<18> 鍛えまくって死にました
むちゃな鍛え方しても、死んでも大丈夫って素晴らしい♪死ぬほど痛いけど……
††
アマンダを助ける、とは言っても絶対助けられるかと言えば、正直自信がない。俺はケィニッヒの言葉に従う事を決めた。
ケィニッヒは村はずれに家を持ち、日々を狩人として暮らしていた。
俺は彼の元で剣術、魔術を習った。彼は魔法剣士でもあり、防御を無視した高速戦闘を得意としていた。それは俺にも当てはまる事だ。
鑑定眼を持つ彼は、俺の常識はずれの防御力とステータスを見て驚愕し、彼の持つ戦術をとことん教えてくれた。
なにせどれだけ斬られても死なないし、仮に死んでもしばらくすれば蘇るのだ。これほど加減無しに教えられる相手は居なかっただろう。
ここで知ったのだが、俺は魔力が使えなかった。
いくら教えこまれても、初級の所謂生活魔法程度しか使えなかった。
ケィニッヒに云わせると、魔術はある種才能が必要らしい。才能があるものは宮廷魔術師並みに、またはそれ以上に使えるようになるが、無いものはどれだけ努力しても使えないし、せいぜい生活魔法が関の山だ。
俺は無い方に属していた。
同様に、俺は属性攻撃に対する耐性が殆ど無かった。
属性攻撃─武器に属性魔法を組み込み攻撃する。アスラが使った属性武器を使った攻撃のことだ。
俺はこの攻撃に対しての防御が無かった。魔防──魔法攻撃防御のスキルはあるが、属性攻撃は魔法攻撃の範疇には入らないらしい。
ドジ女神め、やっぱりやらかしてくれたぜ、完全な罠だ。
しかしステータスを見ると、属性耐性スキルが多少上がっていた。
ケィニッヒは魔族と戦った時に、攻撃を何度も受けたから上がったのだろうと言っていた。
あの時は高速で繰り出された攻撃を、何十度となく受けたのだから、少しは上がるのも当たり前か。
「んじゃその情けないオマケ程度の耐性を、とことん上げちまうか。」
そう言ってケィニッヒがにやりと満面の笑顔を浮かべた。
なんだそのうすら厭らしい笑みは。俺はそっちの毛は無いぞ。
ケィニッヒの趣味は兎も角、訓練はまずは属性耐性を上げる事から始まった。属性耐性を上げる事に寄って、俺の防御はより堅牢なものになる、とか。
ケィニッヒは魔法剣士であることから、剣術の稽古の時には必ずこれらの属性剣を作り出し、俺を攻撃した。
普通に攻撃されても殆どダメージを受けないのに、属性剣で打ち込まれると、皮膚が斬られ肉が斬られ、HPが見る見る減っていく。
ケィニッヒは強かった。俺がどうやっても打ち込めないのに、凄まじい速度の剣戟を繰り出し、アスラにも匹敵する威力の属性剣を容赦なく打ち込んできた。
みるみる削れていくHPと、時折見えるスキルレベル上昇のメッセージを見ながら、凄まじい激痛の中で俺は死んだ。
そして蘇る。
それを見てケィニッヒは面白がっていたが、悪いが玩具じゃない。おまえ、もしかして楽しんでんじゃないか!さっきの厭らしい笑みはこれかっ!
と攻撃する間もなく、また死んだ。何度も死んだ。一日に数回どころじゃない、10回は死んだ。
因みに死んでから蘇るまでに、およそ一時間程度の時間が掛かるようだ。
「死んでも生き返れるなんて甘えるなよ。それを知ってる奴が、お前を殺して地中深くに埋めたり、牢屋なんかに閉じ込めたらどうする。蘇れても死んでるのと同じだぞ。」
ケィニッヒの言葉は勉強になる。
もともと戦闘なんか素人の俺には、耳の痛い事ばかりだ。流石に引退したとはいえ、戦場を生活の場にしていた戦人は違う。
これはかなり後で解ったことだが、ケィニッヒは王立騎士団の傭兵として活躍したが、隊長格に匹敵する腕前だったそうだ。数多くの魔族を切り捨て、魔族の幹部クラスともやり合えたということだ。
戦場からの生還者、歴戦の強者ということだろう。
だから俺なんかが一太刀入れることすら、難しかったわけだ。
いったい何度殺されたことか、数えるのは100回で辞めた。
日に何度も殺されるが、回数は日を積み重ねるごとに、徐々に減っていった。
俺も意地になっていたのかな、なんとかこのオッサンと対等に戦いたい。そんな思いが、俺が死ぬ回数を減らしていった。
ケィニッヒの基で修行を始め、2年半の歳月が流れ、俺は数え12歳になっていた。
殺される事が無くなり、打撲を受けることも無くなっていた。
「行くのか。」
尋ねるケィニッヒに俺は首肯する。
ステータスはかなり上がったが、レベルはそれほど上がらなかった。訓練ばかりで偶に飯の種の魔獣を狩る程度では、そんなものかもしれない。
だが俺は確実に強くなっていた。
手も足も出なかったケィニッヒと、対等以上に戦えるほどには強くなった。
鑑定眼で見たケィニッヒはLv.85、俺の倍以上のレベルだ。だが例えレベルは低くても、俺のスキルとスタータスはケィニッヒとほぼ同じか、それ以上になった。
「いまなら魔族ともやりあえる、幹部クラスと相まみえても生き残れるはずだ。」
とケィニッヒのお墨付きを頂いた。
ただそんな百戦錬磨のケィニッヒにしても、アスラやデュラハンといった魔族にはあった事が無いらしい。
恐らく普段は出てこない、最高幹部クラスか上位種族ではないかという。
「魔族ってのがどんな暮らしをしてるかさっぱり判らん。最前線で戦う将軍なら、多少は知ってるかも知れないな。あっちに行ったら、まだマークってのが現役だったなら、俺の弟子だといっとけ。良くしてくれるはずだ。」
強いとはいってもケィニッヒは所詮傭兵であり、作戦を与えられ突撃して殺戮するだけだ。さらに上位の作戦ともなると関わることは殆ど無い。そのため魔族が潜む大陸を、どうやって攻略するかまではわからないらしい。
噂によると魔王城なんてのがあるとか無いとか。やはり魔王がいて、アスラやデュラハンとかは幹部魔族なのかな。
四天王の一人とか?俺は四天王の中でも最弱!とかか?
