表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ドジな女神に不死にされました  作者: 無職の狸
第一章 今度の人生はスローライフで行こうと思ってたのに、どうしてこうなった
12/109

<12> 笑わないで下さい

頭の上のモフモフしたものは、何処にいっても可愛いのです。



††

 

 狩人組合ハンターギルド

 

 領主や市井の民から様々な依頼を受領し、狩人ハンターに依頼を提示する組織。

 

 本部を王都に持ち、リステア大陸全域に支店のネットワークをもつ巨大組織。

 

 受領する依頼の内容は薬草の採集から魔獣、亜人の討伐まで受け付けている。

 

 依頼の受領はハンター認識票ドッグタグを持つものならば、誰でも受けられる。

 

 以前は狩人ハンターだけにハンター認識票ドッグタグが配布されていたが、近年では魔術師スペルキャスター神官ヒーラーでも、申しこめばハンター認識票ドッグタグの発行が行われ、依頼の受領が可能となった。

 

 一部の狩人ハンターから全てひっくるめて【冒険者】でいいだろう、という話しが出てきているのは、そうした所にも理由がある。

 

 これらの風潮を、識者たちは将来騎士団や宮廷魔術師に入らず、自由に生きたいという、意識が高まっているからではと分析している。

 

 

 

 先ほど酒場でニトロと話していた、顔に幼さを残すマントを羽織った少年は、ハンター組合ギルドの建物の前にいた。

 

 両開きのウエスタンスタイルの扉を開き一歩入ると、組合ギルドの中をじろりと一瞥する。

 

 入って右手には組合ギルドのメインとも言える、大きな掲示板が置かれていた。掲示板には十数枚の羊皮紙が張りつけられている。それぞれの羊皮紙には、依頼内容と報酬金額が書き込まれている。

 

 

 左手には丸テーブルが幾つか置かれ、武装した男女が酒を片手に話している。その奥には酒棚を背にしたカウンターが有った。

 

 基本的に組合ギルドでは酒は提供するが、食事は提供されない決まりがあるが、小さな街では食事も提供する組合ギルドも有るようだ。

 

 そして正面奥には事務カウンターが配置され、事務員が数人忙しく動いている。

 

「だからさぁ………ぶふはぁぁっ!」


 エールを飲んでいた女が、向かいの武装した男に向かって吹き出した。

 

「おぃぃ、てめぇ、何しやがる!」


 おそらく狩人ハンター仲間なのだろう、今しがまで歓談していたのに、急に顔にエールをぶちまけられれば、怒りもするだろう。

 

「ごめ、いやだって、あれ、あれ、あはははは!」


 女は笑いながら入り口を指差した。

 

 もちろんそこにはマントの少年が居る。ボサボサの髪にしがみつく茶色いヌイグルミを載せた少年が。

 

「「「「わはははははははっ!」」」」


 途端にアチラコチラから笑い声が上がるが、少年は気にもせず、いや少しぶすっとした面持ちで組合ギルドの中へと進んでいった。


 少年は掲示板へと向かうと、ざっと見た後に舌打ちし、奥の事務カウンターへとむかった。

 

「買い取りを頼みたい。」


 カウンターの中にいる銀色の髪にの受付の女性に言うと、女性が顔をあげて少年をみた。

 

 最初朗らかだった笑顔が微妙に歪み、頬がぷくっと膨れると、顔を反らして思い切り咳込んだ。そしてもう一度振り向くが、完全に眼が笑っている。


「ひゃ、ひゃい、げほん、おほん、か、買い取りですか?ぷっ、受け付けて、おりまひゅ。あはははは。ごめんなさい……」


 受付の女性事務員の回答は明快だった。笑いながらだが。

 

 少年が某かの魔獣を仕留めて持ってきた、それを買い取ってくれということだと直ぐに察していた。

 

 だが笑いが止まらない。

 

 傍目から見ても面白いのに、面と向かうとモフモフと顔がバッチリ合ってしまい、うるうるした黒い瞳と小さな顔が可愛らしいやら、少年の恰好にアンマッチし過ぎて、おかしいやら、腹が捩れる思いだった。

 

 ちなみに組合ギルドでは魔獣の買い取りは多い。組合ギルドのメインとも言える仕事の一つが、狩人ハンター達が仕留めてきた魔獣の買い取りだ。

 

 依頼ではなくとも、魔獣はよく履ける。肉や皮、牙や角といった区分けをして、それぞれ必要としている業者に卸すのも、彼らの仕事だ。もちろん手数料を上乗せして、業者に売るわけだ。


 少年は《保存袋》をカウンターに乗せると、中から様々な魔獣の肉や皮、牙、爪などを出していく。受付の女性事務員も手際よく魔獣を査定していった。笑いを堪えながら。

 

