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21男爵令嬢とドレス

 私は、あれから、来る日も、来る日も、ただただ、食事を作り続けた。


 今日も朝から食事を作って、昼の分も作り終え、一息入れていると、なぜか男爵ファミリーが食べている食堂から、泣き喚く声が、聞こえて来た。


 なんだろうと思っていると、またもや執事長のセバスに、男爵ファミリーが食事をしている、食堂に呼び出された。


「お呼びでしょうか?」


 私が食堂に現れると、いきなり男爵令嬢のライラが喚き始めた。

「あなたのせいで、見てみなさい。せっかく、明後日のパーティで、婚約者のフォックス様に、見てもらおうと思っていたドレスが、めちゃくちゃに、なったのよ。」

 確かに、フリルがふんだんに使われた、フリフリドレスを見ると、そこには、デザートに使った、ラズベリーソースがべったり、くっ付いていた。


 うーん、でも、そのドレスは、ハッキリ言って、似合っていないと思う。


「だから、オノウ。あなたが責任を持って、パーティの当日に着るドレスを、何とかするのよ。」


「確認をとらせて、いただきますと、私に婚約者のフォックス様が、見惚れるようなドレスを作れ、とおっしゃっているのでしょうか?」


「そうよ。当然でしょ。この失態は、料理を作ったオノウの責任なんだから、すぐに、なんとかしなさいよ。」


 なんとも、理不尽な要求に、見ると壁際で聞いていた、クレナイとチャチャが、唖然としていた。


 ベンに至っては、怒りを顕わに、眉間にしわを寄せている。


 とはいっても、ここで怒鳴るわけにも、いかない。


 私は頭を下げると、頷いた。

「畏まりました。」


 私は、頭を下げて頷いた後、食堂を出ると、もとの台所に戻った。

 取り敢えず、明日の食事の下ごしらえを、済ませなければならない。


 私が忙しく働いていると、そこに、養成館の仲間たちが戻ってきて、声をかけてくれた。


「どうするつもりだ、オノウ。」

 ベンが心配そうに声をかけて来た。


「ちょっと、待って。」

 私は、明日の食事用の全仕込みを終わらせる為、一心に手を動かしていた。


 そして、仕込んだ料理を順番に、保冷用の容器に入れると、魔法で冷やした冷蔵庫に入れた。


 そこで、ホッと息を吐いて、ベンを見た。


「ベン。この上段のものを明日、朝食の時に、温めて出してくれ。残りは昼の分よ。全部分けてあるんで、使用人と男爵ファミリーに、それを温めてから、出して頂戴。」

 ベンは理由を聞きたそうにしながらも、頷いてくれた。


 その後、コットンとピンテルに、デザートの出し方を説明した。

「「わかった。任せてくれ。」」


「オノウ、君はどうする気だ?」

 ベンは心配そうに、オノウの顔を、覗き込んだ。


 私は、養成館の仲間を連れて、執事のセバスに事情を説明した後、離れの部屋に戻った。


「ベン。男爵家のお嬢様である、ライラ様の婚約者情報を持っていない?」


「ああ、もちろん、持っているよ。裕福な商人の次男で、名前は、フォックス=キャッチャー。容姿は、黄色い髪に、体型は細身、そこそこ顔のいい男だ。」


「女性の好みは?」


「そうだな。男爵家の使用人たちが言うには、お子様系よりは、ムチムチの巨乳系が、好みのようだ。」


 私は、ニヤリと頷くと、クレナイとチャチャを見た。

「今回は、クレナイとチャチャの協力なくしては、出来ない事なんだけど、協力してもらえる?」


「「もちろん。いくらでも、協力するから、何でも、言ってちょうだい。」」


 オノウは、声を潜めて、二人に説明した。


 二人は、オノウの話を聞いているうちに、だんだん目の色が変わってくる。

「「もちろん出来るわよ。私たちに、任せて!」」

 二人は、オノウの話した内容を知りたそうな、男性陣を見ると、口に人差し指を置いて、ナイショとポーズをとった。


 ピンテルとコットンは、彼女たちを見て、目茶目茶、可愛いと悶えた。


 ベンは、目線をオノウに戻すと、

「本当に大丈夫なんだろうな? 本番は二日後なんだぞ。」


「「大丈夫、二日もあれば、出来上がるわ。」」

 横から、クレナイとチャチャに断言され、ベンたち男性陣は、部屋を出た。


 女性陣は、それから丸一日、離れの部屋から、出ることはなかった。

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