知るか馬鹿野郎。
魔王城とかあるなら、俺は魔王を倒さないとアマンダを取り返せないのかも知れない。
いやいやまずは救うことだ。
倒さずとも救出だけして逃げればいい。魔族をぶっ殺す前に、アマンダを取り返すのが先決だ。
魔族を殺すのはアマンダを安全なところに送って、それからでも遅くはない。
だけどもしアマンダが死んでいたら……
魔族を根絶やしにしてやる。
「ジュンヤ、いくら属性耐性が無かったとはいえ、防御力マックスを突破するとか、三面六臂の奴はかなりとんでもない奴だ。そいつは恐らく俺以上に強いかもしれねぇ。そいつらとやるときは心して掛かれよ。」
考え込んでいたらケィニッヒに注意された。
「解ってますよ、師匠。」
解っている。ケィニッヒと暮らしたこの2年半で、俺は自分の弱さとケィニッヒの強さを痛感した。だからこそ死に物狂いで強くなった。
「此処を出たら北西に行け。ノスフェラトゥに渡れば魔族と人の最前線がある。そこを突破したあとは、俺にも判らん。」
ケィニッヒの言葉に頷き、俺はアマンダを取り戻すための旅に出た。
ジュンヤ
【種族】人種
【年齢】12歳
【状態】普通
【Lv】45
【HP】9999
【MP】9999
【SP】9999
【最大攻撃力】2822
【最大防御力】99999
【最大魔法攻撃力】598
【最大魔法防御力】99999
【最大回避】4619
スキル
【剣術】Lv.63
【拳術】Lv.91
【蹴術】Lv.82
【体術】Lv.72
【回避】Lv.73
【隠密】Lv.56
【危機感知】Lv.31
【属性耐性】
【土耐性】Lv.40
【氷耐性】Lv.52
【炎耐性】Lv.51
【風耐性】Lv.45
【雷耐性】Lv.36
【闇耐性】Lv.16
【状態異常耐性】Lv.40
【採取】Lv.16
【調合】Lv.10
【鑑定眼】Lv.3
【超速再生】Lv.1
【剛体術】Lv.46
【予見】Lv.7
【縮地】Lv.26
【闘気法】Lv.41
【鬼神呼気法】Lv.42
【魔操法】Lv.43
称号
【剣聖】
【拳聖】
【陽炎】
【狩人】
【不死神】Unknown
※注釈
【剣聖】
剣術スキルが達人の領域に達した証。
称号によって付与されるスキル:【闘気法】Lv.10
【拳聖】
拳術スキルが達人の領域に達した証。
称号によって付与されるスキル:【鬼神呼気法】Lv.10
【陽炎】
回避スキルが達人の領域に達した証。
称号によって付与されるスキル:【縮地】Lv.10、【予見】Lv.1
【剛体術】
体表を石の様に硬化させる。
最大レベルで鋳鉄程度(ビッカース硬さで150程度)
【再生】
ちょっとした回復魔法を常時発動程度の治癒能力。
レベル上昇により治癒力が上がる。
【身体強化術】
筋力や肉体硬度を固め攻撃力と防御力を上げ、常時最大防御力を発動させる。
【状態異常耐性】
状態異常魔法による、毒、麻痺、混乱、暗闇、などを緩和する
行使された魔術とのレベル差により相殺される。
【闘気法】
闘気を纏い攻撃力と防御力を上昇させる事ができる。
【鬼神呼気法】
特殊な呼吸法で攻撃力と防御力を上昇させる事ができる。
※闘気法と鬼神呼気法は重ねがけ可能
【縮地】
瞬時に相手に近づく特殊な歩法
【予見】
相手の筋肉の動きや眼の動き等から次の動作を予測する。
予知能力ではない。
【魔操】
魔力を操る法術。いわゆる魔力操作術。
††
いつもご愛読有難う御座います
活動報告にも書きましたが、ジュンヤ編はここで一旦お休みしまして、次回からアリス編になります。
アリス編は1話幕間を挟んで、学園編が始まります。
ジュンヤ編にも出てきた、王立イグリース学園ですね。転生者にして皇女アリスの波乱の学園生活が始まりますです。
日間ランキングも5位を頂きました。いつもご声援有難う御座います
もう感無量なのです。満足してエタりそうですが、まだまだ物語は続きます。
どうぞよろしくお願いしますm(_ _)m
4/8 ステータス表記やスキルの一部が解り難いため、修正いたしました。