表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ドジな女神に不死にされました  作者: 無職の狸
第一章 今度の人生はスローライフで行こうと思ってたのに、どうしてこうなった
35/109

<32> 吸血鬼には真祖というのがいまして

真祖吸血鬼は死なないのです──ジュンヤと一緒~~~



††

 

「あたし、アマンダじゃないよー」

「じゃあ、名前は?」

「んーと、んーと、んーと?」


 可愛い顔をして腕組みして考え込む。そんな仕草までアマンダを思い起こさせる。


「じゃあ思い出すまで、ルミにしようか?」

「うんっ!」


 俺が言うと、少し考えてから、大きく元気に頷いた。

 

 そんな吸血鬼バンパイアと同じような名前にしてどうすんだ、縁起でもない、記憶を戻す気か!と云われたが、俺の中でこの幼女はアマンダじゃないんだ、と刻み付ける必要があるからだ。

 

 いざとなれば、辛いが、戦う時が来るかもしれないのだから。

 

「ったく吸血鬼バンパイアなんて拾って、ほんと馬鹿珍なだから。」


 レヴィが俺の隣に座って、膝の上ですーすーと寝息を立てている幼女──ルミを見つめる。


「……すまん」

「ほんと、なんか起きたらあんたに責任とってもらうからね。」


 レヴィが俺を見上げる。なんか頬が染まってるのはどういうことなんだよ。だいたいお前の言う責任ってなんだよ。


「それよりあんた、こいつに噛まれたのに、眷属にならなかったわね。」

「あ、ああ、そういえばそうだな。」

「ふ~ん、あんた怪我とかが異常に直りが早いけど、再生スキルでも持ってるの?」

「え、あ、あの……」


 レヴィがジロリと睨みつける。なんか怖いぞレヴィ。

 

「例え持ってても、吸血鬼バンパイアのは物理的損傷とかじゃないし、毒素でもないの。魔術に近いスキルなんだから、普通じゃ防げないよ。」


 マジすか?初めて知りました。


「もしコイツの記憶喪失が芝居で、こいつにその気があれば、眷属にされててもおかしくないのに。」


 不思議そうな顔をするレヴィだが、そっと細い指を伸ばすと、つんつんとルミのほっぺたをつついてにやにやしてる。

 

「……吸血鬼バンパイアのくせに、やたら可愛いんだから」


 指で頬を突くたびに、ルミがムニュムニュと反応するのが面白いようだ。

 

「うふふ、良かったら浄化の魔法かけとく?」


 リリスが言ってくれるが

 

「ありがとう、多分大丈夫だと思う。」


 スキルが超速再生にクラスアップしてからは、毒素などは自然浄化されるようになった。酒精のような物は毒と判定されないのか、無理だったが……


 吸血鬼バンパイアの眷属化が毒素じゃなく、魔法であればおそらく、魔法防御があるから大丈夫だろう。


 多分……


「しかしルミネスはあの焔で死ななかったんだな?」


 俺が言うとレヴィが困った顔をしている。


「いや、多分死んだと思う。」

「でもこうして蘇ってるんだろ?」


 それならこいつはルミネスじゃないのか?

 

「いやあたしの見立てが間違ってたんだと思う。」

「ん?」

「ルミネスは普通の吸血鬼バンパイアじゃなくて、【真祖】だったんだと思う。」

「真祖?」


 俺が尋ね返すと、レヴィはこくりと頷いた。


「【真祖】は、不死者と同じなのよ。」

「不死だって?」


 驚く俺にレヴィが吸血鬼バンパイアの真祖について説明してくれた。


 一般的に吸血鬼バンパイアというのは、浄化の焔や日光とかが弱点だし、滅する事で蘇ることは無いらしい。


 しかし吸血鬼にも階層があり、低位の吸血鬼などは、ほとんど亜人と変わらない程度の戦闘力しか持たないとか。


 逆に高位になると、高い不死性を発揮するとか。浄化の焔や日光で消滅させられるのは、階位第二位の者たちまでだそうだ。


 一般的に目撃されるのはここまでで、吸血鬼も夜にしか活動しないので、そう思われてきていた。


 しかし極まれに、数百年単位で活動する【真祖】と呼ばれる、日光の下でも活動できる怪物が出現するらしい。


 もちろんそんなレアな吸血鬼などレヴィもあったことがない。


 そのため一般的に知られている、浄化の焔で倒せると思っていたのだが、どうやらルミネスはその【真祖】だったのではないか、とレヴィは言う。


 【真祖】は吸血鬼の頂点であって、普段は人と変わらず、日光の下でも活動ができる。一応の弱点は浄化の焔なのだが、【真祖】はそれでも完全に滅する事は出来ない。


 【真祖】はある意味、完全な不死の肉体を持つという。例え死んだとしても、数時間から数日後には灰の中から蘇り、復活する。

 

 まるで俺と同じだな。

 

「完全に消し炭にしてやったのに、死んでなかった。【真祖】なら──魔核コアを完全に破壊して、止めを刺してやらないと、殺すことは出来ないのよね。」

魔核コア?」

「うん、【真祖】は体内のどこかに魔核コアを持ってるといわれるの。倒すためには、それを完全に破壊するか、あとは封印魔法を持つ人に、封印してもらうしかないのよね。」

「封印魔法か。」

「うん、上級魔術の上を行く魔術。あたしにもできないし、リリスでも無理。長年修行した僧侶とかが使えるかな。」

「なるほどね……じゃあ、魔核コアを破壊なら、俺達にも可能なのか?」

「うん、ルミネスが【真祖】だとしたら、消し炭の中で数時間掛けて、魔核コアから再構成したのよ。だけど──なんで記憶がないのかな、あんたが頭を破壊したから?」


 レヴィはいまいちよくわからないと、首を傾げていた。

 

「それはともかく、真祖となれば幼女であっても、中級か上級クラスの戦闘能力を持っているはず。気を付けてね」

「まじかっ!」


 こんな幼気な幼子に、そんな戦闘力があるっていうのか。


「それはともかく、この……なんていうか、どっからどうみても人の幼女と変わらないし……【真祖】の復活ってこういうことなのかなぁ、なんか本で読んだのと違うなぁ。」


 またほっぺをぷにぷにしながら、笑っている。


 レヴィ、お前楽しんでないか?


 しかしこんななりでそんな戦闘能力があるっていうのかな、それってどの程度って思えばいいんだ?コッペルくらいか?


 あ、そういえばコッペルが静かだ。あいつルミを見ても、吠えもしなかったんだよな。


 むしろ懐いているし、亜人や魔族が嫌いなはずなのに。今も静かに頭の上で寝てるし、さっきなんてルミと戯れていたしな。どうなってんだ?


「ともかく、すまないがこいつに関しては、俺が責任を負うから、頼む。」


 俺の胸の中で眠る幼女の頭を撫でてやると、可愛らしい笑顔で顔をすりすりとしてくる。


 ああ、なんでアマンダと同じ事をするんだ。駄目だ、涙が溢れてくる。


 そんな俺をみてレヴィは肩を竦め、嘆息してリリスに視線を向けた。

 

「一応言っとくけど………記憶が戻ったら、殺すからね。」


 レヴィは俺にそう云い捨てた。


††

いつも沢山のブクマや評価を頂き、有難う御座います。

m(_ _)m


これからもどうぞよろしく、応援のほどお願い致します

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