<4> 強制引篭りから逃亡します
本日四話目です。
4歳児で引篭りと言うのは、どうなんでしょうか
††
俺は軟禁状態です。
4歳児を軟禁とか、どんな虐待?
日本だったら児相に訴えてますよ?お父様お母様。
今までは歳の割にしっかりとした子、頭も良くて親の言うことを聞いて、家の手伝いもする非常に優秀な子だと褒められ、可愛がられていた。
それがいきなり軟禁です、うちの親って過保護すぎです、ほんとーに有難う御座います。
これも偏に俺を心配してくれる故のことだと思いたいのですが、そもそも雷が落ちるのは、普通は自然現象ではないでしょうか。一生外に出るなってことでしょうか。
一生軟禁生活ですか?
強制引き籠りですか?
でも今回は自然も悪くありません。
全てはドジ女神が悪いんです。
などと反論せずに、俺は静かに引き篭ることにした。
慣れてますから。
前世では10年以上引き篭ってました。
引き籠り関してはベテランです。
でもまさか4歳で引き篭もるとは、思いませんでしたが。
クソ女神ィィィ!
俺が遊びに出れないものだから、アマンダが家に遊びに来る。
遊びたい盛りのお年頃、俺はアマンダに付き合って、だれ~もいないお家で2人であれこれと遊ぶわけです。
お医者さんごっこはしません。
だいたい俺はロリじゃねーから、そもそも幼児体型で胸もでてねーし、一緒にお風呂入ってもオッキしねーし。
でだ、遊びといってもゲーム機も無ければTVもないし、DVDなんて無くてとーぜん。
結局他愛もない話をしたり、本を読んだりしていた。
なんかね幼児とのお遊びって最初は戸惑ったけど、だいぶ慣れた。それにアマンダはやたらと抱きついてきて、頬をすりすりしたりして、これがまたスベスベでやらかいほっぺだし、勢い余ってチュッチュしてきたり、幼女とのスキンシップサイコーっ!
あ、念のため、大事なことだからもう一度言うね。
俺はロリコンじゃないからね。くれぐれも。
そうは言ってもずっとスキンシップしてるわけじゃない。一頻りスキンシップが終わると、アマンダが本を出して読めという。アマンダはまだ文字が読めないから、俺に読めということだ。
ちょっと発育遅いのかな、アマンダのご両親、ちゃんと知育教育しないとダメっすよ。
まあ俺の家も普通の農村の家庭だ。大した本など無いが、絵本みたいな物はある。俺がまだ1-2歳の時に親が読んでくれていた。
ごく一般的な寓話らしいのだが、狩人が人を喰う獣──魔獣を狩る話とか、亜人と人間の戦いの話とか、勇者の魔王討伐の様な話だとか、割りと物騒な話が多い。
大昔に悪い魔王がいて、それを討伐するために勇者が立ち上がり、戦士や僧侶、魔法使いの仲間とともに紆余曲折の末に魔王を倒す、何処にでもありそうなベタな寓話だ。
これってなにげに桃太郎とかと同じだよな。
村に桃太郎が降臨し、すくすく育った桃太郎は配下に犬と雉と猿を付けて、悪い鬼の棲む島へと到達し、鬼たちを倒して財宝を奪ってくる。
まんま勇者がパーティ組んで魔王城へ殴りこみかけて魔王を倒す。そのまんまです。
なるほど桃太郎はファンタジーの原点か!!
