<1> 今度の人生はスローライフで
以前に短編として上げた『ドジな女神に不死にされました』の長編です。
結構改稿してみて、そろそろつじつま合わせや矛盾がなくなってきたな~ということで、連載を開始しようかと……
まだ『異世界戦線奮戦記~』が完了してないのですが、よろしければ、ご一緒にお楽しみいただけると嬉しいです。
『異世界戦線奮戦記~』がスランプ気味で、こちらはを書いてて結構書き溜めたから、毎日連載出来そうかな~
どもすいませんm(_ _)m
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遙か彼方の北の大地では、いまこの瞬間も多くの騎士や傭兵達が、亜人や魔獣、魔法生物の軍団と血で血を洗う戦いが起きているらしい。
多くは聞かされていないが、両親の話しではそうらしい。
でも……んなもん、遙か南のこの村には関係ない。ここは平和を絵に描いたような農村だ。
俺は今日も今日とて、長閑な田舎暮らしなのです。
戦争なんて関係ない、そう思っていた時期もありました。
山間にぽつんとある長閑な農村。
近くには森があり、川があり、人々は自然の恵みに感謝し平和に暮らしている。
俺の生まれ育った村はそんな感じの、長閑で何ら変哲もない、平和な村だ。
ただちょっと違うのは、電気もガスも水道も無いこと。言わばど田舎ってやつだ。うそうそ、此処にはそんな文明なんて最初から無いんです。
俺の名前はジュンヤ。こんな田舎の村なので姓はない。ただのジュンヤだ。年齢は4歳、銀髪の髪と青い目を持つ、絶賛わんぱく盛りの快活なガキだ。
随分生意気な4歳児とか言わないでくれ、前世を入れれば+35歳超えてるからな。
そう俺は前世の記憶を持っている。いわゆる転生者って奴だ。
前世の事は兎も角として、ここは一応剣と魔法の世界らしい。『らしい』ってのは転生する時に、碌な事も教えられずにこの世界に生まれたからだ。
いや~35歳にして初幼児プレイはキツかった。生憎そっちの趣味はないし、赤ちゃんプレイとかやったことが無い俺としては、初のリアル赤ちゃんプレイには参った。
でも母親の授乳プレイは、なかなか、いや最高──げほんげほん
それは兎も角、俺は前世の記憶をもったまま、この世界に生まれ落ちた。俺を転生させた女神から言わせれば、『前世の記憶を持ったまま転生させるだけでも、大サービスだ』、なんて怒鳴られたな。
まあそれはいい。
だから当然のようによくある話のように、チートが貰えなくても、敢えて文句はない。
しかしせっかく生まれ変わったんだ、まじめにのんびり正直に、働き者で良い人間になるって決めた。
良い人間って言っても、正義の味方とかじゃない。だってチートもない人間なんだぜ、なにかやるにしても限界は有るってもんだ。
もちろん努力はするさ。両親にとって、良い子供になって親孝行するんだ。
そしてのんびりと家族でスローライフを送るんだ。
今度こそね。
そうだ、今度こそちゃんと生きるんだ。
なにせぶっちゃけ言えば、前世ではロクデナシだった。
生きてる価値もない糞だ。さんざん親不孝して、挙句に下らない死に方をしちまったから、今世では親を大事にするんだ。贖罪ってのかな、自分なりの親への罪滅ぼしだ。
ってことで俺はいつもの様に、平凡で平和な毎日をいつもの如く過ごしていた。異世界スローライフって奴だ。
いつも通り父親が畑仕事に向かい、母親は田んぼで種植えに向かう。
2人を見送った俺は玄関に置いてある籠を背負う。俺にもちゃんと仕事が有るんだ。
すると見越し方の様に隣の家のドアが開いて、女の子が飛び出してくる。
両手を広げて、たーっと走ってくる。綺麗な赤に近いクラレット色のショートエア、やたらと愛くるしくて可愛らしい幼女が
「ジュンヤーッ!先いっちゃダメーッ!」
俺の名前を呼びながら飛び込んできた。
まだ4歳とはいえ、その突撃力はなかなか凄まじい。俺は転げそうになりながら必死に耐え、幼女──アマンダのほっぺすりすり攻撃を受ける。
「わー、かった、置いてかないからっ!」
偶にほっぺすりすりしながら、唇がぶちゅっと当たるのだが、アマンダは気にしやしない。
ちなみにアマンダは俺より半年遅れで生まれた可愛らしい子だ。生まれた時から一緒につるんでいるので、兄妹みたいに過ごしている。
とりあえず落ち着いたアマンダと手を繋いで、村に張られた結界の柵の近くまで、てくてくと歩いて行く。
仲良く手を繋ぎ、楽しそうに歩くアマンダに、俺もどこかほっこりとして歩みも軽く、スキップでもしそうな感じで歩いていた。
着いた先は一応村の結界の柵の内側にある林。
結界の柵の中までなら子供でも行くことは許可されている。子供に害になる様な大きな動物も居ないからだ。
なんでのんびりした村なのに、結界があるのかって?
