表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ドジな女神に不死にされました  作者: 無職の狸
第一章 今度の人生はスローライフで行こうと思ってたのに、どうしてこうなった
26/109

<26> レベルが高いと血がおいしいのです

レベルアップとは相手を殺し魂を吸い取ることですか?



††


 すっかりと暗くなり、静まり返った滝壺近くの平原。

 

 バチバチと音を立てて燃える、オーガウォリアーの死体、少し距離を置いて、ニトロ、グルーム、ゴレム、そしてジュンヤが、その背後には多少の距離を置いてレヴィとリリスが立っている。

 

 彼らは一様に森の近くに立つ、月明かりに照らされた美しい赤毛の少女を睨みつけている。

 

 ゴシック調の衣装をまとった、妖艶な少女。

 

「っ吸血鬼バンパイアたあ、こいつは大物だな。」

「ああ、大物だ。」

「連戦とか勘弁して欲しいぜ。」


 ニトロとグルーム、ゴレムが汗を垂らし、にいっと唇を釣り上げてる。

 

「まだ魔力はたっぷりだからね~。」


 レヴィが唇を吊り上げるが、顔は汗でぐっしょりと濡れている。

 

 雷神剣ライトニングブレードを持つオーガウォリアーにも、軽口叩きながら戦っていた連中にしては、随分と慎重に構えていた。

 

 彼らが吸血鬼バンパイアを警戒しているのは明らかだ。


 リリスはすぐにでも聖光系の魔法、特に浄化系を使えるように、用意している。

 

「グルルルルルルッ」


 ジュンヤの足元には、いつの間にかコッペルが付き添い、鋭い牙を出し、刺すような……丸くクリッとした黒い瞳を輝かせていた。


「あんたらさぁ~、美味しそうだねぇ。」


 赤い目が欄と輝き、口が三日月のように開くと、足元の雷神剣を軽くつま先で蹴り、くるくると回転させて手に取り、グサッと地面に突き刺す。

 

「こんな無粋な剣で、焦がすわけにわぁ~~いかないよねぇぇぇっ」

 

 ニタァっと歪む唇、目が爛と輝くや、一気に殺気が膨れ上がった。

 

「来るぞっ!」


 ニトロの声と共に、少女が走った。常人には目で負えない速度で。だがその動きを捉えているのか、ニトロが大剣を振り上げた。

 

「きゃぁっははははは~~っ」

 

 少女の笑い声、大剣が風を切る音、そして交差して鋭い金属音をあげる大剣と、いつのまにか伸びた少女の長い爪。

 

 片手で大剣の剣戟を受け止め、左手で躍りかかったグルームの剣戟を受け止めた。そこにゴレムとジュンヤが向かう。

 

「きゃはははははっ」


 甲高い笑い声が響くと、まずグルームが弾かれた。人のものとは思えぬ力で、グルームが吹き飛ばされ、さらにニトロが飛ばされ、ゴレムとジュンヤに向かってくる。

 

「おおおおっ!」


 構えた剣を引いて、ニトロを抱きしめ、ゴレムが転がるそばから、ジュンヤが横っ飛びになると、地を蹴り少女に向かって飛んだ。


「このぉぉぉっ」


 笑い声が響き渡るなか、ジュンヤの拳が少女に振り下ろされる。だが、目の前から少女が掻き消え、ジュンヤの頭に何かが触れたかとおもうと、衝撃が襲い、地面まで一直線に向かい、派手な音を立てて地面に陥没した。

 

「グルァッ!」


 走るコッペルが一直線に少女に食らいつこうとするが、少女の足がブンッと風を切ると、コッペルの体が吹っ飛んだ。


「ホーリーサークル」


 リリスの聖光魔法がほとばしり、光のリングが少女に向かって飛んだ。

 

「はぁっ」


 リングが近くまでくると、少女の手から黒い霧が迸り、リングをかき消してしまう。

 

 さらに黒い霧は触手を伸ばすように、リリスを包み込もうと飛んでくるが、レヴィが発した焔の壁に遮られ霧散する。


「へぇぇぇ」


 レヴィの魔法に少女が感心したかのような声を発する。

 

