09.意外にハイスペックな人物のようだ。
私は、オリョウさんに、その後、黒毛獣のフルコースを夕食に出してもらった。
昔、父と狩った黒毛獣よりも、さらにそれは、蕩けるような美味しさだった。
「う・・・美味すぎるぅー!」
私は、目をうるうるさせて、それを食べた。
もちろん、オリョウさんは、正規の値段で、他の生徒たちにも、それを出していた。
もっとも、正規の値段で出されたので、それを食べていたのは、本当に数えるぐらいの生徒しかいなかった。
主に、ここに何年も前からいる、最上級生がほとんだ。
ただし、今日の朝、一緒に教室に行った面々が、その中に混じっていた。
「あら、気になる。」
私は頷いた。
私とそう何日も違わないのに、なんで彼らも、この高級食材を食べられるのだろうか?
「彼らのうち、二人があなたと同じ食材あてで、80%の正解率叩き出して、最後の、あの中央の坊やだけ、あなたと同じ100%の正解率を、初日に叩き出したからよ。本当に今年の新入生は、優秀よね。」
オリョウさんは、嬉しそうに説明していた。
別に普通に食べれば、あの食材当てクイズは、難しくないので、驚くに値しないけど、なんでか、気になるなぁ。
あんまり人のことに、興味が湧かない方だけど、どうしても、食材当てクイズで100%を叩き出した、彼のことが気になった。
私はチラリ、チラリと彼のことを気にしながらも、食事を終えると、自分に宛がわれた寮の部屋に戻った。
当然、今日も、正面玄関に戻るのが、面倒だったので、中から通路にある窓の鍵を開けようとして、窓に近づくと、その窓がスッと内側から開かれた。
窓からいつの間にか、先程の茶髪のベンが、顔を出したかと思うと、すぐに後ろに下がった。
私は、遠慮なく、窓の中に飛び込んだ。
シュタン
無事、廊下に着地した。
ベンが、小さな拍手をしてくれた。
「でも、よく疑わずに、飛び込んだよね。もしかして、何かの罠が、あるかもしれないのに。」
私は黙って、窓枠の上を指した。
そこには、小さな虫が巣を作っていた。
「これは?」
「警戒虫だ。危険を察知すると赤く光る。」
ベンは目を丸くするが、まだ納得できないようだ。
「無機物の罠も、察知できるのか?」
「罠を察知するのではなく、人間や動物が出す、感情みたいなオーラを、身も守るために感じる虫なんだ。」
「なるほど、感情を読み取るのか!」
ベンは感心して、何度もその虫を見て、特徴を覚えようとしていた。
「これは、どこにでもいるのか?」
「結構よく見ると、いろんな所にいるぞ。特に、この寮は、多いな。」
ベンは目を丸くした。
全く気がついていなかったようだ。
ベンは、そこまで私と話すと、自分の部屋に戻っていった。
なんで、ここで私を待っていたんだろうか?
ちょっと、不思議に思ったが、私はそれ以上考えずに、自分の部屋に戻ると、明日、一番苦手だと思う授業の準備をして、早めに休んだ。