この世界には魔獣や魔物とか危険な奴らが居るってことだ。亜人とか魔獣とか、そんな類を排除する結界ってことだな。
奴らは結界の柵の内側には入って来れないから、柵の中に居れば安全だ。
俺たちは母親に教わった薬草を採取し、籠に入れて持ち帰る。初めてのお使いどころか、もっと簡単な作業、これが村の子供達のお仕事です。
ちなみに俺は満年齢で言えば3歳だ。でもこの世界では新しい年になると、歳をとる数え年が主流だ。つまり3歳児に働かせてるわけだな。
幼児虐待とか言うなよ?この世界では当然何だから。
俺もアマンダと一緒に、遊び感覚で採取に励んでいた。いっぱい取っていくと、お袋が喜んでくれて、頭を撫でてくれる。ただその笑顔と褒めてくれる事が嬉しかった。
のんびりしたスローライフ。
両親も健康で、俺も家計の足しにと働いて、可愛い幼馴染もいて、このまま平和に年をとっていく……
でもそんなスローライフは、晴天の空から落ちた一筋の光に寄って砕かれた。
俺は気を失った。
なんかすっごい衝撃が襲ってきて、急に意識が途切れたのだ。
俺に雷が落ちたらしい。晴れた天気だというのに、青天の霹靂と言う奴か。
アマンダが無事だったのは何よりだが、目の前で俺が雷に撃たれたのだから、結構なトラウマを植えつけたんじゃなかろうか。
俺はその場で気を失い、心臓も停まり、死んだと思われた。幸いにして火傷とかは負わなかったみたいだ。ほんとか?普通雷なんかに撃たれたら、全身焼け焦げるんじゃないの?
アマンダは火が点いた様に泣き叫び、俺のオヤジに報せてくれた。慌てたオヤジに抱えられ、急遽薬師のバアサンの元に運ばれて、様々な薬を飲まされたようだ。
死んでる子供にどうやって飲ませたかは、聞いたくもない。恐らくかなり無理やりなことしたんだろーなー。
その甲斐あってか俺の心臓は動き出し、死から生還できた、とまあめでたしめでたし。
ここまでは、アマンダとお袋から聞いた話だ。
『ぴしゃーんて音がして、風がぴゅーっとなって、ジュンヤ倒れてて、起きないから、ジュンヤのオトウに知らせたー』
そかそか……
3,4歳ってこんなだったか~。アマンダって知能遅れてないか~?それとも俺が前世の記憶もってるからかな~。
まあ、その雷に打たれた後だが、俺は気が付くと以前に見た神々しい神殿の中にいた。以前に俺を転生させた女神の神殿だ。
あれ、また転生でもするのかと不思議に思ったのと、僅か4歳で死んだことに対して、ちょっと不満もあった。まあ自然現象だし文句をいう筋合いも無いのだが。
白き玉座に座る女神を見ると、何故か俺を見て眼を丸くしている。なんか驚いてる?のかな。
「えーと、お久しぶりでいいのかな、女神様。」
俺がはにかみながら言うと、なんか取り乱して、わちゃわちゃしてる。
完全に焦り顔で「え、え、え、え、え、」と驚いてなんかパネルみたいなものを表示させてガン見してる。
どうしたんだ?
「なんで貴方がここにいるのー……」
「は?」
目を見開いて俺を見て、パチクリしてる。
「何でって、また死んじゃったんですよ。雷に撃たれて。」
頭をポリポリしながら言うと、また女神が眼をパチクリしてる。
「そそう、そうね、貴方は雷に、そう撃たれた、そうよね、そう、そうよね。」
なに慌ててんだろ。
「でもちょっと残念です。転生の時に女神様に云われて、すっげぇ反省して、今度こそちゃんとやろうとしてたんですけどね。雷に撃たれるとか、なんか俺って運がないのかな。ハハハ」
と乾いた笑いをすると、女神様がなんか顔を引き攣らせてる。
「えーと、あの、ご、ごめん、間違えた。」
へ?
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初回は序盤の三~五話をお届けして、あとは毎日更新になる予定です。
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