<23> 雷神剣はトラウマかもしれません
神の武具は反則なのです、聞いてないぞ~~
※少々エグイ残酷シーンがあります。気分が悪くなられるかもしれませんので、ご注意ください。
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破壊的な膂力で振り回される雷神剣を、盾で受け止める度に、あたり一面に雷撃が迸り、ゴレムの体を貫き焼いた。
「ぐあぁぁ、この雷撃、俺の鎧と盾を貫きやがる。」
ゴレムが歯を食いしばり雷撃のダメージを耐えていた。鎧と盾には属性耐性の付与が掛けられているが、それすらも貫いてくる。
「なんだありゃっ!ゴレムの鎧と盾は、属性耐性が高いのに、リリス!やばいぞ、耐性を強化してくれっ!」
雷撃が雨のように降る中、ゴレムが焼かれる様をみて、ニトロは叫んだ。
「わ、わかったぁぁ!」
雷撃の範囲から離れた場所で、リリスが慌てて詠唱する。
「ふざけろっ、何で神の武具をオーガがもってやがるんだ!!聞いてねぇぞっ!」
グルームがニトロに文句を投げつける。
暴風の様に振り回される雷神剣を避け、それでも剣戟を入れていく。
一度でも剣を交わらせば、雷撃が容赦なく襲ってくる。死ぬには至らずとも、行動不能状態になるかも知れない。グルームはゴレムほど頑丈ではないのだから、それだけは避けたい。
「うるさーい、文句をいう暇有ったら攻撃しなさーい。」
レヴィが叫ぶと、ペリドット色の髪を振り乱し、杖を振り上げた。
「集え水の精霊、我が敵、醜き魔の者を穿け!」
呪文詠唱と共に、魔力がレヴィの周りで吹き荒れ、水の柱が幾つも立ち上った。
オーガウォリアーがそれに気づいたのか、視線がギロリとレヴィを捉え、雷神剣を構え動いた。
ずんずんっと足音を響かせ、オーガウォリアーが走った。
「GURURURURUAAAAOOOOOOHHHHHHHH!」
そうはさせじとニトロとグルームが剣を奔らせ、オーガウォリアーに向かう。
刹那、レヴィの最後の呪文詠唱が終わる。
「貫け、ジェットストリームッ」
杖の先から魔力が放出すると、水の柱が幾つか迸った。柱の尖端が細く尖ったかと思うと、ドリルのように渦を巻いてオーガウォリアーに向かって一直線に向かっていった。
「うぉぉ、やべえ、あんなもんぶち込んだらレヴィにターゲットがいっちまう。」
ゴレムが焦りヘイト操作魔法、ウォークライの発動準備に入る。
同時に尖端を尖らせ回転する、複数の水のドリルが走っていたオーガウォリアーを貫いた。
「GOAAAHHHHHHHHH!!!!!」
鎧を貫かれ、身体を貫通する水のドリルに、叫び声を上げてよろけるオーガウォリアー。鎧に空いた幾つかの穴から血が吹き出していた。
しかし尚も怯まずに脚を踏ん張り、剣を振り上げ、雄叫びを上げレヴィに襲いかかった。
「来るぞっ!」
ニトロが叫び、ゴレムが盾を構えた。
「対雷防御強化ッ!」
リリスが属性耐性防御を放ち、ゴレム雷属性の防御を強化した。
「ありがてぇ!こっちを見やがれぇぇ、ウォークライっ!」
ゴレムがウォークライを発動し、盾を激しく剣で打ちつける。
オーガウォリアーがゴレムのウォークライに気を取られ視線を向けると、ゴレムにむかって剣を振り下ろした。
「こいやぁぁぁっ!」
ゴレムの大盾が軋む様な音をたて、雷神剣を受け止めた途端、凄まじい雷撃が辺りに放出されゴレムを貫いていく。
「がぁぁぁぁぁっ!」
必死の形相で耐えるゴレム。
雷耐性が掛かっていても、激しい雷撃にゴレムの身体が打ちひしがれている。
