<M10> 超級爆裂拳
ジュンヤvsスケルトンドラゴン、決着。
††
骨だけとは思えない超重量。いったいこいつ何トン有るんだ。
体中の骨がひしゃげそうになる。さらに骨と思えないすばやさで続いてストンプ。
うげぇ、ぬけ出すタイミングがとれない、マジやべぇ。さらにストンプ。ついでにストンプ、もっかいストンプ。
あああ、しつけぇ!動けねぇ!でりゅぅ……
「おおおい、あいつやられちまったぞ。」
クリフがなんか動揺してるな。そりゃそうだろな、普通にこんな巨体に踏み潰され続けたら、死ぬわな。
「アレは、対炎龍用にと研究された召喚竜です。」
避難してきたマーク将軍がぽつりという。
「対炎龍用?」
クリフが怪訝な顔をして聞き返す。
「前回の闘いで我等連合軍は炎龍によって、多大な被害を負いました。そのために魔導部門で研究し、召喚に成功した骨の竜です。」
「なんでそんなもん練習試合で呼び出すんだよッ!」
ツェザーリがおもわず叫んでいた。おいおい相手は最高司令官だぞ。
しかしその意見には同意する。
なんで俺がこんなもん相手にしないといけねーんだよっ!ちょっと誰か助けろ!
「ジュンヤは平気よ。」
「うん、ダイジョブ。」
うわぁぁ、アリスとルミつめてぇぇぇぞぉぉお!
「し、しかしっ!」
「黙って見ていなさい。」
クリフとツェザーリは青ざめて反論しようとするが、アリスは冷たい瞳で2人を見つめ、黙らせた。
どうやら助ける気配は全く無いようだ。はぁ、ったく仕方ないな、やるっきゃないのかよ。
実際それほどのダメージがあるわけじゃない。単なる物理攻撃なら俺は大したダメージも受けない。もっとも内臓圧迫されて上と下から、色々とやばいもんが出そうだけど。もし漏れちまったら、そっちの方が精神的にダメージを受けそうだ。
何度踏みつけられたか知らんが、ストンプが停まったところで、スケルトンドラゴンの足に手掌を当てて、魔力を集中させた。
「いい加減どけぇこらぁ!」
派手な音を立てて、足が白い爆炎を上げて浮き上がり、スケルトンドラゴンが蹌踉めいた。
「えええっ!」
魔道士達がどよめいてる。だろうなぁ、あんだけ踏み潰されて、よもや元気してる、なんて思わんだろう。ていうか普通なら死ぬぞ。
ちなみに模擬刀は折れちまった。仕方ないな。
「この野郎、さんざ踏みつけやがってぇぇ!」
俺はベッコリとへこんだ地面から跳び上がり、拳に魔力を載せスケルトンドラゴンの前足を殴りつける。
「KYEEEEENNNNNNHHHHH!!」
奴の前足が白い焔に包まれ燃え上がる。衝撃で蹌踉めくスケルトンドラゴンの巨体。
高周波のような鳴き声が耳に障るな。だが流石っていうのかな、アイアンゴーレムは軽く破壊できたのに、こいつ結構頑丈だ。いや違うな、防御能力とか魔力耐性が高いんだ。
「ジュンヤ、スケルトンドラゴンに半端な魔力は効かないよ!!」
アリスの怒鳴り声が聞こえた。
「まじか?」
マジだった。このやろ爆風で蹌踉めいただけで、傷一つ着いていない。
そういえばゲームとかでも骨系って魔法耐性強かったよな。下手に俺と同じ位の魔力耐性があると面倒だな。
だったらちょっとド派手にいってやるか。俺も吹っ飛びそうだけど、まあなんとかなるだろう。
スケルトンドラゴンが持ち直し、俺に向けて赤い鬼火のような双眸が向けられる。また顎門が開いたと思うと、業火のブレスが吹き荒れた。
さっきの腐食性ガスじゃない、しかもこいつは魔法の焔じゃない。どうやってか知らんが、こいつ本物のフレイムブレスを吐いてくる。骨がどうやって焔を生成するんだよ。ふざけた奴だ。
地面が燃え上がり土が沸騰してやがる。どんだけ強力な火焔なんだ。
いくら俺に炎耐性が有っても、ありゃヤバイ。
腐食させたり燃え上がらせたり、あのめんどくさい頭をふっ飛ばしたいのだが、あの位置まで飛び上がれるわけもない。俺にもアリスみたいに空を駆ける能力が欲しい。
いや、ある。
尻尾がうねり炎が俺を襲う中、俺は魔力を集中させていく。一撃必殺狙いだ。狙うのはもちろんあの忌々しい頭蓋骨。
炎が吹き荒れる瞬間を狙って、跳躍し一気に魔力を放出した。
全身から魔力を放出しながら、それを調整しジェット推進の様に一方向に向ける。
ちょっと魔力が駄々漏れで普通じゃできないだろうけど、俺ならできる。魔力爆発を起こすほどの衝撃を使った飛翔だ。
数千度の炎のブレスを躱し、俺は一気に奴の頭蓋骨へと向かった。恐らく速度にしたら百キロ以上は出てるだろう。ジェット機のような加速音を放ち、俺の身体は1秒もかからず奴に到達した。
そして頭蓋骨に向けて蓄積した魔力を一気に放つ。
白い極大の爆発が起こって、俺はその衝撃で吹っ飛んだ。うわぁ、俺にまで被害がきたぁ。衝撃波の逃しどころ間違えたかぁ?
