次回より「アリス編」を最後までお届けします。

アリスに一体何が起きたのか……興味ありますよね?あるといってぇ(~_~;)


これからもどうぞよろしく、応援のほどお願い致します

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