などと今更気が付きました。
「ユウシャって強いのかな。」
素朴な疑問を投げるアマンダ。
「やっぱ強いんじゃないかな、悪い魔王を倒しちゃうんだから。」
「へぇー、じゃあジュンヤは、アタシを悪いマオウから守ってくれる?」
「え、魔王なんていないよ?」
「いるって本に書いてある。」
「いや、本は……」
「いるのっ!」
「だから……」
と問答したところで、アマンダがほっぺをぷっくらさせて、睨んでる。こういう時には逆らうと後が煩い。涙目になったらヤバイのだ。
「うん、守ってあげる。悪い魔王からアマンダを守るよ。」
するとアマンダがにっこり笑いやがった。
「ジュンヤはアマンダのユウシャだーっ」
等と言って抱きついてきて、ほっぺたを擦りつけてくる。
とは言っても家の中での遊びなんて、毎日毎日になれば飽きてくる。だいたい俺はもうヒキニートは卒業したんだ。
三日目にして俺はアマンダを誘ってこっそりと家を抜け出した。
ちょっと言いつけ違反します、でも幼児のやることだし、許してください、ごめんなさい。
てことで、籠を持って薬草摂りに出掛けたり、川遊びをしたり、野原を追いかけっこなどをして、健全な遊びに勤しんでいた。
まあへんな称号のせいで、身体はいくら頑丈でも見た目は4歳児、そのくらいの遊びが丁度良かった。問題は近所の悪ガキども。
雷に撃たれて生き返った俺を、化物といって石を投げてきやがった。確かに普通は化物だよな~。もしかしたら大人もそう思っているのかも。
まあそれはそれでいいとして、心の広い俺はガキどもの戯れ言は聞き流すよ、うん。
でもね、石がポンポン飛んで来る。危ないな。てか一応当たると衝撃がある。防御力が狂ってるから、HPが減るようなダメージは無いけど、樹の枝かなんかで突かれてるような、地味~~なちくちく感がある。
俺は【剛体術】スキルを発動させた。発動方法は意識するだけ。それだけでスイッチが入るようにスキルが発動する。途端に石があたっても痛くも痒くもない。ただ何かが身体に触れている、その程度の感触だ。
しかしこの小僧ども、石を投げつけるとか普通なら怪我するじゃないか。俺はいいとしても、アマンダは普通の子なんだぞ。石が当たれば怪我をするんだぞ。
俺はアマンダを庇うのだけど、悪ガキどもは辞めやしない。俺の身体には石がボコボコ当たるし、アマンダは怖くて涙ぐんでるし。
アマンダを泣かしてんじゃねぇっての。後のフォローが大変なんだぞ。
ってことで、俺はケガをしないのをいいことに、勇気を振り絞って立ち向かった。自分から立ち向かうなんて何年振りかな~。いつも絡まれてばっかだったしな~。
さて、立ち向かうと言っても相手は5-6歳の子供です。見た目4歳のチート小僧が、ちょっと年上の子に立ち向かいます。
「やめろぉぉおっ!」
「なんだこのバケモノっ!」
俺は一番大きいガキに組み付いた。
「おお、こいつバケモノなのに生意気ーー」
「なまいきー」
「やっちゃえー」
いきなり袋叩きです、有難う御座います。
俺はそれでも小さな手を拳にして、ぶんぶんと振り回した。
はい、俺ってば防御は高くても、攻撃力全く無いんです。
攻撃力は普通の4歳児と同じなんです。
ってことで、相手を殴っても大したダメージなんて与えられないはずなんだが……
【剛体術】切り忘れてた。
悪ガキ共が一斉に俺をタコ殴りにするんだけど、俺はいくら殴られても痛く無い。しかし【剛体術】を発動させたままの俺は、とても硬い。まだLv.1なのだが、それでもそこそこ硬い。
つまり悪ガキどもに殴られようが、蹴られようが、俺はほとんど痛くないのだが、しかし相手は逆に結構なダメージを負ってしまう。しかも俺が振り回した手もそこそこ硬い。つまり石程度の硬さで殴られるのと同じだ。
【剛体術】Lv.1 皮膚が石のように固くなる
殴った悪ガキは最初訳が解らなかったみたいだが、数回俺を殴ったところで、腕や脚の痛みに泣き出した。
ですよね~~
石を殴ったりしたら、やっぱ痛いですよね~。
さらに俺の石の手で反撃されるから、溜まったもんじゃない。フクロにしていた悪ガキ共が、痛い痛いと涙を流して逃げていった。
なんか……全く勝った気にならない。
「ジュンヤ、大丈夫?」
悪ガキどもが逃げていくのを憮然として見ている俺に、アマンダが泣きながら寄ってきた。
「大丈夫、痛くも痒くもない。」
ふんっと一息吐いて言う。服がよれよれの泥だらけなのに、精一杯カッコつけてみた。するとアマンダの眼がさっきまで泣いていたのに、今はキラキラして俺を見ている。
「ジュンヤはやっぱアマンダの勇者だーっ」
抱きついてきて、またほっぺスリスリしてくる。
きっと袋叩きにされても、我慢してると見られたのかもしれない。そして最後はどうやったかしらないが、悪い奴らが逃げていった。
アマンダにとってはカッコ良かったのかもしれないな。
††
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