「うわぁぁ!」
「逃げろぉっ」
十分離れてたはずの騎士や兵士達が爆風と衝撃に巻き込まれて騒いだり転がったりで大騒ぎ。
「やっぱりアイツ、馬鹿じゃない?」
アリスは結界を張って、周囲に居るクリフやマーク将軍を包み込み、爆風に飛ばされる俺を見て笑ってやがる。
悪かったな。ここまで強烈な爆裂拳を放ったのは初めてなんだよ。恐らく超級と言われる魔法を二、三発程度……やり過ぎたかな。
っそうやろうと思えば、俺は超級以上の攻撃を放てるってわけ。
これは多分アリスにもできないだろう、いや誰にも出来るわけがない。やろうと思えば、現代戦における小型核にも匹敵する破壊力を引き出すことが可能……かな?使ったこと無いからわからん。
そんな超爆発力を秘めた魔力爆発をこんな場所で発動させれば、当然周囲を巻き込んでしまう。だから魔力には方向性を持たせて置いた。空に向けて指向性の爆発を起こさせたから、地上への被害は最小限に止めた、つもりだ。
だって普通にやったらこの辺り一帯吹き飛んでるわけだしね。超級魔法なんてのはちょっとした天変地異だ。消費される魔力量だって上級魔法が500とか600程度なのに、超級は一気に増えて1,500とか2,000ポイントとか使う。
それを数発分使ったわけだから、魔力量も一気に減ってしまった。残った魔力は3分の1もない。戦闘でここまで使ったのは初めてだ。
まったく常識はずれっていうか、規格外の魔力量を持つ俺だからこそ使えるってわけだ。
ともかく空に向けて打ったにもかかわらず、その衝撃だけで俺は吹っ飛ばされたし、離れていたはずの兵士たちまで吹っ飛んでるんだから当たり前だ。
スケルトンドラゴンはというと、頭蓋が塵のようになって吹き飛び、さらに衝撃が全身を伝わり罅がはいっていった。活動限界ってところか?
いや魔道士達も衝撃で吹っ飛んでるから、その影響かもしれないな。俺が地上に叩きつけられる頃には、スケルトンドラゴンは瓦解し始めていた。
ふう、めんどくさかった。
スケルトンドラゴンがやられ、あれが彼等の最上級の魔法だったのか、魔道士達は既に戦意を失っていた。いや気絶してるな。爆風でいっちゃったかな。
どっちにしても魔法も効かず、召喚したゴーレムの物理攻撃もスケルトンドラゴンも敵わないとなれば、彼等に次なる手は無かったと思う。
そもそも魔道士の相手に魔法無効とも言えるステータスを持つ俺をぶつけるとか、ぶっちゃけインチキだよな。戦略としては正しいのだろうが。
でも、あのスケルトンドラゴン、アリスならどう対処しただろう。まあアイツなら召喚される前に魔道士達を斬り捨ててるかな。
爆風がおさまったが、辺りは静まり返っていた。どうやらパフォーマンスは十分に見せつけられた感じかな。
††
次回は、まだまだジュンヤは休めません、vsアリス