そこへニトロとグルームがオーガの横から斬りかかる。
左右にジグザグに走り、雷撃の嵐を掻い潜り剣を振る2人。
俺はオーガたちをあらかた片付け、ゴレムに向かって疾走った。
「ゴレム、肩を借りるぞっ!」
「おおおおおおおっ!」
雷撃に耐えるゴレムに怒鳴りつけるや、ゴレムの肩を踏み台にして宙に舞った。オーガの視線が俺を捉えるが、剣はゴレムの盾に喰らいついてギリギリと軋む音がたてている。
ウォークライの効果時間はあと数秒。
雷撃の降り注ぐ中を跳躍し、オーガウォリアーの頭を超えた所で両手の剣を振り上げた。途端に辺りに降り注いでいた雷撃が直撃し、俺の身体を突き抜けていく。
「がぁぁくそがぁぁぁあああ!」
雷撃の衝撃に耐え、奴の角と角の間に狙いをつけ、頭頂部に向けて剣を叩きつけた。
バキンッ
鈍い音がして兜がバックリと割れ、剣が頭を直撃し血が迸る。だが僅かに皮膚を切っただけだ。こいつは並みのオーガに比べてやたらと硬くできてやがる。
「こなくそぉぉぉっ!」
俺は右手を剣から離すと、拳に魔力を溜めて、渾身の力で剣に叩きつけた。
──爆裂拳
拳から迸る魔力が剣を伝って、奴の頭蓋に到達する。グシャリと嫌な音がしたかと思うと、頭蓋骨が破裂して、噴水のように血が吹き出し、割れた頭蓋骨の間から、破壊された脳漿がドロリと滴った。
「GIGYAAAHHHHHHH!!!」
オーガウォリアーが頭頂部から、血の噴水を立ち昇らせ仰け反る。俺は振り落とされる前に離した剣を掴み、仰け反った首めがけて剣を突きだした。
だが同時に盾から外れた雷神剣が、俺に向かって突き上げてきた。
俺を串刺しにしようと突き上げた雷神剣が、俺の胸を捉える。
──くそ、魔力が足りなかったか。
時間があまりに少なすぎた。刹那の時間では拳に集めた魔力も、それほど多くはない。奴の頭蓋と脳の一部を破壊するだけで終わってしまった。
もっと時間があれば、オーガウォリアーの頭を吹き飛ばしてやれたのに。
いやそんなことより今の状況だ。
剣先が胸当てに突き刺さり、胸当ての鋼板が斬り裂かれ、【金剛体】を掛けている俺の胸に当たっている。
ほんの僅かな時間ではあるが、俺は目まぐるしく思考し、今置かれている状況を分析する。
──まじか
俺は思う。この雷神剣ってのはなんて斬れ味なんだ、と。
俺の【金剛体】スキルは剛体術をレベル50まで上げると発動できる上位スキルだ。レベル1ですでに鉄以上鋼の硬さを持つ。
俺の金剛体はレベル3に達し、それは俺の皮膚の硬さを鋼の剣以上、魔剣や魔法強化された鎧レベルにまで高めているわけだ。
だがその皮膚が呆気無く切り裂かれ始めている。
剣先が鋼鉄以上の硬さを持つ皮膚を斬り裂き、徐々に肉に食い込み始めている。
鋭い痛みと共に剣が胸に突き刺さり、肋骨を貫き心臓付近まできたところで、雷撃を迸らせた。雷撃が俺の身体に流れ込んできた。
「$#%&#$」
声にならない声が迸る。
身体が破裂しそうになり、思考が吹っ飛びそうになる。もちろん雷耐性は上げてある、だがこの強烈な雷撃はいったいなんだ。
魔法剣士が剣に雷を乗せた程度じゃない。
思い出した、こいつはアイツと同じだ。そうだ、三面六臂の女──アスラが持っていた剣だ。
亜人もろとも雷撃で討滅し、俺を殺した剣だ。
──何故オーガが持ってやがる。
何故だ、何故なんだと考える間もなく、思考がブツッと途切れた。
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