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ドジな女神に不死にされました  作者: 無職の狸
第一章 今度の人生はスローライフで行こうと思ってたのに、どうしてこうなった
34/109

<31> アマンダの面影

※予約投稿が少々古かったので修正して更新しました。


幼女は世界の宝です(意味が違)



††


 翌朝、ニトロ達は頭が痛いやら気持ち悪いやら、完全に二日酔いだ。

 

 俺はというと、やはり同じく頭がくらくらとしている。酒精が抜けないのは、何故なんだぜ。

 

 俺はまだ数えで13歳だってのに──中身は+35だけどなぁ!


 奴らに無理やり飲まされて、ラッパ飲みさせられたしまった。しまいにゃ酔ったリリスとレヴィに抱きつかれて、男にしてやるだのなんだの絡みつかれて……振り切って逃げるのに苦労した。


 ほんと男も女も馬鹿ばっかだ。いや、酔っぱらいがバカなのか?そうだな酒を飲む奴がバカなんだ。


 前世じゃ常に独り酒でしたが、何か。



 兎にも角にも報奨金を貰わないと始まらない。ってことで、頭痛と吐き気に襲われながら、俺達は狩人組合ハンターギルドに向かい鑑定結果を聞いた。


 間違いなくオークウォリアーの角で有ることが確定し、無事に報奨金を貰った。もちろんポーンの分の追加報酬も。


 報奨金は金貨6枚、加えて角の代金が銀貨40枚。一本銀貨20枚だとか。これに加えてポーン25匹の討伐報酬として金貨2枚半金貨1枚──但し角込み。

 合計金貨8枚と半金貨1枚に銀貨40枚と、結構な額となったが、ニトロはポーン25匹の代金にしては、ずいぶん安すぎると怒っていたが、まあいいじゃないか。

 

 これ以上やるとモンスタークレーマーになりそうなニトロを抑えつけ、俺たちは厩舎へと向かった。馬車と馬を買うためだ。


 でも馬車なんて注文で造るんじゃないのか、と思っていたら流石大都市、売ってた。


 この街は貴族も多いが商人連中も結構多いとかで、荷運び用の馬車とか幌馬車辺りは、いつも在庫を置いとくそうだ。


 理由はすぐ壊れるから。


 貴族用とか大商人が使うような立派なものは、注文で作ることも多くて、時間が掛かるが、雑多な荷運び用や人運び用の安いものは、いつでも用意しているようだ。

 

 何しろ移動中に魔獣に襲われたり、盗賊に襲われ事もある。廉価な馬車はそれなりに売れ筋なんだとか。


 で選んだのは10人が乗れるタイプで、キャラバンという大型馬車。荷台の上に幌があり雨風が凌げ、横座りの椅子が付いている。板で造った椅子には柔らかそうな、布製のクッションが敷き詰められていて、なかなか乗り心地が良さそうだ。大人数の長旅用ってことかな。


 荷台は荷物を置く場所もあり、中々広い。これなら数人なら中で寝ることもできそうだ。


 これが金貨3枚と銀貨30枚。馬を2頭用意して金貨2枚。合計金貨5枚と銀貨30枚が吹っ飛んだ。

 

「でーじょぶでーじょぶ、ノスフェラトゥにお前を送った後、王都までいって売り飛ばせば半額以上にゃなるからよ。」


 とニトロは笑っていたが、昨夜飲み過ぎて散財したこともあり、結構懐に響いてるんではないか。顔が引き攣ってたぞ。


 やっぱこいつ馬鹿かもしれない。


 後は宿屋に置きっぱなしの荷物を積み込み、昼飯の後に俺たちは街を出た。


 因みに御者はニトロがやることになった。


「何故俺が~。」と泣き叫んでいたが、全員が無視していたのは何故なんだろう。



◇◇



 街をでて数時間。


 馬車での移動は、それなりに乗り心地は悪くなかった。

 

 ゴツゴツと跳ねるが、椅子には厚めの布で造ったマットが敷かれており、尻が痛くなるのを少しは軽減してくれる。

 

 しかしそれでも痛いのは痛い、剛体術にしてみたが、余計に衝撃が来やがるから却下。

 

 てことで、休み休みの旅は致し方無いのだが、我慢できない奴がいる。


「オシリイタィーーッ」

 

 ルミが顔を歪ませ、小さなお尻をさすりながら、俺に抱きついてきた。


「うるせぇ、我慢しやがれ」


 ニトロが怒鳴りつけると、俺にしがみついたまま振り返り、御者台に向けて舌を出して顔を顰めた。

 

