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46.幻の蜜?

 なんで、そうなったのか不明なまま、今、私は、ラナルフ様の隣で、あの日、夢で見たのと、同じように、腕に、夫となったラナルフ様似の息子を抱いて、椅子に座っていた。


 あの悲鳴をあげた後、目を覚ましたラナルフ様と二人で、ベッドの中で、硬直していると、いつの間にか、ラナルフ様の寝室に現れたセバスに、彼は、婚姻届けを書かされた。

 もちろん私もサインさせられ、気がついたら、その日のうちに、私とラナルフ様は結婚していた。


 ラナルフ様は、唖然としながらも、その後、王宮にある近衛兵の訓練所に向かい、それから、私たちは気まずそうに、生活を始めた。


 しかし、それも一か月ほどで、事態は急変を迎えた。

 私が屋敷で倒れ、その知らせを聞いて駆けつけたラナルフ様は、医者に言われたことで、態度を一遍させた。


 なんと、どうやら、裸で抱き合った時に、やることをやっちゃた私は(まったく覚えていないが)、妊娠していたのだ。


 その途端、ラナルフ様は、王都より離れた屋敷から、王宮近くにある本宅の離れを、私の為に、侯爵夫人から、強引にもぎ取ると、上にも置かないくらい、私を構い倒し始めた。


 朝は、気分が悪い私に、ベッドまで食事を運び(それはメイドの仕事では?)、王宮での仕事を終えると、すぐに屋敷に戻ってきて、私を抱き上げると、膝に乗せ、ラナルフ様、自ら、スプーンに料理をのせると、アーンして来るのだ。


 あのラナルフ様が、アーン!


 もうダメだ。

 羞恥で、死ねる。


 毎日、身もだえながら、結局、美味しいものに惹かれて、口を開ける。


 バカだ。

 私は、馬鹿すぎる。


 しかし、餌付けされたせいか、そんな妊娠期間を終え、無事、息子が生れると、気がついたら、ラナルフ様を、好きになっていた。


「オノウ。」

 今も、母乳を飲ませ終え、息子を抱いている私に、ラナルフ様は、手ずからスプーンで、食事を私の口に運んでくる。


 モグモグ。


「美味いか?」


 私は、無言で頷いた。


 あの妊娠騒ぎの後、実は気になって、書物で調べた”幻の蜜”の効能は、愛し合った二人に、子宝をもたらす食べものと書かれていた。


 しかし、発見する為の方法は、運命の人同士でなければ、見つけられないと、なんとも、胡散臭いことが、書かれていた。


 だぶん、運命とか、子宝も、単にそう呼ばれているだけで、子宝の原因は、あの”幻の蜜”が何らかの媚薬の作用をもたらす為では、ないかと思っている。

 それに、冷静に考えれば、葉っぱの汁を食べさせただけで、血みどろの人間が、全快とか、そんな美味しい話があるわけがない。


 私の推測だが、後でラナルフ様から聞いた話の中に、甘い匂いが漂ってきたというから、その甘い匂いが幻覚作用ぽいことを、引き起こしたんじゃないかと・・・。


「そら、オノウ、アーン。」


「アーン。」

 思わず、口を開けた私に、ラナルフ様は、お肉を一切れ、突っ込んだ。


 口の中に、ジューシーな味が広がって、至福のひと時に包まれた。


 ほんわかした私を見て、ラナルフ様は、ニッコリ微笑まれると、さらに私の口に、肉を突っ込んだ。


 私は、とろけるような肉の感触に、顔をほころばせた。


 ラナルフ様は、その私の顔を見て、破壊力満点の笑顔を見せた。


 ボッ


 私の顔は、熟れたリンゴのように、真っ赤になった。


 うっ、こんな笑顔は、反則です、ラナルフ様。


 周囲の使用人の顔が、真っ赤になるような、甘ったるい雰囲気の中、ラナルフ様の手が、私に伸びた。


「ラナルフ様。」

「オノウ。」


 二人で抱き合おうとすると、庭がザワザワして、私の両親が現れた。


 チッ


 なぜか、ラナルフ様から、舌打ちが聞こえた。


 えっ、舌打ち?


 私がその音に気をとられていると、いつの間にか、私たちの近くに来た父が、ラナルフ様をむんずと捕まえ、どこかに消えた。


 あれ?

 私が疑問に思っているうちに、母が私の腕の中にいる、子供の顔を覗き込んでいた。


「まあ、かわいい!流石、私の孫ね。」

 母は、私の腕に抱かれていた孫を、私から受け取ると、目がハートマークになって、孫をあやした。


 どうやら、母は、純粋に、孫に会いたかったようだ。


 だが、父は何しに来たのだろうか?


 しばらくすると、ラナルフ様とどこかに行っていた父が戻って来て、母をさらうようにして、屋敷から消えた。


「なんだったの?」


 父が消えてしばらくしてから戻ってきたラナルフ様に、ベッドに連れ込まれたので、私は父が何をしにきたのか、わからずじまいだった。


 しっかし、昼頃から、こんなことをしていて、いいのか?

 なんだか、ここ最近、働くということをしていない。


 本当に、いいのだろうか?


 疑問に思っているうちに、すぐに、私はまた妊娠した。


 あれ、なんで?


 私の不思議そうな顔を、ラナルフ様は、嬉しそうに見つめると、”今度はオノウ似の娘が良いな”と希望された。


 私は、さすがに、性別を如何こう出来ませんので、それは無理ですとお断りすると、

「では、デキルまで、かんばるから大丈夫だ。」

 と笑顔で、断言されました。


 ガンバルって、な・に・を?


 私の頭の中とは、反対に、今日も屋敷の外は、すがすがしい空気と太陽が輝いていた。

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