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無能力の統率者  作者: 100G
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序章1

周りの喧騒で目が覚めた。

どうやらいつの間にか寝てしまっていたみたいだ。

「修二…また寝てたでしょう」

突然、前の席の恋川凛(こいかわりん)が見下した顔で俺にそう話しかけてきた。

おかしいな、こいつとは長い付き合いだから読心術の能力なんてないことくらい知っているのに。

…まさか。

「おい凛。お前能力に目覚めたのか!?」

「そんな簡単に目覚めたらこんなに苦労してないわ」

「じゃあなんで俺が寝てたってわかるんだよ。見てないくせに」

「そんだけデコボコのおでこを見せつけられれば分かるに決まってるでしょ」

そう言われて、バッと手を顔に持っていく。なるほど確かにデコボコだ。よもや無機物達に決定的証拠をつけられるとは思いもしなかった。

「そんなんだからいつまでも無能力者のままなのよ」

「お前だって無能力者だろうが!」

無能力者。それが俺たちの社会的呼称だ。この世界では異能力がすべてだ。強い異能力を持つ者は社会的にも強い権力を持ち、貧弱な異能力しか持たないものの立場は少ない。しかし、すべての人間は異能力を持って生まれ、努力次第ではその能力も向上するため決して不条理というわけではない…はずなのだが。

なぜか俺たちは何の能力も持っていない。その理由は分かっていないが、こうして無能力者同士、専門の学校に集まって能力開発の勉強にいそしんでいるというわけだ。

「優等生の八雲修二(やぐもしゅうじ)君は授業なんて受けなくても余裕じゃけんなぁ?」

このいかにも鬱陶しそうな話し方をしてくるのは相模幸一(さがみこういち)。同じクラスのメンバーだ。つまりこいつも異能は使えない。

「うっせぇよ幸一、このM字ハゲめ」

「なんじゃと!?お前言ってはならんことを!」

「やめなよ、二人とも団栗の背比べすぎる…」

という流れがいつもの日課だ。今日の授業は全て終わって他の生徒はもう下校してしまったようなので、俺たちも帰り支度をして外へ出た。

「そういえば拓也と京香は?」

「あぁ、もう秘密基地に行っちょるらしいぞ」

俺たちは放課後、無能脱出団という組織を作り、秘密基地に集まって異能の特訓を行っている。拓也と京香はクラスは違うが、そのメンバーだ。16にもなってこんな事をしているといううのも情けない話だが、無能力者としてはなりふり構ってはいられないのだ。

「それじゃ、俺たちも行くか」

「そうね、じゃあお菓子でも買って行こうよ」

「賛成」

近くのコンビニで軽く食料を調達して秘密基地へ向かう。町のはずれにある森の中、その森の奥にある廃屋が俺たちの目的地だ。15分程歩くとその姿が見えてきた。廃屋と言ってもそれなりに修繕したので見た目は結構マシになっている。扉を開けると既に二人が特訓を始めていた。

「ちょっとおそいよ~、京香がこんなに頑張ってるというのに!」

目が合った瞬間、京香がそう愚痴りながら俺の腹をぽかぽかと叩いてきた。

花村京香(はなむらきょうか)。パッと見自分と同い年とは思えない見た目だが、れっきとした16歳だ。

見た目同様性格も少し幼い所はあるが、仲間思いの良い奴だ。だが、あまりベタベタされるとそこはかとない犯罪臭がするので、少し自重してほしい所である。

「悪い悪い。ほらお菓子買ってきてやったから」

「やった!みんなで食べよう!」

「よかったね、京香ちゃん。」

と、保護者のように後ろから温かい目で見つめているこいつは藤堂拓也(とうどうたくや)。内気でいじめられていた所を幸一が助け、メンバーに加わった。真面目な性格で、こいつが居なければおそらくこの組織は成り立っていないだろうという程だ。

「悪いな拓也。京香の面倒一人で見てもらって」

「僕なら大丈夫だよ、京香ちゃんは素直ないい子だからね」

「あんた、その発言すごく怪しいわね…」

「拓也はロリコンじゃったのか…」

「ちょっと!誤解を招くような発言はやめてよ!」

「ふふ、ごめんごめんあんたがそんな奴じゃないことくらい分かってるわよ」

「ねぇねぇ!はやく特訓始めようよ!」

俺たちの会話をあまり理解できていないような京香は待ちきれないような仕草でソワソワしている。

「あ、ちょっとその前に僕から一つだけ発表してもいいかな?」

「?なんだよ拓也」

「この度、僕こと藤堂拓也に、能力の芽が確認されました!」

「まじかよ!?」「ほんとに!?」

あまりの衝撃に全員が驚きの声を上げる。

能力の芽。能力の発現の前兆とされるが俺たちにはどんなものかは知らない、教師にはわかるらしいが。

それが確認されたということはつまり…

「拓也…お前、能力を…」

「うん!手に入れられるんだ!やっと!」

「おめでとう!拓也!」

歓喜と称賛の声が次々に上がる。拓也はみんなに囲まれてもみくちゃ状態だ。

俺としてもとても嬉しい、先を越されて悔しいという気持ちもあるけど、共に頑張ってきた仲間が報われるという事は嬉しいものだ。

「それで、僕明日研究所に行かないといけないから明日ここには来れないけどいいかな?」

「当然じゃ!これより大事なことなんぞあるわけがないじゃろう!」

「それじゃあ今日は特訓はやめてパーティね!」

「やったぁ!パーティだぁ!」

もはや本末転倒な展開になっているが、それ程みんなも嬉しいということだろう。俺も難しいことを考えるのをやめ、みんなと一緒にその日は夜遅くまで騒ぎ続けた。


しかし、楽しい日はそう続かない。

のんびりやっていくつもりなので暇なときにでも読んでやってくれれば嬉しいです

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