「生意気ばっか言ってんと、ガキだからって殺すからなっ!」

「ベーーーッ」

「勘弁してやれよ。まだ子供なんだから。」

「うっせー、乗せてやってるだけありがたいと思いやがれ。」


 俺が窘めても、辛辣な物言いをするニトロ。

 

 それは別にニトロだけじゃない、他のメンツも、まんじりともしない視線を赤髪の幼女──ルミに向けてくる。


 俺はみんなの視線を浴びせられ、顔を引きつらせて笑った。

 

 しかしまぁ気が強いというかなんというか、幼いなりをして、ニトロに勇敢に立ち向かうのは、やはり魔族だからだろか。


 そうこの幼女──ワインレッド色とも、クラレット色ともいう髪の色に、赤い瞳の幼女ルミは、一昨日俺たちが倒した、ルミネスという名の吸血鬼バンパイアだ……多分。


 何故こんな幼女姿なのかはよく解らない。それに記憶を失っているようだ……芝居じゃなければ。名前も思い出せないらしいので、俺がルミと名付けた。


 ルミは森の中の街道を彷徨っていたところで、俺たちと出くわした。


 魔獣が彷徨く街道に、幼女が一人いるのを見て、俺はもしや両親の乗る馬車が盗賊か魔獣か亜人にでも襲われたのかと、慌てて走りよって、拾い上げた。


 ルミは記憶の殆どを失っているようだった。もちろんその容姿から、最初は吸血鬼バンパイアだとは解らなかった。


 そして俺はルミを見て、多分平常心を失っていたと思う。

 

 俺の完全な失態だが、ルミの幼い姿に、幼かった頃のアマンダを見出してしまった。

 

 赤い髪、クラレット色の髪の色かも知れない。ふっくらとした顔かもしれない。


 アマンダはここまで幼くはないはずなのに、だが、だが………幼い時のアマンダに似ている。似ているどころか生き写しだ。

 

「あ、、アマンダ、、、」


 感情が先走ってしまったというべきか、無防備に抱きしめてしまった。


 そのとき首にチクリと痛みが走った。


 牙が突き刺さり、血が吸われたのが解った。


「なっ!」


 思わず俺は幼女を引き剥がした。だが幼女は、俺に向かって満面の笑みを投げつけたのだ。屈託のない、なんの悪意も敵意もない、こういう時、なんというのだろう。


 純粋無垢の笑顔……


「その子を放り出して!そいつは吸血鬼バンパイアよ!」


 怒鳴りつけるレヴィの声が響いた。ああ、わかってるこの子は吸血鬼バンパイアだ。唇から滴る俺の血、笑った時に見えた牙。紛れもない吸血鬼バンパイアだ。


「美味しかったぁ♪」


 腹が空いていたのか……

 

 笑みを浮かべて再び抱きついてきた。今度は胸に顔を埋め、そのまま小さな寝息が聞こえてきた。


 眠ってしまった。


 警戒も何もない、ルミは自分の全てを俺に委ね、眠ってしまった。


 こいつは吸血鬼バンパイアだ。恐らくルミネスが復活したのだろう。だがこの油断した姿は何なのか。


 訳が解らない。


 ただ俺は……俺は、自然にこの幼女を壊さぬように、ただただ優しく抱きしめていた。


「あ、あ、あああああ、、、、」


 目から溢れ出る涙と共に声が漏れた。


 数年間探し求めていたアマンダと酷似したルミを抱き、俺は大粒の涙を流した。今までずっと我慢していたモノが、濁流となって溢れだしてくる。

 

 ずっと我慢し、ずっと耐えていたのに、止めどない感情の濁流となって、ぼろぼろと溢れでてくる。


 毎夜悪夢に苛まれ、手がかりも何も無いまま、ただひたすら信じて旅してきた。壊れそうな思いを、弱音を吐いて崩れ落ちそうなのを、ずっと宥めすかして、ここまで保ってきた。