「くそったれがぁ。」


 ニトロが再び立ち上がり、大剣を風車のように回しながら飛び込む。


 少女の爪と大剣、さらにグルームも双剣を左右に回しながら飛び込み、大剣と双剣が少女の爪と激しい剣戟の音を、擦れ合う音を、空気を切り裂くいて巻き起こった。

 


「あは、あはははははははっ」


 2人の剣士の凄まじい剣戟の嵐に囲まれ、少女はまるで遊んでいるようでもあった。

 

 ニトロの破壊力のある大剣を片手でやすやすといなし、跳ね返し、グルームの高速剣を、尽く躱した。

 

 ゴレムのシールドバッシュにも、レヴィの攻撃魔法すら被弾する直前に無効化してしまう。

 

 ジュンヤはようやく地面から出て、なんとか攻撃に加わろうとするが、3人の戦いのなか、近づくことなどほとんど不可能だった。

 

「あははは、たのし~~~」

 

 少女が頬を歪ませると、無詠唱で唱えた無数の氷の刃がニトロを斬り裂き、グルームの足元から槍が飛び出した。

 

「わああああっ」

「うおおおおっ」


 氷の刃と石の槍に切り裂かれながらも、辛うじて避けるニトロとグルーム。

 

 ニトロが、グルームが手玉に取られている。


 これが吸血鬼バンパイアなのか。

 

 こいつら魔族はどれだけ強いのか。

 

 ケィニッヒにある程度はいけるといわれたが、目の前の吸血鬼バンパイアはケィニッヒよりも強く見える。

 

 俺より剣術スキルがあるだろう、ニトロやグルームが歯が立たないどころか、まるで相手にされていない。

 

 遊ばれているのだ。

 

「あはははははははははっ」


 ひときわ高い笑い声が響いたかと思うと、ニトロとグルームが吹き飛ばされ、地面を転がっていった。

 

 後には汗一つ掻いていない少女が、楽し気に笑みを浮かべている。


「貴方たち、とても楽しい、フロントよりも楽しい人に会えたのは、驚いた~~。この世界に来て良かったわぁ」

「……この……世界?」


 ジュンヤは訝し気な顔をした。

 

「あんた達は私の名を知るに値するよ。私は魔族の一人、ルミネスというの、死ぬまでの短い時間だけど、よろしくねぇ」


 少女──ルミネスは目を細め唇を吊り上がらせて、薄気味の悪い笑みを浮かべた。

 

「あはぁぁぁ、美味しぃ、美味しぃぃ。」


 ルミネスは爪を顔の前にすると、ニトロやグルーム達を斬り裂きいた、爪に残った血の匂いを嗅ぎ、長い舌でぺろりと舐めて味を確かめた。

 

 思わずの美味にうっとりとし、赤い瞳をぎらつかせた。

 

 ルミネスは歓喜し、ニトロたちを一人一人、値踏みするように見ていく。

 

 分厚く重い大剣をショートソードの様に振り回す男。

 

 細身の双剣を自在に操るエルフの男。

 

 実に美味しそうだ。

 

 あの糞ったれな、亜人臭漂うゼクスフェス《三面女》の頼みで、仕方なく此処まで来た。

 

 良かった。

 

 ルミネスはゼクスフェス(三面女)が自分に用事を頼んだ事に、心底感謝した。

 

 ノスフェラトゥで見かけた、レベルの高い強者に出会えたのだ。

 

 強者の血は好物だ。生暖かく濃厚で、何よりも強者の精力は自身をも強化してくれる。

 

 大剣使いの男はレベル88、双剣使いの男はレベル83、盾使いはレベル80。良いレベルだ。

 

 人のレベルは高くなればなるほど、他者を殺し引き裂き、魂を喰らってきた証だ。他の者の魂を──精力を喰らった高レベルな強者の血液は、芳醇となり喉越しが円やかになっていく。


 何よりも力が満ち溢れている。

 

 レベルの高い人を引き裂く事、迫る死に恐怖し、怯えた顔を見ること、それがルミネスの食欲をそそり、快感に繋がる。


 ズズッ


 堪らず唇から溢れる涎を飲み込んだ。


††

いつもご愛読有難う御座いますm(_ _)m


沢山のブクマや評価を頂き、作者のテンションも相変わらず高いです。

((( o(`・д・´)o )))


どんどん高めてやってください。高まると一日の投稿数が増えるかと思います。

これからもどうぞよろしく、応援のほどお願い致します

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