03.養成寮
私は、固まったまま動かない、マントのおじさんを突っついて、現実に引き戻す。
「いや、すまなかった。少しばかり、ショックだったものでね。それにしても、君はレナードに、本当に似ているね。」
なぜか全員に、マジマジと観察された。
別に見られるのは、気にならないが、いい加減先に進んでほしい。
私のお腹が鳴った。
ぐぅーーー
その音に、マントのおじさんは、苦笑いをすると、私について来るように言うと、小道に沿って、歩き出した。
私は、その後について行く。
よく見ると、その道は、単調にダラダラと曲がりくねっていた。
何、この道、時間のロス過ぎない。
周囲には、よく似た色の生垣が、両側に並んでいた。
なんだか一人で歩いたら、迷子になりそうだ。
そこは、迷路のように、ところどころ二股に分かれていた。
まっすぐ、この生垣を突っ切りたいなと思って、その生垣を見て、ハッとした。
これは、植物のくせに、自分に向かってくる動物を、取り込んで食べる”食虫草”じゃないか。
なるほど、それで一定の距離を開けて、近づき過ぎないように、歩いているのか。
そう言えば、これを昔、食べたことがあったけど、あんまり美味しくなかったなぁ。
粘つくばかりで、味がタンパクで、でも、ここのは、なんか美味しそう。
それに種類が、私が昔、食べたのとは違うのが、今通って来た場所見ただけで、25種類もある!
後でこっそり、採って、試食してみよう。
もしかして、珍味かもしれない。
私がそんな事を考えているうちに、やっと学舎が見えてきた。
「ここは、基本一人一部屋だ。とりあえず、先に、部屋に案内しょう。」
マントのおじさんに連れられて、私は食堂からかなり離れた、みすぼらしい部屋の案内された。
「ここが次の試験まで、君の部屋だ。もし、もっといい部屋に入りたいなら、今度の試験で、いい点をとればいい。ここは、そういうシステムになっている。」
つまり、いい部屋は、成績が良い生徒が入る、と言いたいわけか。
うむ、けっこう、わかりやすい。
私は、持って来たカバンを、ベッドわきに置かれた椅子に置いた。
「あっ、言っておくけど、ここ、鍵もかからないから、金目のものは、盗まれない様に、肌身離さず持っていた方が、いいよ。それと食事は、さっき入って来た、この建物の直ぐ隣だ。それじゃ、僕は行くよ」
そうマントのおじさんは言うと、部屋から出て行った。
食堂は、この建物のすぐ隣か。
私はお腹が減っていたので、簡単な罠を部屋にしかけると、カバンを椅子に置いて、食堂に向かった。