第一歩
ノートパソコンを使ってバイトの求人情報をネット検索する。
あれこれ探し見ている俺の傍らで、
「お仕事あった? 天職発見できたの? ねえ、ゆーくんってば」
何故らうがいるんだ!
「真鍋に接客は厳しいから辞めておけ」
どうしてシキモもいるんだ!
「え、なにふぅちゃん。ふむふむ、『大学受験に失敗した半ひきこもりニート半フリーターのゴミクズ人間のこの男がお菓子をくれない?』まあふぅちゃん、わがまま言っちゃだめでしょ。お母様が、お菓子は10時と3時って決めたじゃない」
もうヤダこんなの……。
——5畳半の安息の地は、物の見事に悪神の巣窟へと回帰していた。
ノートパソコンを置いた学習机に座って頭を抱える俺。
背後から悪神3人が求人情報を覗き込み、横槍を入れてくる。
あれやこれや横槍を入れるので、俺は傷だらけ。そこに思いやりはない。
それでなくても公園で負った傷がずきずき痛むのに、耳元でぎゃーぎゃー騒がれたら治るものも治らない。
俺の右肩にそえた手の上に、顎をのせて微笑むらうを払いのけ、
「うるせぇぞコノヤロー! 黙ってみてろよ、ちゃんと探してんだから!」
悪神3人を怒鳴りつけて、俺はバイト探しを続行する。
我ながら妙な気分だ。
ひょっとすると、ノートパソコンに向き直った俺の口元は、すこしだけ緩んでいたかもしれない。
底辺からの再出発は生易しいことではないけれど、それでも、俺は、第一歩を踏み出した。