 少年が持っている《保存袋》は洗礼等で狩人ハンターの称号を受けた時にもらう、《布袋》の上位互換の魔具だ。《布袋》以上に得物を詰め込む事が可能で、中に魔法で小さな空間を作っているため時間経過も無く、得物を腐らすこともない。


 かなり高価なものであり、なかなか新米の狩人ハンターが買えるものではない。これを持っているだけで、この少年が手練の狩人ハンターで有ることを物語っていた。


 カウンターに魔獣の肉が積み上がると、頭の上のモフモフがぴょんと立ち上がり、食らいつこうと飛びかかる。

 

「おめーの飯じゃないっ!」


 モフモフが飛びかかる寸前で、少年がキャッチして、抱きかかえた。

 

「くーくーくーっ」


 鳴くモフモフに向かって少年は、鋭い眼差しを向ける。

 

「この食いしん坊が。」


 言うと嘆息し、カウンターに積み上がった肉を幾つか戻した。


「後でだからな。」


 少年の言葉に、モフモフはにっこり笑った様に口を開いた。


──か、可愛いっ


 それを見た女性事務員は、胸がキュンとなる思いだった。

 

「悪いな肉はこいつにとっておくから、すまん。」

「いえいえ、問題無いですよ。」


 小汚い浮浪者か乞食の様な少年に抱かれた、可愛らしいモフモフした生物。女性事務員は思わず掴みとって抱きしめたくなる。


 しかし仕事はしなければいけない。気を取り直して査定額を少年に告げる。


「沢山ハントしてこられましたね、査定では金貨2枚銀貨34枚、銅貨21枚になります。」

 

 結構な金額ではあるが、オーラグリズリーの皮が3枚も入っているのだ。1枚は残念ながら損傷が酷いが、他の2枚はしっかりしている。これだけでも値が張るシロモノだ。


 女性事務員はにっこりと笑い、少年は査定に納得したのか首肯した。

 

「それでは認識票ドッグタグをお願い致します。」


 少年は首に掛けたハンター認識票ドッグタグを外して差し出した。

 

 女性事務員は認識票ドッグタグを受け取ると、管理基盤チェックボードと呼ばれる四角い基盤ボードの上にハンター認識票ドッグタグ置いた。

 

 少しの魔力が放出され、直ぐに認識票ドッグタグが少年の記録と名前、年齢がパネルに表示される。

 

 女事務員はパネルを見て驚きを隠せなかった。

 

 こなした依頼の数も凄いが、何よりも驚くのはこの少年がまだ13歳だということだ。

 

 女性事務員は目を見張るが、直ぐに冷静さを取り戻して、認識票ドッグタグを少年に戻した。

 

「ジュンヤ様、失礼ですが記録を見ますと、随分と活躍されておられるようですね。」

「………」


 少年──ジュンヤは口を開かず、小さく首肯するだけに留めた。

 

「しばらく滞在なさります?」

 

 事務員の言葉にジュンヤはちらりと彼女を見た。

 

 銀色の髪にくりっとした大きな瞳。なんともふんわりとした17歳位の女性だと気がつく。


「こちらの街には初めて来られたようですから?」


 云われて改てジュンヤは首肯した。


「今日初めて来た。2ー3日は滞在するが、長居はしない。」


 ジュンヤは目を反らし応えると、女性事務員はニッコリ笑う。

 

「そうですか……これだけの狩猟記録がございますから、もしよろしければ、特別な依頼がありますので、いかがかな、と思いまして。」


 またジュンヤはちらりと彼女を見た。その顔にはこの女何を云ってる、そんな雰囲気もあった。

 

「ちょっと難しい依頼でして、なかなか人が集まらないんです。よかったらご検討いただけませんか?」


 そこで初めて合点が云ったように、ジュンヤは目をつぶり頬を緩めて顔を横にふった。酒場で話しかけてきた男が言っていた依頼かと、理解する。


「悪いが興味はない。」


 ジュンヤはさっさと金袋へ金を仕舞い込み、女性から顔を背けた。

 酒場の方からの視線にふと顔を上げる。幾つかの視線が膨れた金袋をジロジロと見ている。ジュンヤはよくあることだと、気にもせずに組合ギルドのドアへと向かった。

 

 粘っこい視線を背にしながら。

 

††

本日は三話更新いたしました。


ブクマや批評、有難う御座います。

日間ランキングにも載れまして、青天の霹靂というか女神の雷というか、かなりテンションが跳ね上がりました。


コレに懲りずにブクマや批評をしていただけると、ますます調子にノリますので、よろしくお願いします


m(_ _)m


そしてどうぞ稚拙ではありますが、本編をお楽しみいただければ、何よりの励みとなります。


どうぞ宜しくお願いします


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