11.寮の最上階に移動しました。
ここに来てから二週間後、裁縫以外の成績が良かったので、少ない荷物を持って、豪華な寮に移動した。
初日から同じ階に部屋があったベンが、今回も隣になった。
ただし、どうやら、この階には、私とベンの二部屋だけで、他は誰もいないようだった。
前回、同じ階だったベンの友人は、どうやら下の階に部屋があるようだ。
「すごいね、オノウ。ここに来て、二週間で、ここまで来たのって、君が初めてみたいだよ。」
ベンが満面の笑顔で話しかけてきた。
「ベンも同じようなものではないの?」
私はいつもと同じような能面で、ベンの賞賛に、逆に問いかけた。
ベンは私が名前を読んだのが、嬉しかったようで、ニコニコ顔で、さらに詳しく説明してくれた。
「二十年以上前に、僕と同じ日数で、ここに移った人がいたみたいなんで、僕が最初じゃないみたいなんだ。」
「なるほど。」
私は、説明してくれたベンに納得したと頷いた。
「さて、オノウは、明日、どうするんだい?」
ベンの質問に、ようやく明日のことを思い出した。
まだいくつか受けていない講義があるようなので、明日からは、順にそれをやっていく予定だった。
「取り敢えず、裁縫以外の授業を、一つ一つ受けて行くつもりだよ。そっちは?」
「オノウと同じで、まだ受けていない授業があるから、それを受けるつもりだ。どうせなら、一緒に行かないか?」
ベンの誘いを、オノウは一言のもとに断った。
「いや、止めておく。一緒に行動して、グループと見なされると、困るから。」
私の発言に、ベンがムッとした。
「僕たちが弱いと、いいたいのか。」
「いや、私はもともとチークワークが、苦手なんだ。だから、それをやりたくない。」
オノウの素直発言に、ベンの気がそがれた。
どんだけ、チームワークがきらいなんだ。
「でも、チームで組めば、ポイントも倍以上になる。」
オノウもそれは知っているが、それ以上に他人に煩わされるのが、苦手なのだ。
「分かっているけど、大丈夫。三年もあれば、ここを卒業できる。」
オノウの断言にベンは呆れた。
一年時は、良いとして、二年目三年目と年を追うごとに、チームでしか出来ないことが、増えてくる。
彼女は、知らないんじゃないのか。
ベンは、その時になって、困っているようなら、彼女を入れてあげようと思って、もう一度、声をかけた。
「わかった。じゃ、もう何も言わないけど、入りたくなったら、いつでも、声をかけてくれ。」
オノウは、取り敢えず、心配してくれているであろうベンに、うわべだけ取り繕って、答えた。
「ありがとう、そうなったら、声をかけるよ。」
二人はその後、自分の部屋に入るために、廊下で別れた。