 我慢が出来なかった。


「わぁぁぁぁあ、ああ、ああぁぁぁぁ………」


「ジュンヤ、そいつを離して!」


 レヴィが血相を変えて走り寄り、凄まじい魔力を放出させながら、ルミを離せと怒鳴りつけた。


「完全に燃やし尽くしたのに、何故生き返ってきたの、今度こそ、完全に焼きつくしてやる!」


 だが俺はルミを離せ無かった。俺に全てを預け、スヤスヤと眠っている、アマンダを離すなんて出来ない。


 この時俺は壊れていたのかもしれない。


 頭の奥底では解っているのに、アマンダじゃ無いって解っているのに、離せない。護りたい、今度は離さない、そんな思いが渦巻いていた。


「引いてくれ、レヴィ。」


 刀を抜きレヴィに向けた。


「ジュンヤっ!!」


 杖から今にも魔力が放出されそうなレヴィが信じられないと唖然とし、怒りに顔を歪ませた。


「バカなことをするな、そいつは危険だ!まさかお前、血を吸われて眷属にでもなったか!!」


 ニトロも怒鳴りつける。


「俺は操られてなんて居ない、だがそんなものどうでもいい、俺はコイツを護る。誰にも手を出させない。誰にも渡さないっ」


 泣きながら、片手でルミを抱き片手で刀を構える俺に、ニトロは剣を構えたまま立ちすくんだ。


「わかってるのか、そいつはお前の探してる女じゃ無いんだぞっ!」


 ニトロの声に、俺は泣きながら頷いた。


 解っている、全部わかってるよ。


 俺は正常だ。だけど──


 俺は壊れてるんだ。止まらないんだ。


 ニトロの言うように殺すべきなんだ、解ってるんだ、そんなこと解ってるんだ。


 だが俺には出来ないんだ。


 アマンダを殺すなんて、違う、アマンダじゃない、解っているのに……でも俺には出来ない。

 

 いくら危険だと言われても、俺は首を横に振った。

 

「我儘を言ってすまん、もしこいつが何かしたら、俺が責任を負う。なんなら俺はここで馬車を降りてもいい。頼む……」


 幼女を抱きしめ涙する俺を見て、ニトロは肩を竦め、憤るレヴィの肩を叩いた。


「そいつが探してる女の幼い頃にそっくりだという、だから護りたいというお前の気持ちはわかる。だがな俺もこいつらのリーダーだ。危険な魔族を馬車にのせるわけには行かないからな。」

「ああ、当然だ。俺はここで……お前たちと別れる。」


 俺と対峙するニトロは、苦々しい顔で俺を睨みつけている。レヴィもそうだし、馬車からは皆が心配そうな顔で覗きこんでる。


 コッペルが走り寄り、俺の身体をよじ登ると、幼女の傍まで来て、クンクンと匂いを嗅ぐと、ほっぺたをペロリと舐めてから頭の上に乗った。


「あんた本気なの?」


 レヴィが苦々しそうに言う。


「済まない。せっかく馬車を買ってくれたのに、無駄になったな。俺はここで──」「ふざけるな。」


 レヴィが怒鳴りつける。


「こんなバカでも約束は約束。ニトロ、この魔族も連れて行ってやって。」

「お、おいっ」

「たった一度の依頼だけど、ジュンヤはあたし達の仲間、仲間の我儘くらい聞いてやらないで、どうすんのよっ」

 

 今度はニトロに向かって怒鳴りつけた。


「そうね、多分その子大丈夫じゃないかな~。」


 リリスが馬車から降りてきた。


「リリス、おまえまで。」

「ニトロ、私は別に勘だけで言ってるんじゃないのよ?見たでしょ、さっきコッペルちゃんが、その子の傍に寄ったのに、吠えなかったでしょ。」

「そういえば……」


 ニトロがふと考え、顎を撫でた。コッペルは亜人や魔族には敵愾心を露わにする。なのにルミにはそれが全く無かった。


「だから大丈夫よ。」


 リリスがにっこりと笑い、傍までくるとルミの頭を優しく撫で付けた。ほっぺたを指でぷにゅっとつつくと、くすぐったいのか、にたぁっと笑みを浮かべている。


「ほんと、魔族なのに悪意も殺気も感じない。寝ているからかしら、抱きしめたくなるわ。コッペルちゃんが警戒しないわけね。」


 ニトロは困った顔で、今度はグルームとゴレムに視線を向けるが、2人は肩をすぼめて顔を振るだけだった。


「ええい、しかたねーな。ジュンヤ、そいつも乗っていいぞ。」


 ニトロは諦めたようだ。


 本当に暖かい奴らだ。有難う。


††

いつも沢山のブクマや評価を頂き、有難う御座います。

m(_ _)m


これからもどうぞよろしく、応援のほどお願い致します

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