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ドジな女神に不死にされました  作者: 無職の狸
第一章 今度の人生はスローライフで行こうと思ってたのに、どうしてこうなった
27/109

<27> 油断禁物です

どれほど強くても、油断したらあきまへんで~~


※今日は3話お届けします。

††




──美味そうだ。

 

 この3人はきっと蕩けるほど、美味しいだろう。あの逞しい喉に喰らいつきたい。

 

──こいつらが恐怖に引き攣る顔を見てみたい。


 次いで後方に居る女達を見る。


 ルミネスの視線に捕われたレヴィとリリスが、途端に後退った。

 

──へぇぇ、これもなかなかぁ……


 オーガ共の様子を見に来てみたら、任務遂行前にあっけなく人間に倒されてしまっている。

 

 だが、それはそれでよかったかもしれない。あの糞オーガ共が殺されたおかげで、思わぬ食事に出会えたのだから。

 

 ルミネスの唇が釣り上がる。

 

 神官ヒーラーのエルフは男たちとそう変わらぬレベル78だが、魔術師スペルキャスターの女は、レベル92もあった。

 

──うふぁ、90台かぁぁ、フロントの将校クラスじゃない。

 

 ギラつく瞳がレヴィを凝視し、舌舐めずりした。

 

 オーガのような腐った亜人の血ではない、爪で啜るなんてことはしない。


 あの少女のように白く柔らかそうな首筋に牙をたて、脈打つ太い血管から直接温かい血液を飲みほしたい、それを想像するだけでぞくぞくとし、身体をぶるりと震わせた。

 

「決めた……まずは前菜にあの神官ヒーラーの女、それからメインディッシュに男たち。そして、そして魔術師スペルキャスターの女は……」


 目が歪み厭らしい笑みをうかべ、舌なめずりする。


「あの女は…連れて行こう。我が眷属にして、連れて行こう。めったに会えない高レベルだからねぇ……」

 

──眷属にして、奴隷にしてたっぷり堪能しよう。吸い尽くして殺さぬように、優しく少しだけ吸って、あはは、魔術師スペルキャスターの女は生きたデザートだ。

 

「デザートだ、あは、決まりだ、あはは、あはぁぁ、あはははははっ。」

 

 毎日濃厚な高レベルの血が味わえる。

 

 その状況を妄想すると、全身を陶酔が走り抜け、もう居ても立っても居られなくなってくる。

 

「あいつ、あたしを見た……」


 レヴィがゾクッと背筋を震わせると、リリスが頷いた。


「あたしも見られた。」


「こいつ俺たちを覗き(鑑定し)やがった」

「ふん、覗きピーピングかよ。」


 グルームとニトロが背後へ跳び下がり、ルミネスを睨みつける。

 

 身体を走るゾクゾクとした悪寒が、ルミネスが鑑定眼を使ったことを知らせていた。

 

「ごめんねぇぇ、貴方達がぁとっても美味しそうだから、つい見ちゃったぁ。」


 ルミネスは口角を大きく吊り上げ、人よりも太く立派な牙を見せつける。

 

「でもそこの徒手空拳の坊や………」


 ルミネスが不快そうにジュンヤを指差した。


「あ?」


 ジュンヤがいきなり指名され、何事かと睨む。


「あんたさぁ、他の4人とは釣り合いが取れないほど、随分とレベルが低いわね。」

 

 不敵な笑みを浮かべ、ルミネスがジュンヤを指差した。


「あ?」


 思わずニトロが間抜けな声を出し、他の3人もジュンヤを注視した。

 

「なにこれ、レベル61とか。他の(料理)より随分低いわねぇ、ま、雑魚(ジャンク)とは言わないけどぉ、でもなんでかなぁ、魔力がすっごい沢山あるっぽいけど。」


 不服そうなルミネスは唇を尖らせ、不思議そうにジュンヤを見た。


「ほっとけ、吸血鬼バンパイア!」


 ジュンヤは憎悪に顔を歪ませ、ルミネスに躍りかかる。


「お前の相手はこいつらで十分、かな?」


 ルミネスが笑みを浮かべ、両手を左右に広げると、足元の影が膨れ上がり、獣が次々に飛び出してくる。

 

「さあ、我が眷属達、あの脆弱な小僧を食らっておしまい?」


 10匹近い黒く大きな狼たちが、ジュンヤに向けて襲い掛かる。

 

「GURUA、、、、KYANNNNNNNN!!」


 唸り声をあげる狼が、突如として悲鳴をほとばしらせた。

 

「なに?」


 いきなりの事に驚くルミネスとニトロたち。

 

「ありがてぇ、コッペル全部食らっていいぞっ!」

「GURUAAAHHHHHHH!!!」


 狂暴そうな雄たけびを上げ、主人に襲い掛かる黒い狼にコッペルが襲い掛かり、首を引きちぎり、腹を引きちぎっていく。

 

「なんだあの生物、え、なに、かわいい?うそ、肉食獣?え?」


 凶悪そうな牙で狼たちを倒していくコッペルを見て、ルミネスは思わず見とれてしまった。

 

 そこにジュンヤが拳を放つ。

 

 金剛体で固めた拳を、ルミネスへ拳を放った。直撃すれば頭を吹き飛ばせるほどの魔力を乗せて。

 

 しかしルミネスはひらりと躱すと、ジュンヤの背後へ回った。


「あま~~い、ほんと弱いねぇ、あんた、弱いやつはさっさとくたばりな。」


 斬撃の音が響いた。

 

 背中の防具が紙切れのようにあっさりと引き裂かれ、背中に爪が食い込み、金剛体で強化された身体をあっさり斬り裂いた。

 

「がぁっ」


 ジュンヤが苦痛に悲鳴を上げ、地面を転がっていく。


「ジュンヤッ!」


 ニトロが叫び走り寄り、レヴィが魔法詠唱を始める。


「……え」


 ルミネスは立ち止った。転がるジュンヤを追わず、ルミネスは驚きの顔をしている。

 

「あたしの爪……折れた?」


 有り得ないことだった。

 

 ルミネスの爪が折れて、指から出血していた。

 

 確かにジュンヤを切り裂きはしたが、何故爪が折れたのか、理解できないでいた。

 

「……どういうこと?」


 ルミネスの目が大きく見開き、不思議そうにジュンヤを見る。

 

 当のジュンヤは背中から血を滴らせてはいるが、大きなダメージを受けてはいないかのように、ムクリと起き上がった。


 レヴィの魔力が開放され、水のドリルがルミネスを襲う。


「ジェットストリーム」


 矢よりも早く、言わばライフル弾のように、マッハに近い速度で空気を貫いて迫る複数の水のドリルだ。

 

「くっ」


 ルミネスは迫る水のドリルに反応する、だがほんの僅かに遅かった。


「ギッ」


 数本は躱せた、だが胸を腹を、そして手足を水のドリルが貫いていく。

 

 油断だった。

 

 本来は喰らうはずなど無かったのに、爪が折れた事が油断となり隙を産み、反応が遅れてしまった。


「ギヤァァァァッ」


 体中から血を吹き出し、悲鳴を上げるルミネス、しかしレヴィに対して憎悪の篭った視線を向け、傷ついた足をものともせずに走った。

††

いつもご愛読有難う御座いますm(_ _)m


沢山のブクマや評価を頂き、作者のテンションも相変わらず高いです。

((( o(`・д・´)o )))


どんどん高めてやってください。高まると一日の投稿数が増えるかと思います。

これからもどうぞよろしく、応援のほどお願い致します

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