<27> 油断禁物です
どれほど強くても、油断したらあきまへんで~~
※今日は3話お届けします。
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──美味そうだ。
この3人はきっと蕩けるほど、美味しいだろう。あの逞しい喉に喰らいつきたい。
──こいつらが恐怖に引き攣る顔を見てみたい。
次いで後方に居る女達を見る。
ルミネスの視線に捕われたレヴィとリリスが、途端に後退った。
──へぇぇ、これもなかなかぁ……
オーガ共の様子を見に来てみたら、任務遂行前にあっけなく人間に倒されてしまっている。
だが、それはそれでよかったかもしれない。あの糞オーガ共が殺されたおかげで、思わぬ食事に出会えたのだから。
ルミネスの唇が釣り上がる。
神官のエルフは男たちとそう変わらぬレベル78だが、魔術師の女は、レベル92もあった。
──うふぁ、90台かぁぁ、フロントの将校クラスじゃない。
ギラつく瞳がレヴィを凝視し、舌舐めずりした。
オーガのような腐った亜人の血ではない、爪で啜るなんてことはしない。
あの少女のように白く柔らかそうな首筋に牙をたて、脈打つ太い血管から直接温かい血液を飲みほしたい、それを想像するだけでぞくぞくとし、身体をぶるりと震わせた。
「決めた……まずは前菜にあの神官の女、それからメインディッシュに男たち。そして、そして魔術師の女は……」
目が歪み厭らしい笑みをうかべ、舌なめずりする。
「あの女は…連れて行こう。我が眷属にして、連れて行こう。めったに会えない高レベルだからねぇ……」
──眷属にして、奴隷にしてたっぷり堪能しよう。吸い尽くして殺さぬように、優しく少しだけ吸って、あはは、魔術師の女は生きたデザートだ。
「デザートだ、あは、決まりだ、あはは、あはぁぁ、あはははははっ。」
毎日濃厚な高レベルの血が味わえる。
その状況を妄想すると、全身を陶酔が走り抜け、もう居ても立っても居られなくなってくる。
「あいつ、あたしを見た……」
レヴィがゾクッと背筋を震わせると、リリスが頷いた。
「あたしも見られた。」
「こいつ俺たちを覗きやがった」
「ふん、覗き魔かよ。」
グルームとニトロが背後へ跳び下がり、ルミネスを睨みつける。
身体を走るゾクゾクとした悪寒が、ルミネスが鑑定眼を使ったことを知らせていた。
「ごめんねぇぇ、貴方達がぁとっても美味しそうだから、つい見ちゃったぁ。」
ルミネスは口角を大きく吊り上げ、人よりも太く立派な牙を見せつける。
「でもそこの徒手空拳の坊や………」
ルミネスが不快そうにジュンヤを指差した。
「あ?」
ジュンヤがいきなり指名され、何事かと睨む。
「あんたさぁ、他の4人とは釣り合いが取れないほど、随分とレベルが低いわね。」
不敵な笑みを浮かべ、ルミネスがジュンヤを指差した。
「あ?」
思わずニトロが間抜けな声を出し、他の3人もジュンヤを注視した。
「なにこれ、レベル61とか。他の人より随分低いわねぇ、ま、雑魚とは言わないけどぉ、でもなんでかなぁ、魔力がすっごい沢山あるっぽいけど。」
不服そうなルミネスは唇を尖らせ、不思議そうにジュンヤを見た。
「ほっとけ、吸血鬼!」
ジュンヤは憎悪に顔を歪ませ、ルミネスに躍りかかる。
「お前の相手はこいつらで十分、かな?」
ルミネスが笑みを浮かべ、両手を左右に広げると、足元の影が膨れ上がり、獣が次々に飛び出してくる。
「さあ、我が眷属達、あの脆弱な小僧を食らっておしまい?」
10匹近い黒く大きな狼たちが、ジュンヤに向けて襲い掛かる。
「GURUA、、、、KYANNNNNNNN!!」
唸り声をあげる狼が、突如として悲鳴をほとばしらせた。
「なに?」
いきなりの事に驚くルミネスとニトロたち。
「ありがてぇ、コッペル全部食らっていいぞっ!」
「GURUAAAHHHHHHH!!!」
狂暴そうな雄たけびを上げ、主人に襲い掛かる黒い狼にコッペルが襲い掛かり、首を引きちぎり、腹を引きちぎっていく。
「なんだあの生物、え、なに、かわいい?うそ、肉食獣?え?」
凶悪そうな牙で狼たちを倒していくコッペルを見て、ルミネスは思わず見とれてしまった。
そこにジュンヤが拳を放つ。
金剛体で固めた拳を、ルミネスへ拳を放った。直撃すれば頭を吹き飛ばせるほどの魔力を乗せて。
しかしルミネスはひらりと躱すと、ジュンヤの背後へ回った。
「あま~~い、ほんと弱いねぇ、あんた、弱いやつはさっさとくたばりな。」
斬撃の音が響いた。
背中の防具が紙切れのようにあっさりと引き裂かれ、背中に爪が食い込み、金剛体で強化された身体をあっさり斬り裂いた。
「がぁっ」
ジュンヤが苦痛に悲鳴を上げ、地面を転がっていく。
「ジュンヤッ!」
ニトロが叫び走り寄り、レヴィが魔法詠唱を始める。
「……え」
ルミネスは立ち止った。転がるジュンヤを追わず、ルミネスは驚きの顔をしている。
「あたしの爪……折れた?」
有り得ないことだった。
ルミネスの爪が折れて、指から出血していた。
確かにジュンヤを切り裂きはしたが、何故爪が折れたのか、理解できないでいた。
「……どういうこと?」
ルミネスの目が大きく見開き、不思議そうにジュンヤを見る。
当のジュンヤは背中から血を滴らせてはいるが、大きなダメージを受けてはいないかのように、ムクリと起き上がった。
レヴィの魔力が開放され、水のドリルがルミネスを襲う。
「ジェットストリーム」
矢よりも早く、言わばライフル弾のように、マッハに近い速度で空気を貫いて迫る複数の水のドリルだ。
「くっ」
ルミネスは迫る水のドリルに反応する、だがほんの僅かに遅かった。
「ギッ」
数本は躱せた、だが胸を腹を、そして手足を水のドリルが貫いていく。
油断だった。
本来は喰らうはずなど無かったのに、爪が折れた事が油断となり隙を産み、反応が遅れてしまった。
「ギヤァァァァッ」
体中から血を吹き出し、悲鳴を上げるルミネス、しかしレヴィに対して憎悪の篭った視線を向け、傷ついた足をものともせずに走った。
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